レズ旅館の秘密 その8
碧(あおい)がごくごく小さい声で、
(碧)「塩崎さん」
(祐子)「?」
(碧)「あたし真理子のマスクの場所わかります」
真理子の処理が終われば自分たちの番だ。チャンスの時間はそんなにない
祐子は黙ってうなずくと、男たちに飛び掛かかる態勢をととのえる。
幸い相手は油断していて、祐子たちの手足をしばっていない。
すぐに浴槽に放り込むつもりだったのだろう。
そっと「あたしがおとりになるから、走ってその場所に行って」
碧はコクリとうなずいた。
女将は金属板の向こうで立ち話をしている。
そして、こっちの男3人のうち、2人が呼ばれて向こうに行った瞬間、
「それ!」祐子は足技で押さえていた1人をひっくり返した。
(祐子)「碧ちゃん今ヨ」
碧は全裸のまま、再び猛ダッシュで浴室から飛び出した。
「あ、待て!」
男たちが追おうとするのを遮るように、祐子が前に立ちはだかる。
(祐子:時間を稼がなくちゃ)
5人プラス女将 対 祐子。
人数的、おまけに男が5人と圧倒的に分が悪いが祐子も必死だ。
素手で戦っているうちは祐子も善戦していた。
しかし女将が「『筋肉硬直液《A》』をかけてあげなさい」
1人がバケツに浴槽のお湯を汲んできて『バシャ』と祐子に。
「あ!」これにはたまらない。
避けようとするが、男が退路を塞ぐように立ちふさがる。
第二段、第三段とバケツの液体を浴びてしまった。
浴衣はすぐにびしょ濡れとなり「うわ、熱い」
あわてて浴衣を脱ぎ捨てたところで、とどめの液体を浴びてしまった。
「熱いよぅ」手で体を覆うようにして、しゃがみこんだところを、すかさず、男たち3人に両手を押さえつけられて、
(祐子)「あ、あ・・・いや助けてぇ」
浴槽に放り込まれてしまった。
(祐子)「うゎあーー、か、体が・・・ぁぁ・・・」
祐子もすぐに大の字になって固まってしまった。
(女将)「この女め!着ている物を脱がせてプレスしろ。逃げた女も早く捕まえるんだ」
祐子は服を脱がされて『人体軟化液《B液》』を十分に浴びせられた。
金属板の上に載せられると、すぐにスイッチが入れられ天井が下がり始める。
あわや祐子も押しつぶされるかと思われたとき、あたり一面が昼間のように明るくなった。
下がり始めた天井がガキッと止まり、『ギギギ』ときしむ音がして、逆に天井板が持ちあがり始めた。
(女将)「いったいどうしたんだ」
見ると天井と金属台の間に、スーパーガールRが入って天井の動きを止めている。
女将が床に敷かれていたはずの真理子を見るが・・・何もなかった。
振り返った瞬間、殴り飛ばされた。
(SR)「悪魔め」
スーパーガールR相手の素手での戦いは、女将たちが圧倒的に不利で、5分もしないうちに全員がノサレてしまった。
この少し前、碧は廊下を走りながら考えていた。
先ほどタオルを取りに部屋に戻ったとき、真理子はガムテープで何か作業をしていた。
(碧)「何やってるの」
(真理子)「あたしがいなくなれば、悪人は絶対このマスクを探しに来るはず。
その時にカバンの中に入れておくのは少し危険だからね。
どこかに隠しておこうと思ってさ」
(碧)「真理子って、結構用心深いんだね」
(真理子)「それはそうよ、正義の味方の基本中の基本だよ。エヘン」とか、言っていた。
何のことはない。テーブルの裏にガムテープで貼りつけておいただけだったが、結局これが最良の結果となったわけだ。
案の定、テーブルの裏を手で探すと「あ、あった」
そして碧は「変身!」と、叫んだのだった。
祐子はすぐに洗浄され、生き返ることができた。
しかし美代子をのぞいた残りの4人は・・・
女将たち及びその組織関連の者たちは全員逮捕された。
美代子たちはお手柄であり、所管の警察署から感謝されたが全くうれしくない。
数日後、お葬式からの帰り道、美代子と真理子は悄然と黙ったまま歩いている。
同僚と友人を亡くしてしまった。
(真理子)「つらいね」
(美代子)「そうだね。つらいね」
(真理子)「旅行なんていかなければよかった」と、ぽつりと言う。
(美代子)「そうかもしれない。でもさ」
もし美代子たちが、女将を捕まえなければ、犠牲者は今後も確実に増えたに違いない。
そういうことであるならば、今回の犠牲は大きかったが、犯人を逮捕できたことは朗報である。
(真理子)「そう考えれば、少しは救われるかも。でもさ・・・」
真理子は美代子の方を向いて、
(真理子)「悪いことってなくならないね。それにあたしたちの責任って重いよね」
美代子はフッと笑って「そうだね」
真理子はフウとため息をついて、
(真理子)「おかあさん、あの日以来、初めて笑ったね」
美代子「そうかな」
2人はそんなことを話ながら、肩を並べて歩いて行った。
レズ旅館の秘密 完
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