妄想別館 弐号棟


四勝一敗 その4


数時間後。
男は再び壁の穴からコーナー内の様子をうかがっている。
(男:今度は販売機に『売り切れ』の札を張っておいたが・・・)
学生たちが何人かやって来くるが、札を見てはガッカリしながら帰っていく。
(男:やっ、来た!)
ミスターKがはいってきた。
彼もガッカリして出て行くかと思いきや、フンフンとうなずいて笑っている。
(男)「何がおかしいんだろ」
しばらく見ているうちに、ミスターKは驚愕(きょうがく)するような行動に出た。

6年生くらいだろうか。小学校高学年の女の子が入ってきた。
彼女がウサギのガチャポンの前で中をのぞいていると、ミスターKが近づいてきて、
「お嬢さん、ちょっとお願いがあるんだけどな」
女の子は彼の巨体を見て、少し怯えた様子だったが、
(Mr.K)「そんな怖がらなくてもいいよ。簡単なお願い。
ここに紙が貼ってあるでしょ。
あなたのお名前に〇をつけてほしいんだ。それだけ。ね、お願い」
女の子は、少し警戒を解いたようで、
(女の子)「〇をつければいいんですか」
(Mr.K)「うん、それだけ」
女の子は「しほ」という所に〇をつけている、そして・・・
男は嬉しそうに、志保ちゃん人形を拾うとスッと鞄にしまってしまった。

同じことを3人までしていたが、清掃員の男はとうとう飛び出してきた。
(Mr.K)「ほほう、これはこれは」
(男)「あんた、何をやってるんですか」
ミスターKはニヤリとして、
(Mr.K)「それはこっちのセリフでしょ。いや全部調べて、わかってるんですよ。
あなたが何をやっているかも。いやいや誤解しないでください。
事を荒立てるつもりはまったくありません。わたしはこれでも結構な資産家でしてね。
ただ、この人形を集めるのが病みつきになりまして。
これからも集められれば、それだけでいいんです。
別に、あなたをゆするとか、おどすとか、もちろん警察やここの関係者にも言うつもりはありません」
ミスターKはそこまで言うと、懐からパンパンになった札束の封筒を男に渡した。
(Mr.K)「ですから、今後ともよろしく」
清掃の男は完全に気圧されている。
封筒をうっかり手に取ってしまったが、
(男)「ここにあるのは女のアイテムですが、男のだって、その気になればあなただってガチャポンのアイテムにできるんですよ。こんなことはやめてください」
かろうじて言い返したが、ミスターKは、あいかわらずニヤニヤと笑っている。
男がたじろぐと、
(Mr.K)「もし私に何かあれば、私の家に保管してある人形の個々のリスト、つまり行方不明者の身元ですね、
それからガチャポンアイテムの説明、あなたがやった事、全部警察に送るようにしてあります。
まあすぐには信じてもらえないかもしれませんが、写真や音声も含めた証拠は十二分すぎる程ありますからね。
それとホームセンターの社長にもあなたをすぐに解雇して、損害の裁判が起こせるようにも。
いや、そもそもホームセンターごと買収してしまった方がやりやすいかな」
男の顔はどんどん青くなっていく。
(Mr.K)「ついでに言えば、いえ、大きな声では言えませんがね、プロの殺し屋も5人ほど雇っていて・・・」
もうだめだ!
どうやら完全に男のことを調べ上げて、万全の対策を立てているらしい。
(Mr.K)「というわけで、仲良く行きましょうや。まあ、それは受け取っておいてください」
男は、負けたぁと思った、敗北を悟った・・・

また一人、スリムできれいな女性が入ってきた。
清掃員の男が反射的に「いらっしゃいませ」というと、すかさずミスターKが、
「恐れ入りますが、そこに貼ってある、お名前の一覧表に〇をつけていただけないでしょうか」
と言った。

                                          四勝一敗 完

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