復讐劇場 その6
世の中には不思議なことがあるもので・・・
学園祭が終わった次の日の昼休み。
真理子がしょんぼりと校舎の陰で隠れるように座っていると、碧がやってきた。
(碧)「真理子、お昼だよ。どうしたの」
真理子はため息をつきながら、
(真理子)「スーパーガールのこともみんなにバレちゃったし、
裸の写真も撮られちゃったし、
これからどうしようかと思って・・・」
悩んでいると言う。
周りからの視線も、一昨日とはまるで違う。
真理子を避けるような者。ヒソヒソ話もあちこちで起きる。
逆にいやらしい話題をわざと振ってくる男子もいる。
しかし碧は笑いながら「なんだそんなことか」
(真理子)「何だとは何よ!あたしたちにとっては大問題だよ」
真っ赤になって怒る。
碧は「ごめんごめん。それじゃ、あたしが明日までに、なんとかしてあげるよ。
この間、助けてもらったからね」
真理子はじっと碧の顔を見て、
(真理子)「なんとかするって・・・いったいどうやって」
(碧)「まあ、見てなって」
真理子はからかわれていると思った。
「どうせそんなにうまくいくはずがないよ」と、思っていたのだが・・・
翌日。
真理子が教室の机に座っていると、碧が入ってきて、
(碧)「ちょっと、みんな聞いて。本間真理子の裸を見たい人っている?」
真理子は仰天した。
(真理子)「ちょっと、なんてこと言うんだ」
愁傷の傷口に塩を塗るがごときセリフ!
スーパーガールの秘密や裸の写真のことで悩んでいるというのに。
ところが、まわりの者たちは「え、なになに」といって、かなり大勢が寄ってくる。
「本間さんの裸?見たい」「本当に見せてくれるの」などと言っている。
(真理子)「何言ってんのよ。文化祭でさんざん見たでしょ!」
ところがみんなは「なんのこと?」「文化祭で裸になったの?」
(真理子)「は?何とぼけてんのよ」
碧が真理子の前に出てきて、
(碧)「今のはウッソー」
「ふざけんなよ」「なんだつまらん」と、みんな散っていく。
(真理子:なんだこのリアクションは。あたしの裸、十分に見たはずなのに・・・)
(真理子)「碧、さっきのどういうこと」
(碧)「わかったでしょ。もう、だれもあんたの裸のこと記憶にないんだよ。
写真とかも全部消えてるから安心しなよ」
(真理子)「き、消えてるって、どういうことよ。ちゃんと説明してよ」
碧は「そんなのどうでもいいじゃない」
真理子は食い下がる。
(真理子)「みんなで口裏を合わせてウソをついてるんでしょ」
(碧)「いや、そんな面倒なことしないよ。
いいじゃない。これで心配事はなくなったんでしょ。めでたしめでたし」
碧は向こうに行ってしまった。
家に帰ってきて、美代子に話をすると。
(美代子)「何のこと?」
(真理子)「えっ!おかあさんも覚えていないの?」
美代子も昨日のあの事件の記憶だけがないらしい。正確にはあの一部の出来事だけが。
真理子は呆然を通り越して恐怖を覚えた。
(真理子:碧は一体何をやったんだ)
ピエロと対決したことを説明すると、
「あ、そうだったね」と、美代子はやっと思い出したようだ。
なんでこんな重大な事を忘れていたのだろう?
念のため・・・次の日の朝に、さりげなく美代子に学園祭のことを聞いてみると、
(美代子)「ピエロの奴は何も騒ぎを起こさないでくれてよかったね」
例の騒ぎの記憶は別のことに置き変えられて、やっぱり完全に消えているらしい。
よくわからないが、スーパーガールの秘密と裸の件は解決した。
しかし別の問題がまだある。
真理子は再び碧を呼び出し、「今日こそはきちんと説明してもらうわ」
しかし碧は「そういえば、あんたはなんで記憶が消えないんだろう」と、ボソッと言った。
(真理子)「昨日もそんなこと言ってたよね。いったいどういうことなのよ?!」
碧は眠そうにあくびをしながら、
(碧)「あんたが困ってたからさ。都合の悪いとこを全部なかったことにしただけよ」
真理子は「ちょっとあんた、何を言ってるのだ?」
碧は「ああ、もう面倒くさいなあ。あたしにも知られたくない秘密があるんだよ」
真理子に向かって指をさす。
(真理子)「な、なによぉ」
(碧)「えい」、と言うと、
(真理子)「あ、あれ?あたしは何の話をしてたんだっけ?」
(碧)「お昼に何食べるかでしょ」
(真理子)「え、そ、そうだっけ」
(碧)「そうだよ。じゃあ今日は外に食べに行こうか」
湯村 碧(あおい)、
超能力者である。
実際には真理子と関わっているうちに変な能力が身についてきたようである。
つい最近まではスプーン曲げ程度のチョロイ能力だったが、4人も死んだのを目の当たりにしてから、一気に覚醒したようだ。
ただし彼女のポリシーで、普段は絶対にこの能力を使いたくないと思っている。
人間でなくなるような気がするから。
やろうと思えば悪いことなどいくらでもできてしまうし。
また、大きな超能力を使えば使うほど疲れて後が大変だ。
今回は、文化祭の出来事を架空の出来事に置き換えて、うやむやにしたのであった。
写真等の撮影品もうまく本人たちを操って消させ、
ネット上に残った物も丁寧にしつこく追いかけていき、もう何も残っていない。
考えようによってはピエロを上回る、究極の催眠術と言えなくもない。
さすがに大勢の記憶を消すとなると丸1日がかりの大作業であったのだが、うまくいったみたいである。
(碧:あーあ、2,3日疲れがとれないかも)
彼女は近い未来に、活躍することになるのである。
復讐劇場 完
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