都市伝説 その2
琴音は翌日から、そ知らぬふりをして彼らの動向を探ることにした
何気なく彼らの言動を見聞きしていると、葉っぱを探したり、誰を呼びだすかを検討している様子。
「お、どうしてもやるつもりか」
彼女も阻止すべく、授業内外でそれとなく、
「夜遊び、特に夜遅く家の外を出歩くのは危険なので絶対にしないように」と、言い続けるのだが、
そのたびに4人は、目を逸らしたりうつむいたり。
やはり後ろめたい思いはあるのだろうな。
琴音先生が「ダメ」と言っていることをやろうとしているのだから。
しかし決心は固いらしい。
琴音先生の不安(不満)をよそに、準備は着々と進んでいく。
一昨日、柚月が琴音の所に来て「先生、これサカキの葉っぱでいいんだよね」
(琴音)「そうよ、神仏に捧げたり魔よけに使うらしいね」
(柚月)「よしっ、ワンアイテムをゲット」などと言っている。
琴音は空とぼけて「何のことかな」
(柚月)「なんでもない」
サカキの葉は用意できたようだ。
なぜか教室の後ろにダルマが置いてあったりして!
(琴音)「壮太君、これどうしたの」
(壮太)「おじいちゃんのところから借りてきたの」
(琴音)「何に使うの」
(壮太)「えー、えっとぉ、あ、商売繁盛」
(琴音)「しょうばい・・・の・・・はんじょう?」
もちろんとっさについた言い逃れに違いない。
『なんの商売なの?』『学校で商売するの?』などと突っ込みを入れて聞くのは野暮である。
都市伝説で使いますとは言えまい。
(琴音:深く聞くのはかわいそうか。まあ、2つ目のアイテムも手に入れたか)
そして昨日の下校時刻のこと。
優斗と颯真が職員室にきて、家庭科の先生に何か聞いている。
「家庭科室のカギはいつも空いていますよ。準備室にはカギがかかっているけれども」
それを聞いて優斗たちはうれしそうに出て行った。
(琴音)「ついに第三関門も突破か。なかなか粘るな」
誰を黒板に書いて呼び出すのかな?
こっそり様子をうかがっていたが、クラスの子を呼び出すのはやめたらしい。
「塾がある子はだめだよ、塾を休まなくちゃならなくなる。成績が悪くなる」
「嫌いな奴を呼んだってムカつくだけだ。だからダメ」
なにより琴音の説教が効いたのか「夜中に呼び出して怒られたら気の毒」とか。
友達を思いやっているのは非常によろしいが、呼び出す人がいなくなってしまった。
結局、良く知っている大人と言うことに決まった。
そして琴音は誰を呼び出すかも見当がついていた。
(琴音:そう、あたし、望月琴音よ)
その通りになった。
自分が選ばれたのは、少しうれしくもある。
生徒がなついている証拠でもあるだろう。
しかしこれについては、彼らにも不安要素がある。
(優斗)「でも先生を呼び出したら怒られないか」
(颯真)「怒られたらいやだな」
(柚月)「怒られるよ絶対に」
(琴音:怒るに決まってるでしょ)
さんざん注意したのに、夜中に学校に忍び込むなんて、これは少しは懲らしめざるを得ないだろう。
そこで壮太が得意そうに出てきて言う。
(壮太)「まかせろ。とっておきの都市伝説があるんだ」
(柚月)「え、どうするの」
(壮太)「何でもいいから、ぬいぐるみのネコを右手に持って、左手で頭をなでる。それを見た大人は怒りたくなくなるんだって」
(琴音:へ?!)
ばかばかしいにもほどがあるな。
(琴音:そんなのもあるんだ。なんか情けない内容だな。ちゃっちい都市伝説だこと)
都市伝説は『量』としては増えているが、『質』はどんどん落ちているような感じ。
やはり優斗たちの所業については、犯行(実行)現場で少しきつく叱リつけてやることに決めた。
なんやかんやで、都市伝説の必要条件はそろったようだ。
数日経って、とうとう今日が満月だ。
バカバカしい都市伝説を忠実に再現するには今日を逃ス手はない。
逃せば次の満月まで30日待たねばならない。
琴音は明るさの残る空にぽっかりと浮かんでいる満月を見ながら、
「いやはや、これは絶対にやるな。仕方がないから、せめて危なくないように付き合ってみるか」
と思った。
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