永久の眠り その4
(真理子:あたしは・・・)
真理子の魂はガラスの中に閉じ込められてしまった。
見える範囲も限られているし、
自分の状況はまったくわからないが、おそらく・・・
一糸まとわぬ直立の姿勢でたたずんでいるのだろう。
写真のようになって、無表情のような顔で・・・
目の前には自分、スーパーガールRのコスチュームを身にまとった体が床にぐったりと伸びている。
(真理子:また、やられてしまったな)
しかし今回は不可抗力だったような気がする。
(真理子:これでよかったのかも)
部下の男たちが、ガラス台を片付けて、部屋を広くしているのが見える。
ときどきニヤニヤしながら真理子を覗き込んでいく。
これから何が起ころうとしているのかは想像がつくが・・・
やがて、ミスターNと魔老女の会話が聞こえてきた。
(老婆)「傀儡(くぐつ)の術は使わないのかい。ただで体が手に入るのに」
体が2体あれば便利だろう。
しかし、彼の体力では、とてもこの体を使いこなせまい。
ミスターギヤマンの二の舞になりかねない。
ミスターNは「それに」と言う、
(Mr.N)「体があればどうしても外歩きもしたくなるだろうに」
そこから足がつく可能性は十分考えられる。
ミスターNはいろいろと考えている。
今までよりもだいぶ慎重である。
数々の失敗を経て、実に用心深くなったようだ。
(Mr.N)「それよりもだな、スーパーガールRは戦利品として・・・」
倒れているスーパーガールRを見ながら、
(Mr.N)「飾っておきたいんだがな」
(老婆)「飾るって?」
(Mr.N)「そう、その方が他の悪人仲間たちも喜ぶだろう」
悪人たちから何かリクエストのようなものがあったらしい。
老婆はあきれるが、
(老婆)「まあ、好きにしな」
ミスターNは部下に指図して、スーパーガールRの体をどこかへ運び出した。
真理子は見ているだけでどうすることもできない。
(真理子:あたしの体を、いったいどうするのだろう)
2時間も経ったろうか。
台車で何かが運ばれてきた。結構大きいものだ。
具体的に表現すれば、高さ2m、横2m、厚さ1mの透明なプラスチックのような直方体。
それはミスターNが開発した特殊レジンで作られたものである。
そしてその中に!
(真理子:あ、あたしが・・・)
スーパーガールRが封入されて立っていた。
いままで何度となく繰り返した表現をすれば、
銀色のブラとボトムの水着型コスチューム、
細い腕に手袋、長い脚にロングブーツ、
ボリュームのある胸元、セクシーな腰部のくびれ、露出している白い肌、
そして青いベネチアンマスクと。
そのスーパーガールRが、腰に手を当て足を軽く開いた立ち姿でレジンの中に立っている。
いやレジンの中に封入されてしまったのだ。
彼が言っていた戦利品とはこれである。
ミスターNはガラスの中の真理子に向かって、
(Mr.N)「どうだ真理子。すばらしいだろう」
(真理子:・・・)
(Mr.N)「宿敵スーパーガールRを、悪人会議の会場に飾っておきたいと思ってね」
真理子はすべて聞こえているが怒る気がしない。
(真理子:もう好きにするがいいわ)
レジンの中に颯爽と立っているスーパーガールR。
青いベネチアンマスクの下から目がのぞいている。
それはうっとりするような、人をひきつけるような輝くひとみであった。
あらためて正面から見ていると、
真理子は、自分のことながら、
(結構きれいだったんだな、あたし)
と、思った。
それからスーパーガールにも似ていることに初めて気がついた。
(真理子:それはそうだよね)
(Mr.N)「処刑するまえに、美代子のことについて少し話してやろう。
冥途の土産に聞いておくんだな」
真理子はハッとした。
呪術で人形にしたこと。
売り飛ばされて所在は不明な事。
ベネチアンマスクは海に沈めたことを話した。
(Mr.N)「俺たちでも、今どこにその人形があるかは、わからんのだよ。ウソではない。本当の話だ」
老婆を見ながら「そういうわけさ」と言った。
ガラスの中の真理子は、
(真理子:そうだったの・・・)
もしかしたら美代子は生き返る可能性があるかもしれない。
(真理子:いや確率的には難しいかな)
そんなことを思っているが、
(真理子:なんか疲れちゃったな)
もうすでにあきらめの境地だ。
そもそも、もう動くこともできない。
体の方も目の前の通りだ。
ミスターNは、マシンガンのようなものを持った男たちを並ばせた。
(Mr.N)「せめて一思いにあの世に送ってやる」
(真理子:ああ、これであたしも最後か。おかあさん、ごめん。どうも期待には沿えなかったみたい)
もう一つ心残りがある。
自分のことを最後まで心配してくれていた碧には、
(真理子:あの時すぐに謝っておくべきだった)
だがもうすべて遅い。
(真理子:それにしても、悪ってほろびないものね)
(Mr.N)「構えろ」
真理子は目をつぶりたいが、それさえもできない。
(Mr.N)「撃て!」
パパパパという音と同時に、ガシャーンという音がした。
その瞬間・・・
ガラスとともに真理子の体も砕け散ってしまった。
部屋中にガラスが散らばる。
砕けたガラスから、封じ込められた真理子の写真が、徐々に薄くなっていく。
やがて完全に消えてしまった。
あたりにはただのガラスが砕けているだけになった。
こうして真理子は・・・この世を去ったのだった。
レジン詰めのスーパーガールRは、この一部始終を、まるで他人事のように見つめていた。
美しい顔で、涼し気なまなざしで。
永久の眠り 完
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