妄想別館 弐号棟


復讐劇場 その1


(美代子)「真理子。遊びに来たよん」
(真理子)「いらっしゃい」
ここは真理子が通っている〇〇大学である。
そして本日は学園祭である。

遊びに来た・・・と、美代子は言ったが、実際は少し違う。
2年前、真理子は高校生であったにもかかわらず、ある犯罪者を捕まえた。
通称はピエロ。
自称幻術使いということだが、気持ち悪いぐらいのスケベ、いやらしい好きな男である。
いや、男がいやらしいのは、世の常かもしれないが、とにもかくにも下ネタのオンパレード。
彼のキャッチフレーズは『今日もあなたを恥ずかしく!』
うら若き女性やいたいけな女の子にまで、催眠術で遊んだり、いかがわしい薬を吸わせたりと、悪質ないたずらのし放題。
あとはうまく逃げて知らん顔。しかも証拠はまったく残さない。
泣き寝入りをした女性は数知れず。
(美代子)「こんな男は最低ね」
真理子は美代子がめずらしく、感情あらわに激怒していたのを覚えている。
ただし薬物や心理学の知識があることや、催眠術の能力が高いことから、ただの遊びバカではない。
相当高度な知能犯である。

例のごとく、と言ったら言い過ぎか、
真理子は自分から囮(おとり)のようになり、うまく現行犯逮捕したのだ。
実際のところはかなり強引で乱暴だった。
彼が誘いに乗って話しかけてきたところを、投げ飛ばし首をしめて自供させてしまった。
母親には怒られたが、どうしても逮捕したかった警察としては、文句は特別ない。
結果オーライである。
取り調べで「こんな捜査方法があるか!弁護士を呼べ」と、叫んでいたが、
うまく裁判にもっていくことができ服役させた。
と、ここまではよかったが、すぐに看守に催眠術をかけて脱獄。
行方をくらましていた。

先日、そのピエロから真理子宛に手紙がきた。
(真理子)「ほら、これ」
手紙には、こんなことが書いてあった。
『前略
2024年〇月✕日
本間真理子さんの通学する〇〇大学で学園祭を開催するそうですが、小生も是非お伺いいたします。
その時に、母君の美代子様と真理子様に、積年の思いを晴らさせていただきたいと思います。
そのようなわけで、是非是非、美代子様にもご参加をお願いいたしたく、
また相応のお覚悟でお望み下さるようお願い申し上げます。
それでは当日を楽しみにしております。
                                              草々
本間真理子 様
                                          ピエロより

美代子は「フウ」と息をついた。
(真理子)「何をするかわかったもんじゃないよ、こいつは」
(美代子)「そうだね」
しかしまだ、何かしたわけでもない。
文面からは脅迫ともとれるが、何かするかどうかは曖昧でよくわからない。
つまり、これだけで警察への警護の要請は非常にしづらいのだ。
(真理子)「だけど絶対何かするに決まってるよ」
(美代子)「もちろんそうだろうね」
おまけに学校のまわりに警官などを配備したら、学園祭自体がぶち壊しになってしまうだろう。
彼はそのあたりを考慮のうえで、美代子の誘いもあわせて、こんな手紙を送ってきたに違いない。
美代子は考えていたが、
(美代子)「よし、それじゃ誘いにのってみるか」
(真理子)「大丈夫なの。なにか罠を考えてるよ。きっと」
(美代子)「そうだね。あいつ策士だし、催眠術の能力は恐ろしいくらいだからな」
彼は術師としては最高レベルの技術をもっている、プロ中のプロだ。
まともに催眠術をかけられてしまったら、スーパーガールになっていても危ない。
おまけにずる賢いので、幾重にも罠を仕掛けてくるのは必須だろう。
(美代子)「でも、このままほってはおけないよ。ついでに学園祭の警備にも当たってあげるよ。ちょうど非番だしね」
ということになった。

美代子は抜群のスタイルの上に、センスの良い服を着てきた。
通りすぎる人が振り返りウットリしている。
おしゃべりをしながら歩いていると、友人の碧(あおい)が追いかけて来た。
(碧)「おーぃ真理子ぉ、あ、こんにちは」
(美代子)「あら、こんにちは。お久しぶり」
レズ旅館の時以来だ。あの時はひどい目にあった。
(美代子)「どう、調子は。元気になった」
(碧)「ええ、おかげさまで」
(真理子)「何?」
(碧)「なんか男の人が、これを渡してくれって」
(真理子)「何を?」
紙きれだったが、それを読んだ美代子と真理子はキッとなった
『ようこそいらっしゃいましたね。今日はあなたたちの破滅の日です。
存分に恥をかいて、世間から消え去ってくださいね。
それではまた後でお会いしましょう』
すでに監視されている!
(真理子)「ねぇ碧。これを渡した人、どんな人だった」
(碧)「どんな人って、えっと、あれ変だな」
碧はまったく思い出せないと言っている。
(真理子)「どういうことよ」
(碧)「なんか左手をずっとフラフラさせていたのは覚えているんだけどな」
顔も服もわからない。背は高かったようだが、特徴的なことは何一つ・・・
碧が去っていくのを見ながら、
(美代子)「催眠術をかけられていたんでしょ。きっと」
(真理子)「おそらくね」
(美代子)「気を引き締めてかからないと、やられるよ」
そもそも、彼は彼女たちに何をしようというのか。
怪盗ピエロは最低の下衆ではあるが、人殺しや傷害事はあまり好まない。
(真理子)「何をやらかすつもりなんだろう」
(美代子)「出方がわからないね。でもすでにこの学校内のどこかにいるのは間違いないようね」

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