妄想別館 弐号棟


ホン物ニセ物 その1


怪情報がタレコミ屋よりあった。
『悪人たちの大総会が開催される』
真偽のほどは定かではない。
だがしかし、悪人たちを一斉検挙できるチャンスかもしれない。
半信半疑、いや、どちらかと言えばガセネタ覚悟の感が強かったが、
兎にも角にも、スーパーガールたちは警察とともに乗り込んでいったのである。
そして・・・怪しい連中が何か画策していたのは事実だった。
経過はと言うと・・・
彼女たちは犯人を追っていくうちに、地下の一室に踏み込んだ。
その部屋は、プラネタリウムのドームのような造りになっていた。
窓がまったくなく、壁の全面すべてに、頑丈な金属板の内張りが施されている。
室内はガランとしたものだったが、なぜかイエロー、ブルー、グリーンに似せたマネキン3体だけが置いてあった。
結局、追い詰められた犯人たちは、室内を爆破して逃げてしまった。
スーパーガールや警官たちは、室外に退避して、危うく難を逃れたが、マネキンは粉々に。
残された破片は証拠品として専門機関に搬出されて、くわしく調べられることとなった。
後日、主犯の1人を捕まえることができたが、2名は逃走中である。

碧が捜査関係の書類を調べているとドアをノックする音がした。
(碧)「どうぞ」
(主任研究員)「失礼します」
白衣を着た男性が入ってきた。
「先日の、マネキン人形の分析結果が出ました」
「あ、そうなの。どうだった」
碧がうなずくと、彼は説明を始める。
「マネキンというよりは人体模型ですね。プラスチックでできている」
「人体模型って?」
「小学校の理科室に置いてあるじゃないですか。あれですよ。ありふれた、ごくごく一般的なものでした」
見た目はマネキン人形だったが、中には脳や臓器、骨格のようなものまでが入っていたそうな。
彼はさらに説明を続ける。
ベネチアンマスクはプラスチック製のオモチャ。人形が身に着けていたコスチュームはナイロン製。
「一般の店舗でも販売されているような代物でしたね。特別品という物ではありません」
本物とは似ても似つかない粗雑品だったようである。
「一般に流通している物ですから・・・」
販売元までは特定できないということである。
つまり犯人の手掛かりにはなりえない。
碧は首をかしげて考えている。
(犯人は、マネキンにスーパーガールの恰好をさせていたということなのよね。
何でそんなことしたんだろ?)

「あ、続けて。他に何か変わったことはあった?」
「マネキンの仕様に奇妙な点がいくつかありました」
「奇妙な点?何?」
「マスクを外したブルーさんのマネキン、顔は副署長そっくりでした」
目の前の碧を前にして、彼は『ブルーさん』と、言っている。『さん』付けだ。
先の『エロ芸術家の事件』で、湯村碧副署長がスーパーガールブルーであることは、署の者なら皆知っている。
ブルーのマネキンであれば、顔を碧に似せてあることなど容易に想像がつく。
「それはそうでしょ。あたしだもの。それで」
碧が見上げると、彼は、すごく言いにくそうな顔をしている。
「どうしたのよ?」
「つまりですね、そのぉ・・・」
「ハッキリ言いなさいよ」
彼は姿勢を正し、顔を引き締めると、
「なぜかわかりませんが、女性器までついていました」
「じょ、女性器!」
「はい外性器まで。コスチュームを脱がして調べましたら・・・」
マネキン本体を調べるのだから、コスチュームは脱がすに決まっている。
でもそうすると、すみずみまで丸見えとなる。当然のことながらね。
碧は赤くなるが、ここで恥ずかしがるわけにもいかない。
ブルーだけでなくイエロー、グリーンのも、そうだったらしい。
もちろん本物と比べたわけではないのでそっくりとは言えまいが、おそらくは・・・
彼女は眉にしわを寄せて、ボソボソと「そうなの」とつぶやく。

彼はコホンと咳ばらいをして話を続ける。
「それから、グリーンさんのマネキンには・・・あのぉそのぉ・・・」
彼を見ると、再び下を向いて言いにくそうな顔をしている。
開き直った碧は、
「グリーンがどうしたの!ハッキリ言っていいよ。証拠の報告説明なんだから」
主任は真っ赤になりながら、
「グリーンさんのボディーには何か呪文のような文字が書かれていて・・・それも体のすみずみまで」
膣の根元や、お尻の穴のところまでも。
正確には固いもので、えぐるように彫られていたようだ。
「じゅ、呪文?呪文が書かれていたって、なによそれ?」
彼に理由などわかるわけがない。
「それから、どうみても爆発の前になくなっていたものが、そのぉ・・・あってですね・・・」
なくなっていたもの・・・とはなんだ?
「もう、わからないな!わかるように説明してよ。なにがなくなったの!」
「心臓とかが・・・なくて・・・」
「はい?!」
「あと大事な部分も・・・」
「え?」
「副署長のは、両方の乳首もありませんでした」
わかりやすく言うと、模型の一部分は、すでに爆発の前になくなっていたというのである。
碧は真っ赤になって立ち上り、叫ぶように、
「ば、爆発で砕けたんじゃないの?そうだよ、きっとそうに違いないよ!」
「いいえ。爆発で吹き飛んだのではありません。
爆発以前に人為的に持ち去られていたと思われます。まちがいありません」
「ど、どういうこと???」




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