妄想別館 弐号棟


ハプニング その1


3年生送別会プログラム(一部抜粋)
プログラムNo15 
3年生女子クラス委員有志 A組 小林あかね B組 木村理恵 C組 本間 啓 D組 松本久美子 E組 山川美江 F組 松嶋夏希
第一部:歌と踊り(幸せの黄色いリボン) 第二部:ショートパフォーマンス(本校校歌 2分17秒)
列挙されているのは、学年のみならず学校中であこがれの美人才女たちである。
そして彼女たちへのいやらしい妄想、いやいや、ロマンチックな想いを抱(いだ)いている者たちは数知れず・・・
以下は彼女たちが参加した送別会の顛末記である。
            
3月も早(はや)中旬。
理恵たちの高校でも卒業式間近だが、まだ大事な行事が残っている。
在校生が卒業生に感謝の意を込めて行う送別会、これである!
1年生と2年生がクラスごとにコーラスやダンスなどを披露するが、個人や小ぐループでの飛び入り参加も『可』である。
過去には、ギターの引き語り、創作ダンス、変わったところでは手品や落語などもあった。
また卒業する3年生側も、下級生に対してお礼の意味で参加するのも有りだ。
しかも無礼講。教師陣も生徒の主体性や自由意志にまかせて、何も言わないことが暗黙の了解のようになっている。
さて、3年生の女子クラス委員である理恵たち6人。
大学進学も無事決まりホッとしているところであるが、最後の思い出づくりにと、有志グループとして参加することにした。
ただし1年生、2年生と違い、準備も含めた練習期間は今日からである。
送別会当日までの日数は少なく、強行スケジュールではあるが、
「よしっ、気合でがんばろう!」

まずは練習初日。
(美江)「音がつぶれてるよ。英語の曲なんだから、発音をもっとシャープにして」
(理恵)「ここは、もうちょっと派手な振り付けにしようよ」
送別会まで、もう一週間もないのだが、次々と意見や希望は出てくる。
妥協なし。歌い方や振付はもちろん、気が付いたところや気に入らないところは片っ端から直していく。
振り付けを合わせながら踊っているうちに啓が「ねえ、着ている物がバラバラってダサくない。揃えようよ」と、言ってきた。
しかし、全員が同じ衣裳を整えるには結構お金がかかる。第一、
(あかね)「今から手頃な衣装を探してくる時間なんてないよ」
そこで、こういう事に手慣れているであろう送別会の実行委員会に、
(夏希)「何かいい方法がないか聞いてみようか」
相談しに行くと、首尾よく、
(実行委員長)「それならチアガール用の衣装がありますよ。何年か前の学芸会の時に買い込んだ余(あま)りですが新品です。どうぞお使いください」
欲を言えば、色やデザインがイメージと少し違うが贅沢はいってられないな。
(夏希)「まあ、これでがまんだね」
各自、適当なサイズを選んで着ることにした。

次の日の放課後の練習時間。送別会の4日前である。
理恵が「ちょっとこれ見てよ」
ヒラヒラさせている紙きれには『3年生女子クラス委員のチアガールの踊り、楽しみにしています』と書かれている。
(夏希)「なによこれ。応援?」
(理恵)「下駄箱に入ってた」
覗き込んだ久美子が「えー、あたしの机にも入ってたよ」と、鞄から紙きれをとりだした。
そこには『久美子!チアガール、頑張れ』と書かれている。
さらには美江までもが「ウソぉ、あたしもよ。だけどさ・・・」
彼女はフンと鼻を鳴らし「みんなのは声援だものなぁ。あたしのは『太ももがまぶしそう』だったよ。捨てたけど」
理恵と久美子は、紙きれを並べて筆跡を比べてみるが全然違う。
「まったく別人のようだね」
6人は顔を見合わせて「衣装の話がもう広まってる」「変な目で見られるの嫌だね」などと言っていたが、
(夏希)「気にしててもしょうがないでしょ。練習を始めようよ」

練習を始めてしばらくすると、
(あかね)「あのさ、本当にこれだけでいいの」
チアガールの衣装は際立って目立つだろうが、内容的には一曲を歌うだけ。
(あかね)「奮って参加した割には、イマイチしょぼい気がしないかな」
これだけでは少し物足りない感じがすると、あかねは言う。
「そうかもねぇ」
かといって、追加で選曲と振付まで考えて練習するには、さすがに時間が足りない。
(啓)「それじゃぁさ」
歌とは別に、第二部としてパフォーマンスをやってみるのはどうだろう。
舞台の上に立って、チアガールの衣装を観客にじっくり見てもらう。6人で愛嬌を振り撒きながら。
(啓)「どうかな、このアイデア」
これなら特別な、いや何の練習も必要なく簡単だ。舞台上に立ってるだけだから。
何もせずに見られるだけっていうのも、なんとなく面(おも)はゆいが、これに決まった。
(久美子)「だけどさ、6人一列に並んで立ってるのって、なんか能がないね」
(夏希)「そんなこと言ったって体育館の舞台じゃ、どうしようもないでしょ」
夏希は少し考えていたが、思い出したように、
(夏希)「あっそうか、回転するステージで歌うといいんじゃない。演出効果大だよ、きっと」
確かに以前、何かの催し物で見たことがある。
(あかね)「それだよそれ。小さいけど確かあったよね。クルクル回るステージが」
再び実行委員会室に行き、回転舞台の利用を希望してみると、
(実行委員長)「ありますよ。差渡し(直径)5mくらいの電動式のが。体育館の後方に設置しますので、どうぞお使いください」
さらに、この回転舞台の周りには、自動で昇降できるカーテンも張れるそうだ。
これも演出に使おうということになった。

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