妄想別館 弐号棟


ホン物ニセ物 その9


数日後の夜。
「カンパーイ!」
サイレンのアジトで打ち上げ会が行われた。
大総会は成功裏のうちに終わった。
第一回記念大会の評価は上々だった。
スーパーガールも倒したし、3人はホクホク顔だ。
ニセスーパーガールたち、いやいや、もう彼女たちが本物か、が、もうじき来ることになっている。
(サイレン)「彼女たちが来たら、さっそく今後の打ち合わせをするぞ」
本格的な悪だくみを、軌道に乗せるのだ。
この日が来るのを、いかに首を長くして待っていた事か。

やがて3人がやって来たが、なぜかコスチューム姿に変身している。
(傀儡鬼)「お前たち、よくやったな。まあ、座れや」
ねぎらうように言うと、うなずいて椅子に座る。
田中が「どうだ、人間になった感想は?」と、上機嫌で聞いてくる。
(B)「ええまあ。でもまだ少し違和感があって・・・」
(傀儡鬼)「そうかそうか、まあすぐに慣れるさ」
サイレンがさっそく話しを切り出す。
(サイレン)「お前たち、これからはあたしたちの命令通りに動くんだよ。
最初にやるのは資金の調達だ。それにはまず銀行の・・・」
イエローが話をさえぎって話し出す。
(Y)「その前にさ、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
(サイレン)「ン、何だい」
(Y)「サイレン、あたしたち本物のスーパーガールだよね?」
ずいぶん馴れ馴れしい口の利き方である。おまけにおかしなことを聞いてくる。
(サイレン)「は?何を言ってる。当然だろ。本物はくたばったんだから、お前たちが本物なんだよ。
ベネチアンマスクだって本物だろうが」
(Y)「そうだね。そうだったね」
彼女たち、ホワイトボードの呪術により、何から何まで本物と全く同じである。
姿かたちの外観はもとより、生まれたときからの記憶、性格、考え方、運動能力から特殊能力や技能まで。
全てそっくりそのまま受け継いでいるのだ。
そして、ベネチアンマスクが認識している以上、やっぱり彼女たちが本物である。

サイレンたちは怪訝な顔つきでスーパーガールを見つめる。
(田中)「どうしたっていうんだよ?」
(B)「いや、なんか偽物がいたような気がしてさ。でもはっきりした記憶がないんだよ」
どうしても変な感じ、嫌な気分が抜けないんだと言っている。
(サイレン)「記憶がないもなにも・・・ 交換の板で本物とお前たちを交換したんだろ。
だからお前たちは、今、人間なんじゃないか。それからドームを爆破して・・・」
(B)「ちょっと待って。あたしたちを何と交換したって」
(サイレン)「いぃぃ?! 本物とに決まってんだろ。本物のスーパーガールたちとだよ。
お前たちは元々マネキンだっただろ!」
(B)「あたしたちがマネキンだったって?」
3人は「アハハ」と、笑い出した。
(Y)「あんたたち何言ってんのよ。なんであたしたちがマネキンなのよ?」
(傀儡鬼)「はぁ?おい、お前たちこそ何を言っているんだよ」
(B)「そもそも、交換の板って・・・なによ?」
これにはサイレン、傀儡鬼、田中とも、本当に驚いた。
(傀儡鬼)「え、え、今なんて言った?」
(田中)「本気か?本気でわからないと言っているのか?」
3人は、うんとうなづいている。

田中と傀儡鬼は顔を見合わせる。
(傀儡鬼)「どうも、話がかみ合わないな」
(G)「あのさ、あたしたちあの廃工場に踏み込んだじゃない」
(サイレン)「本当にどうしたんだよ。さっきから変な事ばかり言って」
(G)「まあ聞いてよ。そもそもさ、あたしたちはあんたたちを、ドーム内に追いつめたでしょ。
それなのに気がついたらドームの外にいたんだよ?
不思議でしょうがないんだけどね」
(サイレン)「はぁ??? え?」
(B)「あんたたちを取り囲んだ時までと、部屋の外に出てから後のことは、はっきり覚えているんだけどさ」
サイレンは考えてしまったが、彼女たちの言っていることは正しい。
彼女たちは、交換の板の呪力を発動した瞬間の記憶だけがないはずだ。
つまり、その前後の記憶のことを言っているのだろう。
ボードが呪力を発動する前は、本物が持っていた記憶を引き継いで。
ボードが呪力を発動した後は、偽物はすでに人間になっているので、その記憶として。

