妄想別館 弐号棟


ホン物ニセ物 その2


深夜、警察署の証拠品保管庫に、ソーッと、忍び込む者あり。
スーパーガールの3人であった。
碧の話を聞いた美穂と夏美は、現物をくわしく見てみたくなった。
立件前の証拠物件である。
スーパーガールといえども部外者だ。バレたら碧もただでは済まないかも。
しかし美穂と夏美は碧を拝み倒し、とうとう説得に成功したみたい。
(B)「まったくもう!責任を取らされるのは、あたしなんだからね!」
渋るブルーを前にして、
(Y)「大丈夫大丈夫。変な事はしないからさ」
イエローは室内をキョロキョロと見回しながら、
(Y)「うわぁ、すごい。事件の証拠品がこんなにいっぱい」
(B)「他の事件の物は、あんまり見ないでほしいんだけどな」
捜査途中の証拠品や個人情報に関する物ばかりだ。
(B)「さ、早く奥に行こう」
ブルーに促されて、保管室の中を進んで行く。

やがて・・・「ここだよ」
シートをかぶせたタンカのようなものが3つ、台の上に置いてある。
ブルーが、そのうちの1つのシートをめくると・・・
銀色のコスチューム、ガントレット、ブーツにベネチアンマスク、
をつけた、破片としか言いようがない物が載っている。
ビキニアーマーの肩パッドのところに入っているカラーライン、あるいはベルトの色、等で、これがイエローだったとわかる。
つまり、イエロー、美穂のバラバラ人形であった。
彼女のは他の2体に比べて損傷がひどく、養生テープで留められている。
(G)「うわ、やっぱりやだな。これあんただよ」
(Y)「な、何言ってんのよ!ああ、でもやっぱり見たくないな」
自分のご遺体にご対面。しかも粉々ときている。
模型とはわかっているが、少しグロテスクだ。
おっかなびっくりで覗き込むと、砕けた内臓がもろに見えたりして。
(Y:うわぁぃ。あたしのお腹の中もこんな風になっているのかな)
つまらない事を考えてしまう。

イエローとグリーンは、腰が引けそうになっているが、慣れているブルーが2人をけしかける。
(B)「ほら、調べるんでしょ。さっさとやってよ。なにかおかしいところってある?」
グリーンとブルーのシートもめくった。
イエローとグリーンは気を取り直して人形に近づく。
(Y)「うーん、やっぱり専門家じゃないし、よくわからないな」
(B)「何を言っている。あんた薬理学の専門家でしょ。解剖実習とかやるでしょ」
(Y)「そうだけどさぁ。これって、どうみてもプラスチックの模型だもの」
でも覗き込むように詳しく調べていると、
「あれ! たしかに何かでえぐり取ったような跡があるね」
心臓がなかったのは、イエローの人形だった。
(G)「爆発で吹き飛んだんじゃないの?」
(Y)「違うな。人為的な方法で抜きとったんだよ、この切り口は。絶対にね」
主任研究員の言ったとおりである。
ブルーは首をかしげて、イエローに尋ねる。
(B)「ねえイエロー、爆発の前にそんな暇はなかったよね。いつ、どうやって抜き取ったのよ?
それにさぁ、何でわざわざそんなことするのよ?」
(Y)「ええっと・・・わかんないわ。あたしには」
今度は熱心に見ているグリーンに向き直り、
(B)「あんたの方は、どうよ?」
グリーンのマネキンには、体中に文字が彫られていたとのことだったが・・・
(G)「マネキン自体は確かに普通のものだよ。でも書かれているのは呪いの言葉だね。本物だよ。それも強力な」
このマネキンに呪いをかけるためのものらしい。
ブルーとイエローも覗き込んだが、気味が悪いだけ。
ブルーは、無駄とは思ったが、再び思っていたことを口にする。
(B)「なんで、マネキンに呪いなんてかけるのよ?」
(G)「そんなの知らないよ。うゎ、体中に書いてある」
グリーンは両手で胸を抱えるようにして、
(G)「このマネキンに、よっぽど恨みがあったんだろうね。あれいやらしいところにも書いてある」
グリーンはボトムをめくって中も見ているが、そこにも何か書かれているらしい。

ブルーも自分のを、なにげなく見ていたが、何か気がついたようだ。
「あれ?」と声を上げた。
(G)「どうしたの?」
マネキンの一点を見つめだして、ブツブツとつぶやいている。
(B)「なんで?どうしてだろ?」
イエローとグリーンは怪訝そうな顔つきでブルーを覗き込む。
(Y)「どうしたのよ」
(B)「いや不思議だなぁって。いえ、なんでもないよ」
イエローが「ちょっと何よ。ハッキリ言いなさい」と、小突く。
ブルーは腰をかがめて肩のところを指さす。
(B)「ほら、肩のところに小さな傷があるでしょ。これって、あたしが子供の時に怪我した時につけたんだけど・・・」
(G)「え?は?マネキンの傷だよ」
(Y)「それじゃなに、このマネキンと同じ傷があんたにもあるってこと?」
逆であろう。ブルーと同じ傷がマネキンにもついていたというべきではないかな。
まあどちらでもよい。同じ傷があったという事実が大事なのである。
(B)「いや、爆発の時についたのかもな。でもなぁ・・・」
ブルーは思い切って変身を解き、シャツの右側を脱いで肩の部分を露出させる。
(碧)「ほら、比べてみてよ」
「あっ!」と驚く2人。
なるほど。マネキンとまったく同じ位置にまったく同じ傷がある。
(碧)「たまたまかな。あんたたちも、もっとよく自分のを調べてみなよ」
グリーンのマネキンは首がとれて、胴体もいくつかに割れてしまっている。
ひとつずつ手に取って、まじまじと見ていたが「うっそぉ!」と、叫んだ。
なにか見つけたらしい。
グリーンはへその横に二つ並んだホクロがあると言っている。
さらに首のない胸部も持ち上げて、
(G)「こっちもだ!」
脇の下にある小さなあざを2つばかり見つけた。
(G)「あたしと同じ痣があるよ。まちがいないな。このマネキン、あたしそっくりに作ってあるんだ」
イエローは「私のはバラバラすぎてわかんないわ」と、いうことであった。
3人は首をかしげる。謎は深まるばかりだ。
これは一体どういうことなんだろう?

そう・・・この奇妙な事件は今から2週間前に起ったのだった。   




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