妄想別館 弐号棟


呪術人形の罠 その4


(老婆)「性器が残っていると、万が一着物を脱がした時に変に思われるからな。
完全な人形にしておかないと」
ヤスリを使って、美代子の土手と乳房をガリガリと削りだした。
大きかった彼女の胸は、乳首はもちろんなくなり、大きさも半分くらいになってしまった。
モッコリしていた土手もマネキンの股間のようにペッタリとなっている。
棚から別の壺を取り出し、刷毛で削ったところを丁寧に塗っていく。
(老婆)「これで良し、ほら見てごらん」
削ったところはツルツルになっている。
とても削ったようには見えない。
非常に精巧にできているが、これでもう完全な人形だ。
誰も『人間を小さくした』などとは思わないだろう。
「うまいもんだな。でも女としてはつまらなくなってしまったな」と、言った。
つづけて、顔に白っぽい染料、唇には紅を塗り始めた。
顔にどんどん化粧をしていくと、美しい顔に、さらに艶(あで)やかさが加わった。
(Mr.N)「ずいぶん色っぽくなったなぁ」
まつげを濃く引いて、若干流し目気味に。
髪の毛を結って、かんざしを挿して・・・
(老婆)「あとは小物で装飾をしてさ」
人形用の派手で美しい衣裳を着せた。
唐傘を持たせて、ガラスのケースに入れて、完全な衣装人形の出来上がり。
(Mr.N)「へえ、すごいな。本当に見事だ。しかし顔だけは・・・リアルすぎないか」
一般の陶器人形の顔に比べて細かく実写的すぎる、と思ったが、
(Mr.N)「まあ、これはこれ。しかたがないか」
化粧のせいで美代子の面影はほとんど残っていない。
身近な者がよっぽど注視して見ないと、おそらく気がつかないだろう。
彼女の痕跡はこの世からなくなってしまったのだ。

ここまでをあらためて説明すれば、
華やかな着物を着た、すごく色っぽい芸者あるいは舞子さんが、
唐傘を持って、
首を少しかしげながら振り返っている、
衣装人形。

最後に老婆は、霧吹きで何かの薬を吹きかけた。
(老婆)「力作だ。高く売れるぞ、これは」
(Mr.N)「売ってしまうのか?」
(老婆)「もうこれは完全な人形なんだ。手放した方がいいだろ」
(Mr.N)「よしわかった。売買については、俺に少し考えがある」
(老婆)「そうかい、それじゃぁそれはお前さんにまかせるとして、あと最後に残っている問題は・・・」
(Mr.N)「このマスクの始末だけだな」
ミスターNは箱を見て考えていたが、
(Mr.N)「すぐに手配するとしよう。どこかの海にでも沈めてしまうさ」

そして・・・
ミスターNは悪人仲間の仲介業者を通じて、人形を某デパートに卸した(売りつけた)わけである。
さらに・・・
前回の失敗に凝りて、
赤いベネチアンマスクはミスターN自らがコンクリ詰めにしたのち、
太平洋の、○○海溝付近までわざわざ運び沈めてしまった。
(Mr.N)「これでよし」
念には念を入れて。

(店員)「ありがとうございました」
デパートに来ていた老夫婦と女の子は、芸者人形を買っていった。
美代子(人形)はなすすべもない。
スーパーガールこと本間美代子は、その日以来行方不明となってしまった。
真理子たちは一応、美代子が行くと言っていた廃工場を調べてはみたが・・・
ここは罠をはるためだけに利用された建物である。
何の手掛かりも得られなかった。

美代子失踪からわずか2週間以内の出来事であった。

                                     呪術人形の罠 完

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