ダイヤモンド警備指令 その1
美穂のマンションに3人が集まっている。
なにかの事件の反省会と称した女子会だ。
その時のちょっとした様子を少々。
(夏美)「♪ルンルンルン♪ ♪フンフンフン♪」
彼女はカバンの中から袋を2つ、ビンを1つ取り出した。
きれいな色をした袋の中には何か入っている。
中身は粉、なにか粉末状のものだった。
機嫌良さそうに、それをガラスビンに移しかえている。
そのあとは夢中になって、その粉の入ったビンを振っている。
どうやら混ぜているような様子だ。
美穂と碧は黙って見ていたが、とうとう美穂が、
「さっきから、なにをやってるのよ?」
(夏美)「クスリを調合しているんだよ」
(美穂)「クスリ?」
(夏美)「そうだよ」
珍しいことをやっているものだ。
ビンの容器に粉を入れ、ただひたすら振っているだけのようであるが。
(碧)「ねえ、何のクスリよ」
(夏美)「ひ み つ・・・よ」
(美穂)「何よ。もったいぶってんのね」
(夏美)「へへへ、実はね・・・」
惚れ薬だという。
(美穂)「は・・・はぁ?惚れ・・・グスリ?」
美穂は驚いているが、碧は「え、え、なに!」と、興味を示しだした。
すかさずのりだしてきて、
(碧)「ねえねえ、詳しく教えてよ」
この袋の中の粉は特殊な媚薬を調整したものだそうだ。
(夏美)「これにね、自分の爪と髪の毛を焼いたものを加えて、お酒を少したらす」
(碧)「へえ、それで」
(夏美)「それだけなんだよ。それで効果抜群だそうよ」
(碧)「本当?本当にそれだけなの?すごく簡単じゃない」
あとはこの粉を好きな相手に振りかければいいだけ。
美穂はあきれたような顔で、
(美穂)「そんなのが効くんなら世話ないわ」
夏美はふくれて「いいじゃないのよ」
ただし、このクスリはものすごい効果があるが、持続時間はせいぜい24時間しかないそうだ。
それを長いと思うか、あるいは短いと思うかは、
使う時の条件や、使う人の考え方次第なのだが、美穂はもっぱら否定的だ。
(美穂)「なあんだ1日か。そんなに短いんじゃな」
(夏美)「いいじゃないの。好きな人を振り向かせるだけでもさ」
夏美はうっとりしながら言っている。
(夏美)「そうそう、使うお酒はね・・・」
『高級であればあるほど良い』と言っている。
(碧)「缶ビールじゃだめなんだ」
(夏美)「なに言ってんの碧。そんなのじゃ全然ありがたみがないでしょ」
(美穂)「バカバカしい。お酒の値段によってクスリの効力が決まるなんて」
(夏美)「なんだよ美穂、さっきからケチばっかりつけて」
(美穂)「だってさぁ・・・やっぱりバカバカしいんだもの」
碧は割って入っていき、
「ねえねえ、あたしにもその粉をわけてよ」
(夏美)「えー高かかったんだよ」
(碧)「いいじゃない。ちょっとだけ」
(夏美)「まあいいか。まだ数袋残ってるから」
空のビンを美穂からもらい、その中に今混ぜた粉を半分ほど入れて碧に渡した。
碧は大喜びである。
(碧)「あとは、髪の毛と爪を焼いたのと、お酒を入れればいいのね」
(夏美)「もう一回、念を押すけど、効力は1日だよ。24時間しかないんだからね」
(碧)「わかった。わかった」
1日であっても試してみる価値はありそうだ。
夏美の話では、今、魔界ではすごく流行っているそうである。
(美穂)「魔界でねぇ・・・」
どうやって手に入れたのだろうか?
しかしこの際、野暮な事は言いっこなしだ。
だがしかし美穂はまだなにか言っている。
(美穂)「やっぱりあたしはいやだな。本当の恋や愛じゃないね、それは」
(夏美)「美穂はいいよね!いくらでもモテるんだから!」
美穂が声をかければ、男は、たいていコロコロいく。
男がいつも切れない美穂からしたら、そんなクスリはいかがわしいもの以外の何物でもない。
(美穂)「忠告してあげてんの。なんか邪道ぽいっしさ。あたしはそういうのはキライなの」
夏美は捨て台詞を吐く。
(夏美)「それは結構ね。モテてモテてしょうがない女はキライなんでしょうね。
こういうクスリを。なんだよ不愉快な!」
付け加えておくと・・・
夏美は勘違いしていたようだが、厳密にはこれは惚れ薬ではない。
相手のことを好きにもなるが、どちらかというと無条件で相手に従いたくなる、というクスリなのである。
服従薬とでもいうのだろうか。
碧は帰り道の途中。
「ビールじゃダメか。なにかお酒を調達しなきゃ」
お酒の専門店の前をたまたま通ったので、中に入っていろいろと見てみると、
「ええっと、高そうなの高そうなの。高そうなお酒って・・・」
高そうなお酒を探していくと『ドン・ペリニヨン!』
俗にいう『ドンペリ』である。
「うえ、さすがにこれは少しもったいないな・・・」
しかし彼女の第六感が働いたのであろうか?
なぜか彼女は大枚をはたいて、小さいのを買ってしまった。
そして、これが彼女のピンチを結果的に救うことになるのである。
と言うことを、この時は知る由もない。
碧は家に帰るとさっそくクスリの調合を始めて、
「これで良し。効果あるかな。楽しみだな」
ニヤつきながら、
「さあて誰に使ってみようかな」
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