都市伝説 その1
巷に都市伝説は数多く聞かれども・・・
教室の中にて。
男の子3人と女の子1人。
世間を賑(にぎ)わせている都市伝説談話で大いに盛り上がっている。
(優斗)「ほら見てよ。これは△◇失踪事件の切り抜きだぞ」
分厚いスクラップブックをカバンから取り出し、一生懸命説明しているのは優斗(ゆうと)君。
小学生でスクラップまで作っているとは、大した熱の入れようである。
(柚月)「フーン、見せてみて。なんだ、知ってるよ、こんなの」
せっかくの切り抜きをあえなく突き返した女の子は、柚月(ゆづき)ちゃんだ。
(壮太)「それ、俺も知ってる。優斗は流行に遅いんだよ。トロイな」
横から口を出してくるのが壮太君。
そしてもう1人、成り行きを興味深そうに見ているのが、颯真(そうま)君である。
ここはまだ自然の残る郊外の小学校。
4人は6年3組。担任は望月琴音先生だ。
美人で評判の高い、生徒の面倒見のいい先生である。
今回は琴音先生と4人の生徒のお話である。
『♪下校の時刻になりました♪!』
琴音が職員室に戻ろうとしたとき、下駄箱の所で威勢のいい声が聞こえてきた。
廊下の陰に足を止めて、聞き耳を立てる、と・・・
(颯真)「ちょっと聞いてくれ。俺、うわさの都市伝説が、本当かどうか試してみたいんだけど」
都市伝説?試す?
(琴音:何をやろうとしているのかな)
危ないことや風紀を乱すようなことをやって貰っては困るなぁ。
しかし元気いっぱいで好奇心旺盛な子供たちは何でもありだ。
何かを仕出かしそうな予感がいっぱいだ。
(颯真)「夜10時にだな」
(壮太)「ふんふん」
(颯真)「まず家庭科教室の黒板に『誰誰』と、名前を書くんだ」
(優斗)「名前を書くの。それから?」
(颯真)「そして机の上に榊(サカキ)の葉を3枚並べるんだ」
(優斗)「サ カ キ、って何?」
(颯真)「木の葉っぱだよ。まあ、あわてずに最後まで聞けよ」
琴音はニヤリとした。
(琴音:なぁにを言うことやら。まったくもう)
授業はきちんと聞かないくせに、と思った。
3人は迫るようにして、続けろと言っている。
(柚月)「葉っぱを並べるとどうなるのよ」
(颯真)「黒板に名前を書かれた人が何故かやってくる」
(優斗)「それでそれで、どうなるの?」
(颯真)「それだけだよ」
(柚月)「それだけ?それだけじゃしょうがないんじゃないのよ」
(壮太)「恐ろしいオチ話はつかないのかよ」
(颯真)「そんなの無いよ。それだけだよ」
3人は声を出して「つまらねぇ」と言った。
さんざんもったいぶって話した挙句がこれだ。
琴音は吹き出しそうになった。
こういうのは都市伝説と言えるのだろうか。
(琴音:子どもの考えることってどうしておもしろいんだろ)
琴音はさらにニヤニヤしながら聞いている。
(優斗)「じゃあさ、俺のとっておきの都市伝説を教えてやるよ。まあ聞け」
今度は優斗が前にのりだしてきた。
(柚月)「なによ、えらそうにして。さっさと話しなよ」
柚月がせかす。
(優斗)「満月の夜の9時57分から10時27分までの間に、誰か人の後ろでダルマを持って『ダルマさんが転んだ』と、言うと、その人の時間を10分間だけ止めることができるって・・・」
琴音はもっと聞いていたかったが、用事があるので職員室向かった。
(琴音:時間が止まるか。でもさ・・・)
首をかしげて考える。
(琴音:時間を止められれば、大方何をするかは見当がつくなぁ)
さて、琴音は帰宅してから、インターネットで昼間に優斗たちが言っていた都市伝説を探してみた。
「えーっと、都市伝説、都市伝説。
『月の夜にタヌキがぽんぽこポンのポン。キツネが葉っぱを頭にのせてドロン』、なんだこれ?
タヌキとキツネが人を化かすか。これは古すぎて違うな」
さらにグぐっていくと、
「おー、あるある」
しかし、ほとんどがウソくさいものばかりだ。
優斗たちの言っていたのも載っている。
内容は家庭科室だけではなくて、理科室、音楽室など、いくつかのバージョンがあるようだ。
『バージョンが多数』という言い方は、
聞こえはいいが要するに「結構いいかげんだな」
琴音はつぶやく「何のかんの言って、信憑性がありそうでも、やっぱりガセネタなんでしょうね。実際はウソなんだろうな」
本物の都市伝説なんてあるのだろうか?
いや、よくわからないから都市伝説なのであろう。
「んー」
やめてしまった。
それよりも琴音が気になったのは、
「まさか夜の10時に学校に忍び込んだりしないだろうな」
そのことの方が重要だ。
小学生が夜中に学校に忍び込むなんて、とんでもなイことだ。
「しかしあの4人組が簡単にあきらめるとも思えないな」
さてさて、彼らはどう出てくるかな?
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