妄想別館 弐号棟


ハプニング その2


さらに次の日、送別会の3日前である。
美江がふくれっ面で「ねえ、今度はこれだよ」と、鞄をガサガサさせて紙切れを取り出した。
『美江さんの水着がみたい』と書いてある。
(理恵)「あれ、今度は水着になったのか」
夏希は「やっだなぁ。いやらしい」
啓が「あたしにもきてたよ。でもいやらしいこと書いてあったから捨てちゃった」
『本間 啓の全裸が見たい』だったとか。
(啓)「でも、あたしのはもっと細くて汚い字だったから、差出人は別人だな」
聞いていたあかねがあきれたように「あんたたちマジかい。あたしのところにもいやらしいのが来てたよ。あたしも破いて捨てちゃったんだけど」
卑猥な文句で『小林あかね 裸になれ』だったそうだ。
(あかね)「あたしのは、どう考えてもクラスの誰かが書いたとしか思えないんだな」
もうすぐ卒業ということで、不埒(ふらち)な連中が、なりふり構わず自分の願望を書いてきたのだろう。
(久美子)「いやらしいねぇ。何を考えてんだろ」
(夏希)「本当だよ。一体全体」
夏希は憤慨しているが、啓はそれほど気にしていない様子。
フンフンとうなずきながら「あたしたちの裸や水着がそんなに見たいのね」
夏希が「ちょっと、冗談じゃないよぉ」と憤(いきどお)っている。
細身の彼女は両肩に手をクロスし胸を隠す仕草で、さらにいかにもいやそうな顔もして、
(夏希)「あたしたちのことそんな風に思ってるんだ」
(美江)「まあ、男子はほとんどそうだろうね。でも水着になるわけじゃないし。気にしてもしょうがないよ。さあ練習しよう」

(美江)「歌の方はもう大丈夫だと思うんで、今日は第二部のパフォーマンス中心に練習だよ」
(夏希)「立ってるだけでしょう?練習するほどそんなに大変かな」
難しいはずはない。しかしいざやってみると、あまりにシンプルすぎることに気がついた。
(あかね)「ちょ、これだけじゃ、絶対につまらないし、シラけるよ」
(夏希)「やっぱり、みんなもそう思うか」
(啓)「そうだよねぇ。ただじっと立ってるだけだもの」
(理恵)「それじゃあさ、なんかポーズをとったら」
そして・・・
第二部はチアガールの衣装で腰に手を当てた立ちポーズをとる。
そして彼女たちを載せた回転舞台が観客席の前をクルクルと回る。
構想は出来上がった。が、しかし、
(あかね)「やっぱりこれでもつまらないよ。もう少し何か工夫しないと」
画面の前のみなさんも各自で想像してもらいたい。
チアガールの衣装を着たとして何もせずに舞台上をただ回っているだけの自分を。
それを見ている観客の心境を。
ね。たしかに、シラけてしまうのがわかるでしょう。
何か『コレは!』というような、演出方法を考えなくてはいけない。
何か良いヒントがないか、実行委員会室に、またまた相談に行くことにした。

今日は女子の実行委員が対応に出てきた。
(女子実行委員)「第二部はファッションショーですか。それはいいアイデアですね。以前にもそんな演出をした人いましたよ。でもですね、えーっと」
彼女は過去の送別会実施記録簿をゴソゴソと見ていたが、
(女子実行委員)「あ、これこれ。ファッションショーより水着ショーの方がよくありませんか」
「え、水着ショーってなんですか?」
彼女は記録簿を差し出して見せる。
そのページには数人の女生徒が水着で踊った記事が載っておリ、会場が異様に盛り上がった様子が詳細に書かれていた。写真もでかでかと貼ってある。
(女子実行委員)「第一部で歌、第二部で水着とくれば完璧!すごく印象に残る送別会になりますよ」
と、おだてる。さらに声を潜めるように、
(女子実行委員)「噂では、みなさんの水着を見たがっている男子もいるようですし」
しかし水着と聞くと理恵たちはうろたえだし、
「えー、それはちょっとぉ」
「あ、あの少し考えさせてください」
逃げ出すように実行委員会室を飛び出してしまった。

(久美子)「どうする?」
(理恵)「どうするっていったってさ」
(夏希)「そんなのダメだよ。却下、却下!」
(あかね)「でもさ、水着で振り付けすれば、確かに相当盛り上がりそうじゃん」
(美江)「盛り上がる?うーん、盛り上がるには盛り上がるんだろうけれども・・・」
(夏希)「絶対だめだよぉ、水着なんて」
(啓)「夏希、少し落ち着きなよ。なんか他にいい方法が思いつくかね。もし何もないんなら・・・」
夏希が騒ぎ出し「えーいやだよぉ。水着なんかになるのは」
理恵と久美子も渋い顔をしている。
「あたしたちもいやだ」
結局、どうするか結論が出なかった。
(美江)「今日はもう時間がないな。とにかく各自、一日考えてこよう」

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