スリルの極み その3
数日後、ミスターNのところに部下が報告に来た。
(Mr.N)「マネキンの作成数はどうだ」
(部下)「非常に順調です。あの2人がいなくなってから」
(Mr.N)「ま、そうだろうな。アッハッハ」
ミスターNは満足そうに笑う。
(Mr.N)「とにかく、マスクさえ処分してしまえば、大丈夫だと思ったんだ」
完全なマネキンにされた美代子と真理子は粉々に粉砕された。
さらにセメントに混ぜて固められて、地下の倉庫に保管されている。
肝心のベネチアンマスクはというと、
これもセメント詰めにして、美代子のは太平洋、真理子のは大西洋の海溝までわざわざ運んで行って沈めてしまった。
(Mr.N)「今頃は深海の底だろう」
(部下)「あれ?」
灰皿が以前の物と違っているのに気が付いた。
(部下)「灰皿を取り替えたんですね」
ミスターNが自慢げに「どうだいこれ」と言う。
(部下)「美代子のですか」
スーパーガールの一番大事な部分を切り取って作った灰皿だ。
(Mr.N)「そうだよ。美代子いやスーパーガールのだ。真理子のは取れてしまったからな」
部下はさすがに『えらく悪趣味だな』と思った。
ミスターNは葉巻の火を美代子の敏感だった突起に押し付けて消している。
そして吸い殻は、そのすぐ下の穴へ。
(Mr.N)「これで思う存分、悪いことができるってもんだ」
ミスターNは最近にない明るい声で言った。
だがしかし、ミスターNの目論見は、あっけなく崩れ去ってしまったのである。
さらに数日たった。
(Mr.N)「さてと、今日の予定は・・・」
ミスターNが葉巻を吸っていると、突然灰皿が光りだした。
(Mr.N)「ん?どうしたんだ、あ!」
目の前になんと、スーパーガールが立って笑っている。
(Mr.N)「ス、スーパーガール、いやそんなはずはない。もしかして幽霊か」
(S)「そんなわけないでしょ。やっと正面切って会えたわね。それでは逮捕しますよ」
(Mr.N)「あーーー、そんなばかなぁ!」
ミスターNが警察に連れていかれる頃、スーパーガールRも現われた。
(SR)「やっと、元通りになれたよ」
(S)「大丈夫だった?」
(SR)「へへ、平気平気」
ミスターNは振り返りながら喚いている。
(Mr.N)「わからん。マスクは?呪文は?いったいどうやって・・・」
2人は笑いながら、
(SR)「あのベネチアンマスクだけどさ。すごく高価で美しいんだよね」
処分を言いつけられた部下が、
「セメントで固めて海に沈めるなんてもったいない。こっそりもらっておこう」
と考えたわけだ。
(SR)「あのね、悪人の部下っていうのは、概してそういうのが多いじゃない。それで助かったわ」
(Mr.N)「でも、でも呪文はどうやって?」
(SR)「前にあたしが書いたメモがまだポーチの中に残ってたの」
例の『マスクを持って変身と叫ぶ』、あれだ。
(SR)「でさ、あんたの部下が、あたしの服や下着を漁った時に、それを見つけたらしいんだ。そして叫んでくれたってわけよ」
(Mr.N)「馬鹿どもめ!マスクを持って叫んだのか」
スーパーガールとスーパーガールRは顔を見合わせて笑った。
(Mr.N)「チキショー俺が自分で処分すればよかった」
(S)「悪人のボスは、そういうこと絶対自分ではやらないもんよ」
彼女たち、非常に幸運であったようだ。
ミスターNは連行されていった。
見送りながら、
(S)「しっかし、今回は危なかったね」
(SR)「でも十分なスリルを味わうことができたわ」
(S)「スリル?スリルなんてもんじゃないでしょ。もう二度とごめんだわ。でもさ・・・」
マネキン商会の事件はすべて落着した。
「行ってきまーす」
真理子はいつものように学校へ行く。
「催眠術にかかっていたとはいえ、ホント馬鹿なことやっちゃったよ。
おかあさんとわたしのどっちが強いかなんて、一瞬、本気で思ってしまった。
結果は3敗。全部ちぎれてしまったわ。
やっぱり強いんだな。しかしまだ痛いよ、痛っ!」
2回もバラバラにされ、全身が痛いのはもちろんだが、あそこが特に痛い。
「でも、やっぱスリルのある日常って刺激的でいいな。痛てて!」
当分の間痛みは続くだろう。
美代子は上層部に報告の帰りだが、体をゆがめながら歩いている。
ミスターNを逮捕して大手柄だが、それどころではない。
「痛ったぃ・・・体中がまだバラバラみたい」
そして一番大事なところは、まだやけどのようになっている。
「まったく頭に来るなぁ。あたしのクリを火消しに使ってくれて」
いやあ、でも危なかったけど、なかなかおもしろかったよ。
たまにはこういうのもいいかも」
そして2人は
「今日も、何かゾクゾクすることないかな?」
スリルを求めて悪と戦うのである。
スリルの極み 完
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