妄想別館 弐号棟


集まりて候 その3


ここは女性の失踪事件が頻発している魔の地区である。
最近では『失踪通り』などと呼ばれて、女性も夜はここを通るのを避けるようになっている。
警察も常時パトロールをしているが、それでも週に数人は行方不明者が出るらしい。

誰もが嫌がるこの時間に、1人の女性が歩いてきた。
時々立ち止まっては、あたりを見ている。
しばらく進んで行くとトラックが停まっていた。
3人の男が何か話をしている。
足元には女性が2人、マネキンのような格好で倒れている。
女性はニヤリと笑うと近づいて行った。
「ん、なんだ。あの女」
気がついた男たちの方が逆にこの女性を警戒した。
普通なら逃げだすであろうに、こともあろうか自分から男たちに近づいてくるとは。
さらにギョッとしたことには、
「あんたたち、ミスターNの居所知ってるんでしょ。教えてよ」
「警察か!」
男たちが彼女を捕まえようとする間もなく、次々と当身を食らわされて倒れてしまった。
一瞬の早業であった。
「なんだやっぱり雑魚か。弱い弱い。これじゃ知ってるわけないか、あれ?」
いきなりうしろから殺気が膨らんでくるのを感じた。
パッと飛びのくようにして振り向くと、後ろに女性が立っている。
「あ!」男どもを倒した女性はさらに構え直す。
(この女できる。なにかよくわからないが、かなり手ごわい)と思った。
構えた姿勢のまま間合いを取り、
「あなたもこいつらの仲間?」と、聞くが、しかし、
「いえ、あたしは警官です」
碧であった。
「なんだそうか」
この女性はファイテイングポーズを解く。
碧は倒れている男たちを見て、
(碧)「これ、あなたがやったんですか」
疑わしそうにジロジロと見る。
女性は疑いを解くべく先に、あ、わたしは〇〇大学で働いてます、青柳と申します。名刺を見せる。
(碧)「薬理学の・・・助教授。青柳美穂さん・・・」
目を美穂に戻し、
(碧)「あらためて聞きますけど、これ・・・」
(美穂)「ええ、あたし多少武術の心得がありまして。ハハ・・・」
すぐにパトカーがきて男たちは連れていかれた。
倒れていた女たちも無事だったようだ。

あとには美穂と碧が残っている。
(碧)「危ないからあまり夜間に1人では通らないようにしてくださいね。
それから、ちょっとお話も聞きたいんだけどよろしいですか」
(美穂)「はい、よろこんで」
その時、美穂のスマホに連絡がはいる。
(美穂)「ちょっといいですか」
(碧)「どうぞ」
(美穂)「はい。美穂です。え!ミスターNの居場所がわかった!どこ、どこよどこ!」
碧は美穂の『ミスターN』という言葉に驚いた。しかも居場所と言っている。
警察が散々苦労しているのに、なんでこの女性はそんなことを知っているのだろう。
いったいこの人は何者なんだろう。
聞きたいことが山ほどあるが、何よりもまずはミスターNの居場所だ。
ところが、
(美穂)「わかった。すぐ行く。おまわりさん、悪いけど急用ができたの。また今度ね」
(碧)「あ、ちょっと何言ってんのよ。事情聴取は後でもいいや。でもそのミスターNの居場所って・・・」
美穂は答えず、「あ、あのビルすごく変!」と指をさす。
「えっ」と碧が振り向き、そのビルを見るが何も変わったことはない。
「あのビルがなんなのよ。何のことよ」と、美穂の方を振り返るが、
「あーーーいない。どこ行った!?」
目の前に、今の今までいた美穂はいなくなっていた。

『報仇雪恨』とは、簡単に言えば『かたき討ちをして無念を晴らす』と、いうこと。
次編では、いよいよ碧たちのかたき討ちの話につながるのであるが・・・
                              
                                報仇雪恨の巻に続く

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