妄想別館 弐号棟


倉庫街の捕物 その5


その日夜遅くである。
美穂は大学から帰ってきて、碧が置いて行ったメモを見ている。
(美穂)「・・・」
敵地に乗りこんでいった碧と夏美からは何の連絡もなかった。
緊急連絡もつながらないし、2人に何かあったのは間違いない。
しかし・・・今度の敵については、情報がほとんど何もない。
密輸に関係があることは間違いないが、詳細は不明だそうだ。
唯一確実にわかっているのは、メモに記されている一言だけだ。
(美穂)「なんだよ!キャットフードの会社ってだけかよ・・・」
状況がわからないところに、単身で乗り込むのは少々危うい。
しかし美穂は、
「グズグズしていると、状況も悪くなるだろうしな」
そう言うと立ち上がった。
(美穂)「一応、警察に後詰めの応援を頼んでおこう」

倉庫の入り口にはもちろん見張りが立っている。
イエローはあまり暗いところには隠れたくない。そこでだ・・・
倉庫の照明灯が入口のまわりを照らしているが、
彼女はなんとその明かりの中に隠れることにした。
忍術で相手の影の中に隠れる『影かくし』という術があるが、
イエローは明かりの中に体をぼやかして隠れることができる。
彼女は体を光に変えて、照明灯に照らされた地面や壁に紛れるようになっている。
見張りは彼女に気がつかない。

(Y:さて、どうするかな)
イエローは考えがまとまると「よし」と、言って、体を光らせた。
「あれ?」見張りが振り向いた時には、入口、通路、ホールをすでに通り抜けている。
瞬間移動であっという間に建物の中央部まで来た。
2人を助け出すまでは、無駄な戦闘は避けることにした。
何人かとすれ違ったのだが、彼らは気がつかない。
(Y:ここはどこだろう。それに首領の居場所はどこかな?)
さらに進むと、手下たちが何か言いながら歩いて来る。
(手下)「ブルーとグリーン、ザマなかったな」
(Y:あ、こいつらは2人のことを何か知っているな)
通路の角にしゃがみこんで、タイミングをはかり飛び出す。
2人のうち1人をすばやく倒して、残る1人を羽交い絞めにする。
(Y)「さあ言え。グリーンとブルーはどうなったの?」
(手下)「あ、イエロー!う、凍らして、バラして・・・」
(Y)「え?!凍らして、バラして・・・って、なんだそれは?」
でも本当らしい。グリーンはネコのエサ、ブルーは氷の塊になったと言っている。
(Y)「は!??」
いまいち状況がよくわからないが、
(Y)「それじゃ、あんたのボスの居どころは?」
(手下)「指令室です」
(Y)「それはどこにあるの」
(手下)「建物の中央部。でも普通の手下でも簡単には入れない・・・」
(Y)「え、なんでよ?」
セキュリティが厳重だそうだ。
味方でも、中から確認して、許可をとらないと入れてもらえない。
(手下)「スーパーガールのあんたが入るのはたぶん無理でしょう」
男が白状すると、当身を食らわせた。
(Y)「そこで寝てなさい」
イエローは考える。
(Y)「どうしよう。入口までたどり着いても中に入れないって」
あと30分くらいで、警察が突入してくる。
それまでに、マスクの回収と、首領はとらえておきたいのだが・・・
彼女は通路の天井にある監視カメラを見ていたが、
(Y:ははあ、あれであたしのことを見ているようだな)
何か思いついた。
(Y:それじゃ、強引にそこに行きましょうかね)
彼女の体がかなり明るく光りだしスッと動いたが、次の瞬間には消えていた。

しかしレディ・イーリスは、このことにもう気がついている。
一部始終をモニターで見ていたからだ。
(Iris)「やっぱり来やがった。しかしこいつもあの爆弾で2人と同じように・・・」
突然、モニターがフラッシュでも焚いたように『ピカッ』と光った。
「うゎっ!」
画面の輝きはどんどん増していって、とても見ていられない。
指令室内も、目を開けていられないほど明るくなったが、すぐに治まった。
(Iris)「何だ今のは。ん、あああ!?」
なんとイーリスの横にイエローが立っている。
(Y)「ビンゴね。やっぱりここにいた」
(Iris)「あ、お、お前、いったいどうやって」
(Y)「どうやってでもいいでしょ。あんたが首領ね」
逃げる暇が・・・まったくないではないか!
手下も飛び掛かる暇がなかった。
(Iris)「おのれ、スーパーガール。うわっ」
それを言うだけで精一杯であった。
当身を受けて、イーリスは気を失った。
手下に向かって、
(Y)「おとなしくしなさい!抵抗は無駄ヨ」

警官も突入してきたようだ。
(Y)「さあて、ベネチアンマスクは返してもらうよ」
イエローははぎ取られているコスチュームを見て、
(Y)「あれれ、コスチュームもあるってことは、2人はスッポンポンか?
でも変身すれば問題ないよね」
『変身』と、唱えると、まわりが光りだして・・・
(Y)「なんか復活が遅いな。大丈夫だろうか?」
しかし少々時間がかかったが、ブリーとグリーンは生き返って・・・伸びている。
グリーンは「か、体、体中が痛いよぉ」
ブルーはブルーで「眠い。眠たいよ。眠らせて」と言っている。
動けないようだ。
(Y)「どうしちゃったんだよ。いったい」
2人を呆然と見ていたが、
(Y)「当分は戦闘不能か。でも主犯は逮捕できたし、ま、いっか」

(夏美)「まだ、魚の臭いがとれない」
夏美は生臭い臭いがプンプンする、と言っている。
そんなことはないはずだが・・・碧が茶化す。
(碧)「あはは、ネコに食べられて、ネコ娘だぁ」
碧は笑っているが、夏美はムッとする。
(夏美)「冗談じゃないよ!」
美穂は2人のやり取りを見ているがホッとしている。
半分死んでいたようなものだが、こうして生き返ることができた。
(美穂)「2人とも危なかったね。でも無事でよかったよ」
2人は凍っている間は何が起こっていたかは、もちろんまったく覚えていなかった。
イーリスから聞き出してやっと全容がわかった次第である。
(碧)「ねぇ、ネコのおなかの中ってどうだった?」
夏美はとうとう怒りだし、
(夏美)「そんなのわかるわけないでしょ。あんただって氷になって寝てたくせに!」
(碧)「しょうがないでしょそれは。あたしのせいじゃないもん」
(美穂)「まあまあ、それぐらいにしたら。それにしても・・・」
美穂は(ブルーの弱点を知られてしまったし、少し気をつけないとな)と、思った。
(碧)「ところでさ、どうやってあんたは首領の部屋まで行けたの」
セキュリティは厳しかったはずだ。
(美穂)「それはだね・・・」
美穂は体を特別な光子状にして、監視カメラを経由して指令室のモニターまで行ったらしい。
(夏美)「そんなことできるの?」
(美穂)「まあね。大技だよ。
指令室であのカメラの映像を見ていなければ、あそこにたどり着けなかったし」
レディ・イーリスがモニターを見ていると踏んで行ったわけだが、
(美穂)「まあ、うまくいって、よかったよ」
体を光子まで分解すると、しばらく体がガタガタになり体中が痛痒くなるらしい。
完全に回復するまでしばらくかかるそうである。

なお、イーリスの倉庫は閉鎖されてしまったが、
ネコのエサやりについては、お隣のきちんとした倉庫の人が、代わりにやるようになったということだ。
心配はご無用である。
めでたしめでたし。

                                      倉庫街の捕物 完

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