妄想別館 弐号棟


報仇雪恨の巻 その1


深夜のビル街。
その一区画に、ごくごく普通のビルが建っている。
碧(あおい)は消えた美穂の気配を必死にたどって、ここまで追いかけてきた。
(フェェ、疲れた・・・)
なんとかたどり着いたものの、超能力で体力を使い切ってしまってフラフラだ。
(ここはなんとしても頑張らなくちゃ!)
気力をふりしぼりビルの前に立った。
たぶんここに彼女は来ている。
そしてミスターNもいる。

正面の入り口はもちろん閉まっている。
それでは通用口から。
(ええっと、どこだろう)
裏に回ると、荷物の搬出入口があり、
まさに男たちがマネキンをトラックに積み終えるところではないか。
「怪しいやつ。ちょっと待ちなさい。警察よ」
しかし男は振り向きざまいきなり拳銃を発砲してきた。
碧は注意力も散漫になっていて、男たちの前に飛び出していた。
(碧)「あ、しまった!」
至近距離で、おまけに相手に対する用意が全然なかった。
もろに真正面から撃たれる格好だ。
弾が自分の胸に飛んでくるところまで見えたが、
「ダメだ避けきれない」と、思った瞬間、
目の前に誰かが立ちふさがった。
パキーン!
弾をはね飛ばして、振り返った彼女は「大丈夫?」と言った。
(碧)「あ、スーパーガール!それじゃ真理子・・・じゃない・・・」
(Y)「え?」
碧はもう一度「真理子じゃないよね」と言った。
このスーパーガールのベネチアンマスは黄色だった。
言わずもがな、美代子は赤、真理子は青だ。
スーパーガールは碧を見て驚いた顔をしたが、すぐに納得したように笑顔になる。
(Y)「ここは任せて」
スーパーガールは、走りだそうとしている車を追おうとするが、
(碧)「ちょっと待って下さい。あなたはいったい」
碧は彼女の足にしがみついている。
(Y)「うわ、まいったな」
そこにもう1人、緑色のベンチアンマスクがあらわれた。
(G)「何やってるのよ。車を追わなきゃ」
(Y)「そうなんだけれど、このお姉さんが」、足元を指さす。
イエローの足にしがみつき、地面をはいずっている碧は必死になって、
(碧)「あたしは警官ですよ。いっしょに連れてって。真理子のかたきを討ちたいの」
後から来たスーパーガールも何となく納得したようだ。
スーパーガールGの話では、所管の警察も同時に動いたらしい。
現場に向かってるそうだ。
(Y)「と、いうことらしいね。だからあなたは、もう休んでて。疲れているようだし」
(G)「そうよ。生身のあなたじゃ、なにかあったら死んじゃうでしょ」
(碧)「じゅ、殉職は望むところよ!」
タンカを切ると、2人はあきれた。
(G)「しかたがない。あたしが先に追いかけてるから、後からきて」
スーパーガールGは車を追いかけていく。

(Y)「とにかく立ちなさいよ」
ようやく碧は立ち上がる。
(Y)「あたしはスーパーガールイエロー。追っていったのはグリーン。マスクの色で呼んでるの」
(碧)「あなたたちは真理子たちとは違うの?」
(Y)「残念だけど、美代子さんも、真理子さんも、もうこの世にはいないの」
頭を殴られたような気がした。
真理子はやっぱり死んだ。
(碧)「だって不死身なんでしょ。スーパーガールは生き返るって・・・」
碧は泣きそうになる。
イエローは首を振りながら、
(Y)「ベネチアンマスクは一定期間変身の状態がないと、効力を失ってしまうのよ」
真理子が失踪してからもう5年近くたっている。
覚悟はしていたことだけど、あらためて告げられるとつらい。
イエローはさらに続けて、
(Y)「やっとミスターNの本拠地がわかったの。でも来てみたら、一足違いで逃げてしまって。これから彼を追うところよ。
さあ、わかったでしょ。それじゃ」
碧はまだ食い下がる。
(碧)「あたしも連れてって。あたしだって・・・」
目が光りだした。
スーパーガールYは、ハハンと顎に手を当てて見ている。
(Y)「なるほど超能力か。それもかなりのパワーの。それでここまで追いかけてこれたわけね」
碧がうなずくが、イエローは首を振り、
(Y)「あなたはパワーはあるようだけど、経験があまりないみたい。
それだと、あいつらの奸計(かんけい)に簡単にやられるよ」
(碧)「どうしてよ」
(Y)「だってさぁ」
(碧)「ウッ」
ボンと、腹に一発を受けて、碧は気を失った。
(Y)「ごめんね」
彼女はグリーンの後を追って行った。

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