妄想別館 弐号棟


四勝一敗 その2


(薫)「あの、少々お尋ねしたいことが」
男が顔をあげると、美しいパンツルック姿の女性が立っている。
(男:またなにか探りに来たのかな。しかしこれはまたえらく美人だな)
しかもこの女性はかなりの切れ者のような感じがする。
女性は名刺を出しながら「私(わたくし)、こういうものです」
(男)「〇▽興信所、永沼 薫?ああ探偵さんですか」
(薫)「そうです、実はですね・・・」
この女性も行方不明者を調査しているうちに、ここを探り当てたようだ。
(薫)「どうも『行方不明者は皆、このホームセンターに来ている』と、いうところまでは確実な情報なんですが、なんと言いますか・・・」
(男)「なんでしょう?」
(薫)「奇妙なことに、この建物から出て行った形跡、いえ、情報が全くないんですよね」
(男)「ほう」
男は(なかなか際どい所まで調べているな)と、思った。
(男)「すると、この建物の中で消えてしまったとでも」
(薫)「おかしな話なんですが、そうとしか考えられません。しかも、ここのガチャポンに関係する情報ばかりなんです」
彼女は探るような目つきになった。
(薫)「このコーナーを見に行った、買おうと思って出かけた、面白いのがあると言っていた、とね」
(男)「なるほど」
(薫)「あなた様は、このコーナーで長く清掃の業務に携わっているそうですので、何かお知りになっていることがあるのではないかと思いましてね。
それで不躾なお願いで恐縮なんですが、お話を伺わせてはいただけませんでしょうか」
(男)「ははあ、そういうことですか」
(薫)「些細なことでも結構ですので、何か気が付いたことなどありませんでしょうか」
(男)「そういうことですか。お役に立てるかどうかわかりませんが」
男は頭をかきながら「ちょっとこちらへ」
彼女を例のガチャポンの所へ連れて行った。
(男)「上に紙が貼ってありますよね。そこに、あなたのお名前がありますかね」
(薫)「え、ええ?商品一覧表・・・ですか。なんですか商品って?」
唐突な質問に、薫は妙な顔をしてその紙を見ていたが、
(薫)「ええ、ありますよ。私の名前も。これが何か」
(男)「そこに〇を付けてもらえれば、ある程度事情がわかると思います」
(薫)「は?〇を付けるんですか?それで事情が分かるって?」
(男)「はい。そうなんです」
薫は何のことだかさっぱりわからないが、とにかく言われるままに〇をつけた。
(薫)「これでいいですか・・・え、あぁーっ」
ニッコリと笑っている薫人形を拾い上げて、
(男)「これはこれは、久々に美人系のアイテムが手に入ったな。よし、これはシークレットにしておこうかな」
販売機の中には、すごく目立つ美人で下着姿の薫のアイテムが横たわっている。
(男)「これで3勝目だな」

次に来たのは、少し小柄だが、スタイルの良い女性だった。
(男:なんだこの女は?隙もないし、ずいぶん冷静そうな様子だな)
彼女は室内をゆっくりと歩きながら見て回り、やがて例の販売機の前まで来た。
まず1つ買った。
中身を取り出して見ていたが、とても驚いたようで首をかしげている。
そして鞄からノートを取り出してアイテム人形と見比べている。
女は「まさかね」と言った。
(男:何をやってるんだ)
男は緊張した。
彼女はもう一つガチャポンを買って再びノートと比べている。
「間違いない」と言って、男の方を見た。
目があった男は「私に何か?」
(女刑事)「私、□▽警察署の者です」
(男)「警察?」
(女刑事)「ご存じだと思いますが、最近この近辺で女性の失踪事件が相次いでおりまして、その捜査をしてるんですが・・・」
(男:こいつはやばいな)
男はいかにも恭しく頭を下げ「それはご苦労様です」
(男:行方不明の被害がいよいよひどくなったので、いよいよ警察も捜査に乗り出したってわけか)
(女刑事)「捜査上あまり詳しくは言えませんが、被害者は全員、このホームセンター、そしてこのガチャポンコーナーを訪れていることがわかっています」
(男)「・・・・・」
(女刑事)「私は、2つほど買ったガチャポンのアイテムを行方不明者の顔写真と比べてみたんですが、このアイテムは行方不明者を元に作られた物のようですね。
この販売機の中のアイテムも、おそらく全部そうなんじゃないかしら」
男はさらにとぼけて「えぇ、そうなんですか?」
(女刑事)「さらっていった女性たちを元に3Dプリンターのようなもので、これを作ったとか。
そしてここで販売しているのではないかと思うのですよ」
男は(少し違うんだよな)と思ったが、
(男)「なるほどなるほど」
(女刑事)「と、いうわけで、あなたは何かご存じの事があるんじゃありませんか」
(男)「え、私を疑っているんですか」
(女刑事)「そうは申しません。しかしあなたはずっとこの場所で働いていらっしゃるので、多少なりとも何か気が付いたことがあるはずでは、そう思っているんです」
彼女は自信満々だ。疑うような目つきも鋭い。
しかし男はさからわずに、ゆっくりとうなずいて、
(男)「ごもっとも。わかりました。知ってることは全部お話ししましょう」
(女刑事)「それはありがたいです」
彼女はフッと微笑んだ。
(男)「でもその前に、あなたのお名前をお聞かせください。それからその上に貼ってある紙に〇をつけていただけませんか。その方が説明しやすいので」
女刑事は「?」と思ったが、「まあ、そんなことなら。わたくし▢▽警察署の沢口 怜と申します」
(男)「沢口様ですね」
(怜)「はい、それから・・・商品一覧表?ずいぶんひどいタイトルね。
えっと、ここに〇をつければいいんですね」
(男)「はい。はっきりとお願いします」
怜は「れい、れい、あった。れいに○をっと、これでいいの・・・あ、あぁーーー!」
(男) 「はいおしまい。ヒヤヒヤさせますね」
怜のアイテム人形はうつ伏せに転がっているが、
(男)「バツとして、あなたもシークレットになってもらいましょうかね」

しばらくすると、ワイワイと子どもたちが入ってきた。
(子どもA)「おいこれ、俺この下着のがほしいな」
(子どもB)「なになに、『れい』とか書いてある。よしそれ取ろうぜ」
男は満足そうにうなずき、
(男:よし、四勝ゼロ敗か。やーれっと。ちょっと一服してくるかな)

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