田中は、このやり取りを聞いていたが、だんだんイライラしてきた。
(田中)「要するに、お前たちはなにが言いたいんだよ!」
イエローとグリーンが顔を見合わせてボソボソと何か言っている。
ブルーが「わからないことだらけなんだよ」
サイレンたちを完全に包囲していたのに、どうして取り逃がしてしまったのか?
どうして、その瞬間の記憶だけが全くないのか?
一番不可思議なのは、サイレンたちを逃がしてしまったのに、なぜか数日後の今日、彼女のアジトに来ている。
(Y)「よくよく考えたらさぁ、あたしたちとあんたたちは、敵どうしじゃないよ」
(G)「あたしたち、誰の指示で、何しにここに来たんだろうって?」
サイレンたちに呼び出されたわけでもないのに。いや、呼び出されたことがあったような気もする。
しかしはっきりした記憶は残っていない・・・
(G)「ついでに言えばさ、なんであたしたちが、このアジトの場所を知ってたんだろうってね」
催眠術? 後催眠ようなものをかけられたのか、とも考えたが、そうでもなさそうだ。

サイレンと田中は、この状況をまったく理解できずに呆然としているが、傀儡鬼だけは嫌な予感がしだした。
スーパーガールたちの、この行為の意味することが分かったのだ。
さすが彼、人形や偽物の扱いに関しては超一流の妖怪である。
(傀儡鬼)「おいサイレン、お前、その板にどういう指示を書いたんだ?」
(サイレン)「え?」
(傀儡鬼)「完全に本物そっくりはいいが『俺たちの命令には絶対服従すること』と、いう一条を入れたんだろうな?」
(サイレン)「は、なんで? 入れてないよ」
(傀儡鬼)「なるほど、そういう事か」
傀儡鬼は納得した。

マネキンたちは人間だった彼女たちと全く同じになってしまったのだ。
えっ、「最初から呪術で、そのようにする計画だったのではないか」って?
その通りなのだが少し違う。
サイレンはとんでもない勘違いをしたのだ。
完璧に複製されたこの3人、交換の板に条件が何も入ってないので、破片になってしまった3人と完全な同一人物。
髪の毛の先に至るまで、異なるところがまったくないのだ。
当然この新生3人の思考も、元3人の思考とまったく同じだ。
サイレンは自分たちが用意したマネキンだから『こいつらも仲間』という思い込みがあったのだろう。
ところがどっこいである。
目の前にいるスーパーガールたちに、そんな考えは微塵もない。
なんとなれば、本物たちにそんな考えはないから。
本物たちは正義の味方であり、悪人は捕まえるものだ。
思考が全く同じなので、このマネキンたちも、もはや正義の味方である。
悪人は、やっぱり捕まえるものだ。
残念なことに、傀儡期の言った一条を入れていれば、新生たちの思考が本物たちと変わっていたはずであるが・・・
思考がまったく同じでは、サイレンたちに従ういわれがない!
この新生スーパーガールたちも、元スーパーガールたちと、まったく同じことを忠実に実行するはずだ。
多少、都合のつじつまが合わない事実が生じているが、いずれ有耶無耶になり、すべて記憶から消えてしまっていくのだろう。
つまり・・・
(傀儡鬼)「こいつらは俺たちを捕まえるぞ」
言うが早いか、マントを振って消えた。
サイレンもよくわからないが、それを見て反射的に逃げた。
(G)「あ、待て!」
人間である田中だけが「え、え、どういう事」と、もたもたしているうちに・・・
(G)「あなたを逮捕します」
グリーンが植物のロープで彼を縛った。
(田中)「あ、何をする。お前たちを人間にしたのは俺たちだぞ!」
イエロー、ブルー、グリーンの3人は顔を見合わせて、首をかしげる。
「何を言ってるのよ。あたしたちは生まれたときから人間ですよ」




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