ホン物ニセ物 その10
1か月くらい経ったある日。
碧は、今日も自ら
外出で、悪人たちを捕まえてきた。
(碧)「ああ、疲れたわ・・・」
スーパーガールになって動きまわってきたが、今日は一日中格闘だった。
さすがにグッタリしている。
ところがだ、署に戻ってきたとたんに、
(主任研究員)「副署長!大変です!」
マネキンを調査していた研究員が部屋に駆け込んできた。
「どうしたのよ、あわてて?」
「大変です!大変なんです。例のマネキンが、マネキンがぁ!」
「落ち着いてよ、いったいどうしたって言うのよ?」
とにかくきて見てくださいと言っている。
彼女は証拠品保管庫に引っ張って連れていかれた。
「これを見てください」
碧は人体模型のマネキンを見ると悲鳴を上げてしまった。
「え、え、え! ウッソ―ぉ!!!」
担架の上にあったのは・・・
人体模型であった人形、内臓があったはずの人体模型(の破片)が・・・マネキン(の破片)に、そっくり変わっている。
内臓だった部分には、すべてのっぺりとプラスチックがつまっている。
美穂、碧、夏美と、別々の顔だったのも、すべて同じなっている。
「ど、どうしたのこれは?なんでこんなになっちゃったの?」
「わかりませんよ。私が今朝来たら・・・」
こうなっていたようだ。
もちろん誰もマネキンに手を触れていない。
「自然にこうなったとしか思えないのですが・・・」
そもそもこんな奇妙な事は起きるわけがない!
歪に砕けた人体模型の破片、それが全く同じ形で、マネキンの破片に置き換わってしまうなんて!
しかもすべてだ!
台の上にあった3人分、あわせて数百個以上あった破片全部がだ・・・
ここはピーイーが所有する証券会社のビル。
表向きは手広く、いろいろなことをやっているが、これもカモフラージュの1つだ。
ここでピーイーとツバーンが話をしている。
2人は商談のような話を始めたが、内容はやっぱり例の3人のことになる。
ツバーンはサイレンから交換の板を取り戻してきた。
説明を聞いていたピーイーは「宝の持ち腐れだったな」と、一言。
ツバーンはまったくその通りだと思うが、サイレンもお客なので口には出さない。
「どういう具合になるか、様子見の意味も兼ねて、サイレン様にお貸ししたのですがね」
結果はさんざんだ。
「でもな、それじゃ、そのなんだ。マネキンがスーパーガールになって、結局そっちが本物の代わりになっちまったってことか」
「それが、そうではないんですよ」
ベネチアンマスクはやはり強力な力を持っていた。
そしてマネキンにされた彼女たちもかなりの生命力を持っていた。
今いるスーパーガール(実際は元マネキン)が、変身と解除を繰り返しているうちに、
「いずれ、いやすぐにかな、破片になっている彼女たちは人間に復活しますよ」
「え?どういうことだ?」
ベネチアンマスクは、マネキンよりも本物たちの体(今保管庫でバラバラになっている破片)を変身の際に利用しているようだ。
変身解除を繰り返すたびに、破片に残っている強力な精気も取り込まれて、マネキンの弱い精気と置き換わっていく。
10回も変身解除をすれば、精気は残らず吸収されて、完全に元々の状態に戻ってしまうということだ。
むろん今のスーパーガールたち(元マネキン)は、自分の体の中でそんなことが起きているなんて、
「気がついていないでしょうけどね」
「なるほどね」
やっぱり妖力のかけられていない、ただのマネキンでは、ベネチアンマスクの復元力に、ついてこれなかったみたいだ。
いずれ、マネキンの破片は人間に戻り、今いるスーパーガールたちはマネキンの破片になってしまうのだろう。
ツバーンが一言、
「でもこれは交換の板の条件をうまくつかえば防げたミスなんですよ!」
と、自信ありげに言っている。
ピーイーは、それを聞いて、フムとうなずく。
「ま、本物だろうが偽物だろうが、我々の邪魔をするんだったら、排除するだけだがな」
「まあ、そういうことですね」
ヤレヤレとピーイーは笑っていたが、突然、ジロリとツバーンを見て、
「それじゃ、いよいよやるんだな?」
打てば響くように、
「機は熟していると思いますがね」
すかさず返事が返ってきた。
何をやるかと言えば、もちろん決まっている。
「一応、念には念を入れて、1人づつね。大丈夫ですよ。わたしにお任せください」
「フフ、大いに期待してるゾ」
ホン物ニセ物 完
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