妄想別館 弐号棟


遠い未来のエピソード その1


ずっと時が進んで、およそ2000年後の日本。
このあたりは、昔、東京などと言われていた地域である。
文明が衰退して、あちこちに原始の自然ができている。
街もわずかに残ってはいるが、村あるいは集落と呼んだ方がいいほどの状態になってしまっている。

木々の生い茂る山々の谷間にきれいな渓流が流れている。
そこに、水を飲みに降りてきた少年と少女がいた。
男の子の名前がルビ、女の子はリコという。
2人は両親を亡くし、同じような境遇である。
ずっと以前に知り合い2人で旅を続けている。
(ルビ)「この川は魚がたくさんいそうだな」
(リコ)「ふーん、どれどれ」
ルビは「ちょっと見てくる」と、下帯一つになって川に飛び込んだ。
(リコ)「あ、ちょっと待ってよぉ。あたしもいくから」
ルビは流れの早い川の中を巧みに泳ぎながら、スイスイ先へと。
水中に潜ってみると「うー、いるいる」
慣れたものである。バシャと首を出して、
(ルビ)「リコ。すごくたくさんいるぞ。今夜は、あれどこ行った・・・」
(リコ)「ここだよぉー」
(ルビ)「あ!」
リコは全裸になって、大きな岩の上で軽く足を開いて立っていた。
膝(ひざ)に手を当てて、ルビを見下ろすようにして、
「どう、魚いた?」と、笑っている。
(ルビ)「おい、お前、裸はやめろよ」
おもわず顔を背けてしまった。
(リコ)「何言ってんのよ。あたしも泳ぐんだよ。だから ぬ い だの」
リコは姿勢を正し、土手の部分を前に突き出すようにして髪の毛を結わいている。
(リコ)「誰もいないんだし。大丈夫よ」
そういう問題ではないのだがな、と、ルビは思った。
ルビはリコをそろりと見上げる。
乳房も少し膨らんでるし、足のつけ根のところには、線が一本はいっているし。
もう少し恥じらいがあってもいいのでは、とも思うが、
岩の上で、手を振りながらはしゃいでる彼女を愛しくもある。
ルビはリコのことが大好きであり、リコもまたルビのことが大好きである。

(ルビ)「フゥ、少し休もうかな」
川から上がりかけたときに、向こうの方で何やらガラガラと音がした。
輿(こし)が停まっており、老婆といっしょに数人の男たちが向こうで何かやっている。
リコは「あっ」と言って、慌てて服を拾って着始めた。
ルビが笑いながら、
(ルビ)「何だよ、お前。いろいろと言ってた割には、さっきと態度が全然違うじゃないか」
(リコ)「だってぇ」と、赤くなっている。
ルビも服を拾って着だした。

(リコ)「あの人たちなんだろうね」
(ルビ)「さあ、なんだろね」
河原に降りてきて、水を汲んだり飲んだりしている。
どうやらこの一行も水を求めてやってきたようだ。
一行の中にいた老婆がルビたちに気がついた。
(老師)「おや、あの少年たちは・・・」
近寄ってくると、
(老師)「おまえさんたちはこの近くの村の者かね」
(リコ)「違うよ。あたしたちは旅をしているの」
(老師)「旅か。何所まで行くんだ」
(リコ)「わからないわ。行き先なんてない。あての向くまま気の向くままよ」
(老婆)「ふーん。ちょっとお待ち」
老婆はリコの顔を覗き込む。そして今度はルビの顔を覗き込む。
(ルビ)「なんだよ、おばあさん」
(老師)「いや、実はわしらは占いを生業としていてな。お前さんたちにちょっと興味があったんでな」
(ルビ)「占い師なの?」
(リコ)「あたしたちに、なんかの運命が出ていたとか」
(老師)「そうだな、お前さんたちは、仲良く暮らせそうだな」
うれしいことを言う。
(老師)「それに昔、お互い何らかの縁(えにし)があったようだ」
(リコ)「縁?昔っていったてさぁ、あたし達16歳だよ」
(老師)「もっと昔、むかしむかしの話さ」
(ルビ)「昔むかしって、何年くらい前のこと?」
(老師)「遥か昔の昔、何世代も前の前世の話さ」
(リコ)「前世て、生まれる前じゃないの」
ルビとリコは笑い出した。
(リコ)「そんなのって、本当かどうか、わかるわけないじゃないですか」
老婆は「フフ」と、笑いながら、
(老師)「お前たちはまだ若いし、ワシらの言っていることは信じても信じなくてもいいがね。
ま、どちらでもいいのかな」
「それよりも」と、老婆は言う。
(老師)「お前たちは、ここから西の方角に行きなさい。きっと良い人生を歩めるだろう。
それ以外だと、波乱万丈の人生になりそうだな」
(ルビ)「へー、そうなんだ。リコどうする?」
(リコ)「あたしは穏やかな人生の方がいいなぁ。あ、でもルビと一緒が条件よ」
少し赤くなってる。
(老師)「その方が良いって。お前たちの前世は非常に危なっかしいことをやっておった様子だからな。現世では安穏に暮らすがよいぞ」

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