妄想別館 弐号棟


原色ハレンチ大図鑑 その1


学校の近くの公園。  
黒ずくめの男がベンチに座ってくつろいでいる。
そして少し離れた別のベンチには分厚い図鑑が一冊置いてある。
美しく見事な表紙であり『原色大図鑑』と、なっている。
きっと専門的な内容、きれいな図や写真がいっぱい載っているのだろう。
しかし公園のベンチに大図鑑とな?
えらく場違いな感があるではないか。
それに『怪しそうな男と大図鑑』の組み合わせ。
なんの脈絡もなさそうであるが・・・まあ経過を見て行こう。

下校の時刻になった。
子どもたちが集まってくる。
子どもたちは楽しみにしている。
目当ては大図鑑である。
「おじさん見せてください」
「ああ、いいよ。好きなだけ見ていってくれ」
子どもたちはワイワイ騒ぎながら見始めた。
若いパワーのある中学生、高校生たちよ。
男は時折、大図鑑の方をチラチラと見ている。
不思議なことに子どもたちがページをめくるたびに、男の血色が良くなっていく。
どんどん良くなっていく。
やがて夕方になった。
「おじさんありがとう」と、言って、子どもたちは帰っていった。
男も立ち上り、大図鑑をカバンに入れて立ち去って行った。
帰り際に男がつぶやく。
「いや、今日も満腹になった」と。
何が満腹なのだろうか?
男はずっと座ったままで、物を食べるどころか、缶コーヒー1本飲んでいないというのに。

その日の夜のできごとだ。
男のいた公園からそんなに遠くない路地、帰宅途中のOLが歩いて行く。
人通りはまったくなく、昼間と違い少し不気味な感じがする。
「気味が悪いななぁ」
怖くなる気持ちを押し殺すように、わざと独り言を言いながら急ぎ足で進んでいく。
突然『バサッ!』と、後ろの方で音がした。
「キャ、なに!」
思わず立ち止まり、恐る恐る振り向くと、
「?」
なんだ、誰もいない。
ホッとしたが、分厚い本が落ちている。
「何で本が落ちてるのかな」
拾い上げてみると、
「へぇ、これ図鑑なんだ」
表紙は確かに『原色大図鑑』となっているが、開いてみると目が点になった。
なんと、見かけの豪華さとは全く違う、いわゆる『エロ本』であった。
表紙がやたら装飾されていて分厚いが、中は完全にヌード写真集というべきものであった。
「いやだ!なあにこれ、いやらしいな」
女性たちの全裸丸裸の図鑑であった。
1人の女性について、最初の見開きでは自己紹介と称して、直立の全身像の正面からと背後からの姿。
次に数ページにわたって、当人のはずかしい、エロい写真が、しかも数種類のポーズで掲載されている。
ものすごく、いや、すさまじい格好、姿勢、体位などの写真が何枚も。
そして、最後のページには特質すべきものが!
個人情報がびっしりと載っている。
氏名から始まり、年齢、生年月日、性格、財産、学歴、家庭環境から、交友関係、
食べ物の好き嫌いから、好きな人嫌いな人、
身長体重やスリーサイズもちろん、座高、手足腕脚の長さ、足のサイズ、
手首足首の細さ、指の長さ、はては秘部の具体的大きさ特徴まで、
今までについた嘘、ダマした人ダマされた人、一日の化粧の回数ややり方、
やった男性の人数や氏名、初めての日時場所、その他、書くのも嫌になるようなこと・・・全部。
要するに女性のデーターがすべて残らず書き並べられているわけ。
これが大図鑑たる所以(ゆえん)であろう。

拾った女性は「ウッソ―ぉ」「こんなの書いていいの」「いやだぁ丸見えじゃない」
と、つぶやきながらニヤニヤしている。
この本、なぜか女性しか載ってないが、
自分のと比較したり見ることのできない、秘所部分、穴やおマ〇コの写真まで載っているし、
なによりも他人の個人情報を見るのは、興味深く面白い。
まわりに誰もいないし、立ち止まって読み始めてしまった。
「あれ?」
突然ページが伸びるように広がり飛びかかってきた。
「あ!キャー!」
パサリと、図鑑は地面に落ちた。
そして彼女は図鑑の1ページとなって掲載された。

昼間の男が現われて本を拾う。
実はこの大図鑑は妖怪である。
図鑑が本体であり、男は図鑑が念力で操っている人形のようなものである。
エロ本などというと、いまや骨董品扱いだが、 
粗末に扱われたエロ本が妖怪と化したのだろうか?
いやそんなことはどうでもよい。先を続ける。
この図鑑は、女の人を図鑑の中に封じ込めて生きているのだ。
そして、次のふたつをエサとしている。
ひとつ目は、本に取り込まれた女が持っている生体エネルギー。
エネルギーを吸い取られた女は、本の中でどんどん生気を吸い取られていって、
最後はヨボヨボのお婆さんのような姿になって消えてしまう。
ふたつ目は、この本を男どもが読むときの、ムンムン・モンモン・ムラムラ、
つまりその時に出てくる『気』である。
とくに若い男の子の気がおいしくてパワー源になる。
しかしこの図鑑は、男については襲わない。興味がないそうである。
昼間の公園の情景は、男の子の気を吸っていたというものだ。
そして、気を吸収するごとに、本は少しづつ分厚くなっていく。
成長しているというわけだ。
(図鑑)「やっぱり並の女じゃ物足りないな」
そして一言・・・
(図鑑)「スーパーガールを食ってみたい」

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