妄想別館 弐号棟


倉庫街の捕物 その4


ブルーが運ばれた先は実験室であった。
こちらには、レディ・イーリスと手下たちもついて来る。
(Iris)「こいつには少し興味があるんだよな」
(手下K)「はぁ?」
(Iris)「彼女の能力は液体に関することだろ」
寒さに弱いのでは、と思いついたのである。
(Iris)「温度が下がると動きが鈍くなるんじゃないのかな」
(手下)「なるほど」
イエローは暗いところが苦手のようだし、グリーンは・・・
(手下F)「でもボス。ここでブルーを片付けてしまえば弱点なんて、関係なくはないですかね」
(Iris)「お前なぁ・・・」
こいつらは不死身だぞ。どんな状態で生き返るかしれたものではない。
悪人たちは、スーパーガールの弱点を探ろうと躍起になっている。
弱点の情報は多いに越したことはない。
今のこの状況は絶好のチャンスである。

青いベネチアンマスクをつけた頭が台の上に転がっている。
(手下F)「これ、溶ければ元に戻ってしまうんですかね」
(Iris)「たぶんな。おい、ベネチアンマスクとコスチュームを早く脱がせろ」
手下はマスクを外そうとするが、やはり引っ張っただけではダメである。
それではと・・・ドライバーでこめかみのあたりを小突いてみると、
(手下Ⅼ)「あ、とれた」
こんどは簡単に外れた。
当たり前ではあるが、ブルーは、素顔の碧の首になった。
真っ白に凍結はしているが、目を開けたままの晒し首である。
普通の人間ならば死体の状態だ。
しかしイーリスはまったく動じない。それどころかワクワクしている。
(Iris)「首だけになってはどうしようもないか。フン、どんどん進めろ」
華奢な胴体も容器から引き上げられて寝かせられた。
(Iris)「ビキニを着た、トルソーだな」
1人が手足の無い胴体を立たせて、ブラやボトムをハンマーでたたきだした。
コスチュームも簡単に割れてしまった。
ガントレットとブーツは、さすがに脱がすのに手こずったが。
それでも思っていたよりは簡単に切断できた。
(Iris)「ほう。この素材、意外と低温に弱いとはな。これは発見だな」

スーパーガールブルー、いや、
マスクやコスチュームをはぎ取られて全裸姿にされた碧は、
頭、胴体、手、足と、作業台の上に並べられている。
(Iris)「これがブルーの素顔か。なるほどな」
横向きに転がっている首を覗き込む。
素性の調べは何となくついている。
(Iris)「湯村 碧か。◇△警察署の副署長ね」
本人が望んだわけではないが、悪人の検挙率が抜群。
成績優秀のため昇進も早かったようだ。
まあ、碧自身がスーパーガールと言うこともあるのだが、
そういう意味では、やはり悪人たちにとってはにっくき敵である。
(Iris)「湯せんの用意をしろ」

バラバラになっているブルーのパーツは金属容器に入れられた。
さらに湯せん用の大鍋の中に浸けられている。
(Iris)「少しずつ温度を上げていけ。上げすぎるといきなり再生するぞ。気をつけてやれ」
徐々に徐々に温度が上がっていくにつれて、
体の表面から出ていた冷気が薄く弱くなっていく。
体についていた霜も溶け出して、ブルーの首が・・・薄く目が開いた。
(Iris)「思った通りだな」
さすが、ベネチアンマスクの液体を操る能力である。
首だけの状態でもやっぱり生き返った。
(Iris)「おいわかるか」
首だけなのでうなずくことができないが、何か言おうと口が動いている。
「死体が動いた!」と、手下は騒ぎだしたが、正確に言うと『もげた首』が、しゃべっているのである。
イーリスは「うるさい連中だな。興がそがれるじゃないか!」と、怒鳴る。
ブルーは目の焦点があっていない。
自分がどうなっているのかわからないようだ。
(Iris)「おい、お前、今どんな気持ちだ」
(B)「ね、眠いの・・・」
(Iris)「そうか眠いのか。よしよし、もうちょっとだけ我慢しろ」
手下に向かって、
(Iris)「もう少しだけ温度をあげろ。少しづつだぞ」
命令通りに少し温度をあげると、バラバラの体が透明になりだした。
(Iris) 「よーし、どうだ」
(B)「まだ眠い。眠くてだるいよ」
(Iris)「よしよし、体をすべて液体にしろ。そうしたら気持ち良く寝かせてやるぞ」
ブルーはイーリスの言葉がわかったのだろう。
容器の中に入っている、バラバラの体が溶けだしていく。
そしてついに完全に溶けてまざってしまった。
ブルーがよくやっている液体人間の状態である。
(Iris)「頭も溶けてしまっていいぞ」
ブルーはこれも理解したのだろう。
頭も溶けだして、これも完全な液体になってまざってしまった。
容器の中が透明な液体で満たされている。
(Iris)「よしよし、いい子だ」
再び手下に向かって、
(Iris)「実験は終わりだ。温度を下げてしまえ」
温まっていた液体は、湯せんから一転、一気に冷却されて、容器の中で再び氷になった。
冷却されて氷点下数十度。
こうなってしまっては、もう動くことはできない。
(Iris)「フフフ、やっぱりな。こいつは、温度が下がると、動けなくなるようだな」
イーリスはブルーの弱点がわかって満足そうだ。
金属容器に蓋が閉められて、液体のブルーは超低温のフリーザーボックスに入れられた。
(Iris)「このままカチンカチンに凍らせとけよ。そうすれば、こいつは動くことはできないからな」
悪人情報では、このまま数年放置しておけば復元力はなくなるらしい。
つまり死ぬということだ。
こうしてブルーも大ピンチである。

(Iris)「よしよし、2人は片付いたな」
ブルーもグリーンもスーパーガールに変身した状態でやられてしまった。
しかもベネチアンマスクは外されてしまっている。
もはや超能力も使えず、それどころかほとんど死んだような状態の2人である。
さてイーリスの前には、その青と緑のベネチアンマスクが置いてある。
(Iris)「さあてと、これをどうするかだな」
迂闊に扱えば、2人は生き返ってしまう。
一番確実な方法は・・・これも悪人情報によるのだが、
どこか人の手の届かないところに持って行って捨てるか隠してしまうことだそうだ。
そうすれば、この2人は絶対に生き返れない。
イーリスが持っていても仕方がない。使いようがなさそうだ。
それにもう1人いる。
(Iris)「かならず助け出しに来るだろうな」

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