人間人形 その1
ビルの植え込みの陰に、うずくまるように隠れている女性がいる。
彼女は用心深くあたりをうかがっていたが・・・
突然スッと音もなく立ち上がった。
それは長身のスリムな女性であったが、立ち上がるや否や一瞬でビルのゲートを軽く飛び越えて、敷地内に侵入した。
彼女は出入口横の柱の陰まで移動して再び身を伏せた。
ここはもうビルの監視エリア内だろう。
「見つかるのも時間の問題かな? 急がないとね・・・」
スーパーガールこと本間美代子が忍び込もうとしているのは、ごくごくありふれたビルであった。
いつものように赤のベネチアンマスクとビキニコスチュームの出で立ちである。
彼女、不死身であり、バラバラにされたが生き返ったこともある・・・というのが前回のお話。
さて今回の事件である。
ここ数か月、行方不明の少女や女学生の失踪事件が起こり始めた。それも異常なほど・・・
捜査を進めているうちに、すごく胡散臭い、ある企業が浮かび上がってきた。
株式会社ドリームカンパニー。
表向きはアダルトグッズを主商品として扱っている適法な会社である。
しかし、裏では、いかがわしい事業で利益を上げているのが実態らしい。
入手した極秘の情報によると、
『いたいけな少女をさらって、何か悪辣(あくらつ)なことを行っている』
運よく逃げてきた女性の証言がある。
「ウソではないな」と美代子は思う。
しかし証言はあやふやで詳細はほとんど不明。
物的な証拠らしいものもなにもなく、とても逮捕に踏み切るまでには至らない。
しかし被害はどんどん広がっていく。
黙って見ておられず、ついに、
「もはや、まだるっこしいことしてられないわ。証拠さえあればいいのよね!」
スーパーガールに変身して単身乗り込んできたわけ。
地下室に降りて最初の部屋をのぞくと、
「うゎ!何なのこれ!」
目が本当の真ん丸になってしまった。
そこにあったのは俗に言う『大人のおもちゃ』であった。
ニヤニヤしながらも「えーーー、いやらしいなぁ」
男性のナニの模型がズラリと並んでいる。
電動式のもの、高性能型のもの、超特大のもの、その他いろいろある。
嬉しそうに一つを手に取ってさすってみるが、
「そうだよねぇ。アダルトグッズの会社だもん」
とか何とか言っているうちに、顔はどんどん熱てり動悸がしてくる。
「いやだわ!あたし何考えてんだろ」
両手をほっぺたに当てたところで我に返る。
「こんなところで道草している場合じゃないな」
しかし次の部屋では・・・
「うゎ、これはいったい?」
薄暗い部屋の中には人間が大勢いた。
部屋の中にいる者全員が全裸の若い女性。
さまざまなポーズをとっている。
バレエの踊り、疾走中、寛いでいる者。
近寄って「ちょっとあなた」「しっかりして」「どうしたの」
と、声をかけてまわるが、全然反応がない。
(S)「ちょっと、あれ、カチカチじゃない」
1人の手を動かそうとしたが、まったく動かすことができない。
(S)「???」
他の者もみんな同じだ。体が完全に固まっている。
死んでいる?いやそうは思えない。血色も肌の色艶(つや)もいい。
しからば、生きているのかというと、あきらかに心臓は動いていないし、息もしていない。目の瞬きもまったくない。
(S)「いったいこれはどういうことなんだ?」
腕を組んで考えているうちに「ん?」
よく見ると、彼女たちは全裸で『一糸まとわず』と、言いたいところだが、手首に黒いブレスレットをしている。
(S)「なんだろこれ? 全員が同じものをしているな」
これはいったいなんだろう、と、1人の女性に近づきかけた時、
突然、室内が明るくなり「ようこそいらっしゃいました」と声がした。
(S)「あ!」
(ダーク)「あなたがスーパーガール、いえ本間美代子さんね」
しまった見つかったと思ったが、彼女は落ち着いたものである。
ゆっくり振り向くと、
入口のところに紫色のロングドレスを着た女が、手下数人とともに立っている。
美代子は、腰に手を当てて仁王立ちのレギュラーポーズになった。
首をかしげながら「あなたはいったい・・・」
(ダーク)「お初にお目にかかりますわ。わたしはここの社長のダークガーネットと申します。お見知りおきを」
(S)「ははん。余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)ね。えらく自信がお有りの様ですね、あなたは」
(ダーク)「フフフ、どういたしまして」
(S)「本題に入るわ。いったい少女や若い女性をさらって何をしているの」
(ダーク)「単刀直入な物言いね。フフこの通りよ。お人形さんにして鑑賞しているんです」
(S)「人形を観賞って?ここにいるのは人間じゃないの」
(ダーク)「あたしたちはね、ここにいる女性たちを人間人形と呼んでいるの」
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