妄想別館 弐号棟


報仇雪恨の巻 その2


朝になった。
碧は体を引きずるようにして登庁してきた。
みんな挨拶はするものの、逃げるようにすぐに離れていく。
彼女はすごい形相をしていた。
当身を受けて気を失ったのも不覚で悔しいが、それよりも・・・
ミスターNの居場所も結局わからなかったし、
あの新しいスーパーガールって何者だ、
なによりも、やはり真理子が死んでいたこともショックだ、
体力も使い果たしてグダグダで、
ほとんど眠っていないので疲れもとれていない。

部下を呼んで、ミスターNが捕まったか尋ねたが、そのような報告はないという。
「やっぱり逃げられてしまったのかな。あっ!」
碧は気がついた。
「あのイエローとかいうスーパーガール、会話の中で確か、
『それでここまで追いかけてこれたのか』と、言っていたな。
あたしが追いかけて行ったのを何で知ってたんだろう?」
それにだ、
「あたしが追いかけて行ったのは『青柳美穂』という女性だったよね」
ということは・・・
体はフラフラだが、午後にあの美穂という女性がいる大学に行ってみようと思った。
署長からは男たちの逮捕の件で褒められたが、そんなことはどうでもよい。
早く彼女に会っていろいろ聞きたいと、そればかりをずっと考えている。

報告が来たのはそのすぐ後であった。
某地区で大捕り物があったが、ミスターNの部下たちの妨害で彼には逃げられたこと。
新しいスーパーガールが現われて、彼らを追いかけて行ったこと。
(部下)「あのぉ、ミスターNの部下は20名ほど逮捕しましたが・・・」
(碧)「部下なんか何人捕まえてもしょうがないでしょ!」
当たり散らしてしまった。
彼女は「ごめんなさい。ちょっと疲れていて」と、言って部屋から出て行こうとしたら、電話が鳴った。
(碧)「はいもしもし、私に?そうですかつないでください。湯村ですけど、えっ!・・・」
電話はなんと美穂からであった。
用件は『今日の夕方6時、〇〇公園に来てください。詳細はその時話します』と。
一日千秋の思いとはこのことだ。
碧は仕事が手につかなくなり、他の報告なんかも上の空で聞いていた。
そして早退にも近い形で署を飛び出した。

某公園では2人の女性が話をしている。
碧は走ってきた。
(碧)「お待たせしました」
碧は全然休んでいなかったようだ。それこそ青い顔だ。
(美穂)「よく来てくれたね」
焦っている碧は「当然です。いろいろ教えてください」
と、初対面とは思えない言い方をした。
彼女たちは笑いながら、
(美穂)「最初に紹介するね。あたしはいいよね。青柳美穂。そしてこっちが島瀬夏美。
彼女は妖魔退治のエキスパートよ」
(夏美)「よろしくお願いします」
(碧)「いえこちらこそ」
物騒な昨今である。
(碧:妖怪退治って、やっぱりそんなのもあるんだ)
聞きたいことが山ほどあるが、その前に・・・
(碧)「あの、あなたたち夕べの、黄色と緑のスーパーガールね」
2人は顔を見合わせて、
(美穂)「やっぱり気がついてた」
昼間考えていたことを説明する。
(夏美)「やっぱりするどいな」

美穂が説明するには、
昨今の犯罪は、悪質さに加えて科学レベルも上がってしまっている。
また妖術や怪異もはびこっているので、不可思議な現象にも対処していかなければならないこと。
(美穂)「失礼な言い方だけど、警察の科学力だけじゃ、ちょっと・・・」
碧は否定できずに、黙っている。
実際、ここ数年、手下はともかくその首領級はほとんど逮捕できない。
さらには大物たちの手引きによる脱獄も多発している。
加えて、常識では説明できないような不可思議な消失事件や相談事も増えてきている。
このような事件については完全にお手上げだ。
美穂の説明では、スーパーガールの能力はそれに特化したものになっている様である。
(美穂)「警察との連携も強化していかなければならないけどね。それは徐々にってことで」
そうだろうな、と思った。

(美穂)「ま、あたしたちのことは、おいおい話していくことにして、本題」
今日これから、彼のアジトを急襲するとのことである。
碧は驚いた。「け、警察は・・・」
警察には何の情報も来ていない。逃げられたというだけだった。
しかし、2人はすでに居場所をつかんでいるらしい。
(夏美)「警察を介したら絶対逃げられてしまうから、今回は伝えてないよ」
ただし、悪人たちの情報網もすごいという。
気配を察知しただけで、ただちに連絡が入り、すぐに居場所を変える用心深さだ。
昨日はそれで逃げられたのだった。
(美穂)「だから今回は事後で。だけどあんたは納得しないでしょ。それじゃ」
(碧)「うん」と、うなずき「それで呼んでくれたわけか」
(夏美)「そういうこと」
(美穂)「どうする、もちろん来るでしょ」
(碧)「もちろんよ」
(夏美)「でも警察には内緒でよ。言うんなら連れて行かないよ」
(碧)「うん、わかった」
(夏美)「でもさ、言いにくいけど・・・」
(碧)「なに?」
(夏美)「死ぬかもしれないよ。あたしたちと違って、あなたは」
念入りに計画を立てて、万全の体制でいくわけではない。一か八かの突撃だ。
致命傷を負ったら回復の手段がないよ、って。
(碧)「かまいません!連れてって!」

美穂は車を運転しながら、
「少しでも眠ったら」と、言ったが、とても眠る気になれない。
疲れてはいるが、それどころではないのだろう。
(碧)「二つほど聞いていい?」
(美穂)「どうぞ何なりと」
まず、真理子たちは何で生き返ることができなかったのかを聞いてみた。
(美穂)「よくはわからないけれど」
何らかの理由で変身の呪文が唱えられなかったとしか言えない。
あるいはマスクが誰も手の触れないところに隠されてしまったとか。
そうでなければ必ず生き返っているはずだ。
(碧)「そうだろうな」
碧はもう一つの質問の方が大事かと思うんだけど、と前置いて、
(碧)「それじゃあさ、もし連中が同じ方法で戦ってきたら、あなた達勝算あるの」
夏美は「うーん、どうだろ」
美穂が「そうだね。ハッキリ言ってしまうとわからない。でもあたしたちは真理子さんたちになかった能力を持っているから」
(碧)「それは何なのよ?」
(美穂)「まあすぐにわかるよ。ほら、もう着いたよ」

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