妄想別館 弐号棟


四勝一敗 その1


本編も『24 カプセルトイ』の続編と思って読んでください!

本間里帆先生は痛烈な責任を感じている。
(里帆)「何という事なの!」
自分が担任をしているクラスから行方不明者を2名も出してしまったのである。
つまり愛花と絵里香である。
別に里帆の責任ではないし、捜索は警察の仕事ではあるが、とてもじっとしていられない。
(里帆)「必ず私が犯人を突き止めてやるわ」
独自に、いろいろと聞き込みをするうちに、どうも2人は某ホームセンターに行ったことがわかった。
(里帆)「何か手掛かりが得られるかもしれない」
というわけで彼女もここ(ホームセンター)に来てみた。

買い物客は多数いるし、これと言っておかしなところ、怪しいところなど見つからない。
例のガチャポンコーナーのところにも来たが、子どもたちがワイワイ騒いでいるだけだ。
「あれ?」
彼らが人形のようなアイテムを持っているのに気が付いた。
(里帆:すごくよくできているな)
子どもたちが出て行った後にのぞいてみると、
(里帆)「え?日本の女シリーズ?」
表題からしてなにか変だ。でも物は絶品のようである。精巧そのもの。
試しに一つ買ってみると、入っていた紙に久美と書いてある。
(里帆)「え、久美?すごいなこれ、名前まであるのか。うゎ本物そっくりじゃない」
近づけてよーく見てみるが、どう見ても人間を小さくしたようにしか見えない。
その時「いらっしゃいませ」清掃の男が入ってきて、奥の方に歩いて行った。
奥にある販売機から順々に雑巾で拭き始めている。
里帆は「あ、どうも」と軽く会釈して、さらに人形を見ていたが、
(里帆:あれ、この制服は○▽会社のものだわ)
このホームセンターのほんのすぐ先にある○▽会社の女性が着ている制服に間違いない。
この会社は全く平凡な食品メーカーである。
(里帆:どうしてこのガチャポンに、あんな普通の会社の制服人形があるんだろう)
どう考えても変だ。首をかしげていると後ろから声を掛けられた。
(男)「あの、どうかなさいましたか」
(里帆)「あ、いえ。このアイテムってすごく精巧ですけど、どこで作られているかご存じですか」
(男)「私は掃除専門の従業員なので、よくは知らないんですよ。申し訳ありません」
(里帆)「そうですか」
(男)「あ、もしよろしければ、上に貼ってある紙のお名前に〇をしていただけませんか」
(里帆)「え?」
なるほど上に紙が貼ってあり、里帆の名前もある。
(里帆)「〇ですか」里帆は置いてあった鉛筆で、『りほ』の所に○をつけた。
すると・・・
(男)「はい、一丁上がりぃ。どうやら探りにきたようだな。気をつけなくちゃな」

子どもたちが何人かやってきた。その後また数人。
そしてまたまた何人かが例のガチャポンをやって帰っていったところである。
(男:今日はすごくよく売れるな)
通路で子どもの声が聞こえた。
(子ども)「あ、僕のは『りほ』だったぁ」
(男:どうやらさっきの里帆人形は売却済みとなったようだな)
子供たちが去ってしばらくすると、大学生くらいの女性が入ってきた。
(男) 「いらっしゃませ。あ、清掃はすぐ終わりますのでごゆっくりどうぞ」
女性は頭を軽く下げて挨拶すると、室内を見回し始めた。
何か探している様子であったが「あったこれか」と言って、例の販売機の前に立った。
男は手前にあるガチャポンの販売機を拭く素振りをみせながら、女性を注視している。
女性は販売機の中をじっとのぞき込んでいるが、
(女学生)「うわぁ人間そっくり。3Dプリンターとかで作ったのかな」
憂い顔ではあるが、何とも言えない妖艶(ようえん)さを漂わせている。
(男:これはまた、怪しい雰囲気のある学生さんだな。さぞかしモテルんだろうな)
(女学生)「はぁ、しかしこのお人形、人形にしてはできすぎてるわ。名前までついてるのね」
しばらく見ていたが、
彼女は「あの、恐れ入りますが、これはどこで作られているかご存じありませんか」と聞いてきた。
(男)「いえ、私は清掃員なのであまり良くは知らないのですが。それがなにか」
彼女は「実は」と切り出した。
(女学生)「あたしの妹が行方不明になってしまったんです。
ただ家を出る時に、ここに人間そっくりのフィギュアがあるから買いに行くとか言っていまして。多分これがそうだと思うのですが」
(男)「それはそれは、心中お察しいたします。妹さんはどんな感じの方ですか。
私は長いこと、このコーナーで掃除員をやっているので、もしかしたら見かけたことがあるかもしれません」
女性は表情が少し明るくなったようだ。
(女学生)「もし情報があれば教えていただければ、ありがたいのですが」
(男)「いえ、参考になるかどうか。あ、でもその前に、そこの上に女性の名前のリストがありますが、〇をつけていただけませんか」
(女学生)「え、これですか」
彼女は『商品一覧表』と書いてある紙を見ていたが、
(女学生)「えっと、あ、ありました」
彼女は何の疑いもせずに「はすみ」と、いう名前に○をつけた。
(女学生)「え、あ!」
男は人形をひろいあげながら「理由はわかりましたかね」
あたりを見回し「今日は探りが多いな。でもこれで2人目、まあ2勝ってとこかな」

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