妄想別館 弐号棟


体屋さん その4


真理子は学校には行かずに写真館に入っていった。
その地下室にて。
彼女の魂が封じられたガラス台は、わざと床が見えるように調整された。
(真理子:何を見せようっていうんだ)
ニセ真理子は壁に立てかけられたガラス台の中の真理子を見ながら、
「ガラスを今すぐに叩き割って殺してもいいが、それじゃ怒りが収まらん。
なぶり殺しにしてやるからな。楽しみにしていろ」と、言っている。
床には写真の入っていないガラス板が置かれている。
ガラスの横の方に何かの装置が運ばれてきた。
(ギヤマン)「このガラスをよく見ていろよ」
スイッチを入れると装置から鉄球が1個、上方に『ポン』と打ちあげられた。
その鉄球は『バチーン』と音をたてて、ガラス板の右上のところ落ちた。
すぐに、また一個打ち出されて落ちる。
『バチーン』と、今度はガラス板中央の右側に少しヒビがはいる。
打ち上げられた鉄球は、どこに落ちるかはわからない。
ギヤマンは笑いながら、
(ギヤマン)「本間真理子、ガラスが割れちまったらお前はお終いだ」
前述のとおり、封じ込められた魂はガラスが割れたら消滅してしまうのだ。
鉄球が打ち出されて落ちるたびに、ガラスにはどんどんヒビが入っていく。
やがて『バチャーン』と砕け散った。
真理子はこの様子を見ていて、
(真理子:冗談じゃないわ、早く何とかしなければ)
と、焦るのだが・・・動けなくてはどうしようもない。

「変身」と、ギヤマンのとなりにいたニセ真理子がスーパーガールRになった。
スーパーガールRがギヤマンを手伝うようにして、真理子を封入したガラス板を移動させる。
(真理子:なにをするの。ちょっと)
2人は先ほどと同じように真理子のガラス板を置いた。
(ギヤマン)「これでよし。さあて、どこから割れるかな」
(真理子:や、やめて!)
ギヤマンとスーパーガールRは上から真理子を覗き込み、
(SR)「お前の体がバラバラになったら、「変身」と言ってやろうか?あ、ダメか。
僕がスーパーガールになるだけだものな。
お前は生き返ることができないんだな。今回ばかりは。ハハハ」
ガラスの中の真理子は血の気が引いて行く感じがした。
いままでは、生き返ることができると、漫然と思っていた。
実際、ベネチアンマスクの超能力で蘇生したことも何度となくあった。
死が恐ろしいと思ったことは、あまりなかった。
だが、今回は状況が違う。
ガラスが割れたらもう二度と生き返ることはできないだろう。
戻るべき体がないのである。
(真理子:やめて、やめて、お願いやめて)
真理子ははじめて心底から懇願する。
(SR)「スーパーガールRに看取られて死ぬがよい。さあ、それじゃあいくぞ」
スイッチが入れられて1個目が打ち出されて・・・ガラス板の上端に当たった。
『バチッ』と、重い音がしたが、何ともなかった。
(真理子)「いやっ、お願い、やめて」
しかし2個目が『バチン』。右脚の横に落ちて少しヒビが!
(真理子:いやだ、やめてぇ)
3個目『バチン』無事、4個目『バチーン』無事。
しかし5個目は真理子の左太ももの上に落ちた。
『ピシ』と、やや大き目のヒビが入った。
痛い!猛烈な痛みであった。
(真理子:うわあーーー)
もちろんガラスの中の真理子は、なんら表情に変わりはない。
(ギヤマン)「おやおや、早くも少しヒビが入ったな」
(SR)「あとどれくらい持つかな。早く粉々に砕けてしまえ」
(真理子:いやだーやめて、助けてぇぇぇー)

その時だ。『ピッピピピピ』と、真理子のスマホが鳴った。
2人は驚いて振り返る。
スーパーガールRがでると美代子からだった。
(ギヤマン)「チッ!」と、舌打ちをする。
(美代子)「真理子、今どこにいる。写真館に来ているんだけど。大至急来て」
無視するか。いやそれも具合が悪いだろう。かえって怪しまれる。
(ギヤマン)「しかたがない。おい、時間を稼げ」
スーパーガールRはうなずくと階段を上がっていった。

1階展示場へのドアを開けると、いきなり『ヒュン』と、風を切る音がした。
本物の真理子がスーパーガールRであれば、楽に避けられるであろうに。
しかしギヤマンのスーパーガールRはまともに足蹴りを食らい、思い切り吹っ飛んだ。
『ダ、ダーン』と、ころがって柱に激突した。
せっかくの鍛えられたスーパーガールRの身体も、使うものが素人であればこうなる。
スーパーガールはあきれたように驚いている。
こうまでうまく決まるとは思わなかったらしい。
(S)「あら、ストライクね。なんで防御しなかったの、あんた本当に真理子なの」
スーパーガールRは、何が起きたのかわからなかった。
しかし目の前の、腰に手を当てて立っているスーパーガールを見ると、
(SR)「あ、スーパーガール。いきなり何するんだよ、お前は」
しゃがみこんだまま応戦する気配すらない。立てなくなったようだ。
一撃で戦意喪失というところか。
(S)「あんた本当にいったい何者?」
(SR)「僕はガラス細工師の弟だ」
スーパーガールはアッと思った。この男にとって真理子は憎きかたきではないか。
(SR)「真理子の魂は、もう今頃。ハハハ」
(S)「魂って?」何のことかよくわからないが、地下で真理子の危機が迫っていることを感じ取った。
スーパーガールは、スーパーガールRの腹に『ゲホ』と、一発入れると、引きずるようにして地下室に降りて行った。

ガラスはヒビだらけで、下の方は一部欠けてしまった。
しかしまだかろうじてガラス板は形状を保っている。
だが、ガラスの中の真理子の魂は、ヒビによりバラバラに切断されている状態なのだ。
激痛で気を失いかけている。
片目はもう見えなくなっている。
耳も聞こえない。
(真理子)「も、ぅ、だめ・・・だ・・ぁ」
あと数個も当たれば、彼女の体は粉々になってしまうだろう。
そしてまた一つ『バチーン』と当たった。

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