妄想別館 弐号棟


体屋さん その5


ドアがバーンと開いてスーパーガールが飛び込んできた。
(S)「動くな!」
スーパーガールが室内を見渡すと・・・
男が1人驚いたように立っている。
床にはヒビだらけのガラスが置いてある。
中に誰かの写真が封入されているのもわかった。
(S)「ん?真理子の写真」
スーパーガールは、ヒビだらけの下の、かろうじてわかる真理子の顔を見ていたが・・・
また一つ『バチ―ン』
パシンときしむような音がして、とうとうガラス全面にヒビが走った。
目の前にいる男はあふれんばかりの笑顔をしている。
(ギヤマン:あと一発で終わりだ)
スーパーガールは、この瞬間に悟った。
理由は何もない。状況も全くわからない。だけど・・・
スーパーガールは引っ張るようにして連れてきた、スーパーガールRの手をつかみ、ガラス面に押し当てた。
直後に「ガッシャーン」ガラスは粉々に砕け散った。
「ギャアァァァ」と、ギヤマンは痛がって転げまわっている。
(S)「あんたは別に死なないでしょうが」
そのとおり。呪術でつくった彼の魂もどきが消滅しただけである。
ようやく顔を上げたスーパーガールRは、
(SR)「あ、おかあさん」
それだけ言うとスーパーガールに抱きついて泣き出した。
美代子はベネチアンマスクをつけて泣いているスーパーガールRを初めて見た。
フウと息を吐き、
(S)「油断大敵ね」
真理子に、ギヤマンに、誰にともなく言った。

この事件は最悪であった。
まずガラス板から救出されたのは10名ほど。
しかし彼女たちを買った男たちに、完全にモノにされてしまっている。
さらに、魂が閉じ込められている間に、体との空白期間を生じてしまっている。
ガラスの中にいた魂は、その間に、体の方が何をやっていたかは知る由もない。
違法就労、アダルト関連、中にはサギや強盗のようなことをやってしまった者までいた。
すべて男たちの意思で行われたわけだが、責任の所在となると複雑だ。
(美代子)「人生が変わってしまった人もいるんだろうな」
さらに魂がすでに消えてしまった女性は体だけが残ってしまっている。
男の魂が入っているが、本人としてはもう死んでいるのと同じだ。
もちろん、体自体は生きているので処分するわけにはいかない。
あとは、体だけが買った男(の意思)として生きていくしかないだろう。
真理子も同じ目にあったが、あまり落ち込みはしなかった。
(真理子)「癪だけどさ、悪人相手にいつまでも悩んでなんかいられないよ」

真理子は気になっていたことを美代子に聞いてみる。
あのガラスの仕組みも、真理子の置かれた状況も、いっさい知らなかったはずなのに、
(真理子)「なんでおかあさんは、あたしの体をあのガラスにつければ、あたしの魂が元に戻るってわかったの?」
ギヤマンはそんなことは話さなかった。真理子さえも知らなかったのに。
美代子は「どうしてでしょうね」フフフと笑っている。
(真理子)「ねえ、どうしてよ。教えてよ」
真理子は不思議でしょうがない。
後、数秒遅ければ、真理子は死んでいただろう。
なぜ、何の躊躇もなく、スーパーガールは素早くて、一番的確な方法をとれたのだろうか。
(美代子)「ガラスの中のあんたの顔を見たとたん、真理子の意思が一瞬で伝わってきたのよ。
まるでテレパシーかなにかのように。
だからなにをどうすればいいか、何の迷いもなく一瞬で行動できたわけさ。
その他は感だね。直感」
(真理子)「あたしは、もう意識を失っていたんだけど」
(美代子)「そうだね」
美代子は『母娘のそしてスーパーガールとスーパーガールRの『阿吽の呼吸』だよ』と、思った。
(美代子:なんか不思議な力によって、意識がなくても伝わったんじゃないかな。きっと)
まあ奇跡と言えば奇跡だね、ところで・・・
(美代子)「魂を吸い取るガラスか。よく考えついたものね」
科学犯罪どころか。呪術や妖術もどきの犯罪も出てくるようになってしまった。
実際、このような新手の方法により、スーパーガールたちは苦戦を強いられるようになるのである。

                                       体屋さん 完

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