妄想別館 弐号棟


永久の眠り その1


美代子が行方不明になってから3年が経った。

真理子も大学4年生。
そろそろ就職先を考えなければならない時期にきている。
(碧)「真理子はやっぱり警官になるの」
(真理子)「うん、母の意志をついで警察官になるつもり」
真理子は国家公務員の総合職(いわゆるキャリア組)に合格している。
これから官庁訪問等で最終的に希望先を決めることになるが。
ところで、碧も真理子ほどの得点ではないが、同じく試験には受かった。
もちろん超能力によるズルはしなかった。
しかし彼女は「あたしは警官なんかいやだよ。怖いし弱いし」
どこか別の官庁に就職するつもりだ。

行方不明・・・まだ死んだと決まったわけではない。
またスーパーガールの超能力さえあれば、生き返ることもできなくはない。
・・・という、淡い希望を持って・・・
しかし手掛かりは何もない。
何がどうなったのか、真理子も警察もさっぱりわからない。
理由はいくつかある。
廃工場は美代子を誘い出すだけの場所であったこと。
外れたマスクは、すぐに結界の張った箱に入れられてしまったこと。
目撃者がまったくいなかったこと、など
なによりも、犯人のミスターNがおとなしく鳴りを潜めてしまったためであった。
水面下に潜ってしまって、まったく表の活動をしていない。
どこでなにをしているかわからないのだ。
「とにかく時宜(じぎ)を待て」と、
これは、あの魔老女の助言である。
ミスターNはよくも忍耐強く我慢をしてきたものである。

碧は心配そうに、たびたび真理子に声をかけるが、
真理子は気丈に「大丈夫だよ」と言っている。
しかし1人になると「どこに行ってしまったんだろ」
「フ」と、ため息をついている。
「いやいや・・・」
振り払うように、
「悩むことは禁物だよ。
今のあたしは、とにかく悪人どもをやっつけて、少しでも情報を得ることだ。
それしかない」
あれから真理子は、美代子の手掛かりを探すべく、すさまじいほど精力的に活躍してきた。
しかしそれでも、今のところ手掛かりは皆無である。

一方、ミスターNのアジトでは、毎回同じような会話が繰り返されていた。
(Mr.N)「まだスーパーガールRは残ってるんだぞ」
ミスターNは、この3年間を無為に過ごしてしまった。
じれったく悔しい思いはもちろんあるが、それよりもスーパーガールRの方がもっと恐ろしい。
(Mr.N)「早く何とかしてくれよ。スーパーガールを片付けた、あの人形と同じ方法でいいじゃないか」
(老婆)「あの人形は簡単には手に入らないんだよ。20年から30年に一体しか作ることができないんだって。
まあ、まかせな、なにか別の良い方法を考えるから」。
ミスターNにとって、少し安心なのは、スーパーガールが、あれ以来現れないことである。
他の悪人たちからの情報でも、スーパーガールRは出てくるようだが、スーパーガールはまったく現れないとのこと。
(Mr.N) 「スーパーガールが現われないってことは、彼女のベネチアンマスクは、やっぱりまだ海の底にあるという事だろうな」
ガッチリセメント詰めにして海底深くに沈めたのだ。
通常の方法では引き上げなどできまい。
それよりもだ、やはり真理子の方が問題だろう。
必死になって、いやなりふり構わずに捕まえに来るだろう、それを考えると・・・
だが魔老女は涼しい顔だ。
(老婆)「そこんところが、逆にねらい目なんだよ」
老女は何か作戦を思案中のようだ。
そうこうしているうちに、ミスターNも最近何か思うことができたらしい。
ある日、
(Mr.N)「あのな、どうせだったらスーパーガールRの体が手に入らないかな」
(老婆)「ん?なんだって?何を言うことやら」

魔老女はミスターNの依頼事を聞いていて妙案を思いついた。
(老婆)「あの女もマスクの力で簡単に復活してしまうからな」
どうしても、真理子とマスクを別々にする方法を考えなくてはいけない。
老婆は、と、ある刑務所まで出かけていき、服役している男と面会をしてきた。
ミスターギヤマン。魂を吸い取るガラスを扱える妖術使いである。
(ギヤマン)「ほう真理子を。それはいい、ぜひ協力してやる。何でも聞いてくれ」
彼女はガラス板の性質、作り方、などを聞いて、時折質問しながらメモをとっている。
(老婆)「ふーん、なるほどね」
他の者なら何を言っているのか、到底意味不明、理解不可能であろうが、
蛇(じゃ)の道は蛇とはよく言ったものだ。
(老婆)「これなら、あたしにもなんとかやれそうだ」
(ギヤマン)「へへ、真理子の訃報(ふほう)を楽しみにしてるぜ」

『ようやく機が熟した』と、言ってもいいだろう。
面会から約ひと月くらい後、アジトの一つである某ビルに、彼らが巧妙に仕掛けた『罠』が完成した。
地下の部屋には、例のガラスの板がズラリと何十枚も台座に立てかけられている。
この様子を見ながら、老婆は自信満々だ。
「さあいよいよだ、スーパーガールR。罠にはめてやるからな」

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