妄想別館 弐号棟


人を呪わば その2


(絵里香)「ねぇ愛花。帰りにホームセンターに付き合ってくれない」
(愛花)「え?別にヒマだからいいけど。めずらしいな。何なの?」
(絵里香)「ちょっと、彼氏用に洒落たプレゼントを見つけたんだ」
(愛花)「彼氏にプレゼント?」
『彼氏』と『プレゼント』と聞いて愛花は興味を持ったようだ。
(愛花)「絵里香、彼氏がいるんだ。わかった、いいよ付き合ってあげる」
そして放課後。
2人はホームセンターのガチャポンコーナーにいる。
(愛花)「なにこれ。ガチャポン?」
こんなのがプレゼントになるのかと、不思議そうな顔をしている。
(絵里香)「まあまあ。でね、そこに女の子の名前が書いてある紙があるでしょ。そこに自分の名前があるはずだから〇(丸)をつけるのよ」
(愛花)「名前?ふーん」
貼ってある紙には「確かにあるね。あたしの名前も。でもこれ何のガチャポンなの」
この販売機を見てみると、
(愛花)「何これ。『日本の女シリーズ コレクション』って。変なの。へー、でもこのアイテムってすごくよくできてるね」
まるで本物の人間を小さくしたみたいだ。
(愛花)「あたしも一つ買ってみようかな」
絵里香は少しイラつき気味になり、
(絵里香)「買うのは後でもいいじゃない。とにかく先に〇をつけてよ」
(愛花)「何でョ」
(絵里香)「まあいいから。つけてみればわかるって」
愛花は不審に思いながらも『あいか』のところに丸を付けた。
(愛花)「こうするのね・・・あ、あーーー!」
してやったり!絵里香はフフと笑いながらこの様子を見ていた。
足元には、かわいいお人形(アイテム)と紙きれが落ちている。
拾い上げて「わぁ、愛花ちゃん、かわいいお人形さんになっちゃったぁ」
きれいで美しい人形をさすりながら、
(絵里香)「もうあなたは永久にお人形さんのままね。フフ、これで慎之介君は私の物ヨ」

(絵里香)「さてと、これをどうしようかな」
捨ててしまうか。誰かお客が来たらこのままあげてしまおうか。
考えていると、突然後ろから声がした。
(男)「やれやれ、困ったことをしてくれましたね」
「え!」振り向くと例の清掃員が、入り口をふさぐように立っている。
絵里香は初めて恐怖を感じた。
震え声で「あなたはいったい何者なの?」と言った。
(男)「なーに、私はただの清掃人ですよ。でもあなたが秘密を知ったのはまずかったですね」
鉛筆を手に持つと、
(男)「お気の毒だけど、あなたにも〇をつけさせてもらいますよ」
絵里香はドキッとした。
(絵里香)「私の名前なんかわからないでしょ。それに、それに」
(男)「それに?何です」
(絵里香)「これって他人が〇してもダメなんでしょ。この前、あたしが愛花の所に〇をつけたけど、何も起こらなかったよ」
(男)「そんな簡単な事。私は特別なんですよ。これを作ったのは私なんですから。あったあった絵里香さんでしたね。さっき愛花さんと名前を言い合って騒いでたでしょ」
絵里香は血の気が引いていく。
(絵里香)「ちょっと待ってぇ。ガチャポンの景品になるなんて、いやぁ!」
しかし男は躊躇(ちゅうちょ)せずに『えりか』の所に丸をつけた。
(絵里香)「い、いやだいやだぁ、あぁぁーーー!」

すました顔をしたお人形がころがっている。
男は手に取って「とてもかわいいお人形だな。でもあなたは悪い事を考えましたからね。もう少しお仕置きが必要ですね」
と言って「うーん」と考えていたが、
(男)「そうだ『シークレット』になってもらいましょうか。
2人とも、何か因縁があるようだから、愛花さんも付き合ってもらいましょうね」
落ちていた愛花のガチャポンも絵里香の横に並べた。
口の中でゴニョゴニョと呪文を唱えると、2人は下着の姿になってしまった。
(男)「さすがに、素っ裸の品物を販売するわけにはいかないからね」
そして2つのアイテムを、再び機械の中に戻し出て行った。

2人の優等生も行方不明になってしまった。
絵里香のクラスでは、しばらくの間は騒然としていたが、慎之介は別に気にも留めない。
後日談がある。
たまたま、慎之介が友達とホームセンターを訪れる機会があり、これもたまたまであるがガチャポンをやることになった。
そして出てきたのがなんと、
(雄介)「おい、お前の下着じゃないか。それシークレットだろ」
(時雄)「狙ってたんだろ」
(慎之介)「バカ言え。そんなわけないだろ。たまたまだよ」
なんと絵里香のアイテムであった。
(慎之介)「すごくよくできてるなぁ」
嬉しそうに下着姿の人形を見つめている。
これが行方不明になった元クラスメートだということに、彼は全く気が付かなかった。
紙きれに『えりか』と名前が書いてあるにもかかわらず、
『えりかって?もしかして行方不明になった絵里香と何か関連があるのでは!』
・・・などということは、微塵も思わなかったのである。
ただのアイテムとして鞄にぶら下げて歩くようになったとさ。
ただし絵里香は慎之介とず―っと一緒になる事が出来た様である。

                                          人を呪わば 完

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