鬼の復活話 その1
除霊や
祈祷を
生業としている人たちの間で、奇妙な
噂が立っているそうだ。
鬼が
蘇って、人間を食べているというのである。
場所はN県N市の観光リゾート地。
被害者は全員女性。
行方不明者が出始めたのは、ひと月ほど前から。
けれども、本当に鬼の仕業なの?
「鬼なんぞいるものか!」「デマに決まってるだろ」
と言いたいところだが・・・
噂の地に建っている某有名ホテル。
そこのVIPルームの中庭で3人の男たちが、焼肉パーティーを始めようとしている。
いずれも、ほれぼれとするほど男前なのだが、実はこの3人、鬼が化けているのだ。
兄弟のようである。長男が黒彦、次男が赤介、三男が青之と呼びあっている。
一連の行方不明事件の犯人はこいつらだったのだ。
彼らは数百年ほどの長い間、石の下敷きになって封印されていた。
もちろん、その間何も食べていない。
そして封印が解かれた途端、飢えた獣がエサを
貪るように、女たちを襲いだしたのだった。
炭火焼きでいくらしい。
昔は旅人などをそのまま丸かじりしていたが、現代ではグルメというわけか。
大皿には、バラ切りにされた肉が山のように盛られている。
さらってきた女だろう。しかも優に人間数人分の量はある。
大きな炭火コンロの中は赤々と焼けて、準備はすっかり整った。
「さあ、どんどん食べようぜ」
「待ってました」と、ばかりに、炭火の網の上に、肉を放るように載せていく。
肉はジュージューと音をたてて焼けだし、おいしそうな匂いが漂い始めた。
頃は良し。鬼たちはバクバクと食べだした。
食べっぷりがすごい。
「うっまい」「たまらんな」「いくらでも食べられる」
『ハフハフ』『モシャモシャ』と、たちまちに肉は減っていく。
盛ってある肉について、もう少し補足しておくことにしよう。
鬼たちは、さらった女性を、罠(壁)で押しつぶして、ステーキよろしく、程よい厚さにするのだ。
ペッタンコの被害者は裸にされて、適当な大きさにぶつ切りである。
着ている衣服や靴は邪魔だ。燃えあがるし、おいしくないし。
骨なども含めて、全部豪快に丸ごと食べてしまう。
表面が
滑らかでツルツルな肉は、腹や背中の『肌つやが良い』『キメが細かい』『お肌がスベスベ』などの部分ということがわかる。
模様や色のついた肉というのは、へその穴、目鼻唇、おっ〇いについているポッチ円盤などということになる。
彼らが夢中になって食べていると、ドアの呼び鈴が鳴った
鬼ども、座を立つのが面倒くさい。
黒彦が「カギは開いてるぞ、勝手に入って来い」と怒鳴ると、
「失礼します」と、男が入ってきた。
(Th)「お食事中のところ。お邪魔いたしますよ」
部屋にはいってきたのはミスターツバーンでる。
(青之)「おお、あんたか。まあ、ここに座れや」
と、言いつつも3人は食べるのに夢中で手を休めない。
よほどおいしいのだろう。
彼はチラと皿の上の肉を見る。
(Th:うわ、すごいな!)
あきれて見ていると、
(青之)「あんたもいっしょにどうだい」
(Th)「いえいえ、私は結構です。それよりも・・・」
ゴホンと咳ばらいを一つしてから、
(Th)「例のお願いしていた件なんですがね。どうなりましたか?」
(黒彦)「ああ、ベネチアンマスクのことか?」
ということで、ここからが本編である。
事件の発端は
遡る事一か月前に始まる。
得体のしれない怪しげな男たちが数人、山道を登っていく。
人が
殆ど立ち入らない某山奥の、いわくのある石の前に立っている。
「それじゃ石を動かしてください」
目つきの鋭い男が、他の男たちに命令する。
石はそんなに大きい物ではないので「よっ!」とばかりに持ちあげて、横に転がした。
とたんに地面から煙が吹き出し始め・・・男たちは、
慄いて後ずさる。
しかし、命令した男はまったく動じずに、腕を組んで見ている。
煙はすぐに消え、素っ裸の男が立っていた。
3人、3人である。
(赤介)「お前たちが出してくれたのか?」
(Th)「そうですよ」
(黒彦)「お前妖怪だな。どうもどこかで見たことがあるな」
ツバーンであった。
(Th)「おぼえていてくださいましたかね。これはこれは光栄なことで」
鬼たちは話を続けようとするが、数百年間、何も食べておらず、フラフラだ。
(青之)「何か食い物はないか。人間の女がいいが、
贅沢は言わん。そこの男たちでもいいぞ」
「えっ!?」
男たちはピーイーの手下であり、人間である。鬼の食料にもなる。
手下たちは逃げ腰になったが、ツバーンが手で制して止める。
(Th)「とりあえず、パワーが復元できる食べ物を持ってきていますよ。さあどうぞ」
鬼たちは、ツバーンの気の利いた行動に、
怪訝そうな顔をしたが、空腹には勝てない。
奪い取るようにして、それを食べる。
少し落ち着いた頃を見計らって、
(Th)「これから、食べ物を探しに行くんでしょうけどね。
でも妖力を早く完全に回復するんだったら、霊力や超能力をもった者を食べるといいですよ。
例えばスーパーガールとか」
(赤介)「スーパーガール?」
(黒彦)「何者だ、それは」
ツバーンはこれまでの経緯などを説明する。
(黒彦)「なるほどな。そんな連中もいるのか」
(青之)「俺たちにとっては邪魔な存在なようだな」
(赤介)「それに食いでもありそうだな」
黒彦は、ちょっと思いついたように言った。
(黒彦)「もしかしたら、俺たちをまた封印しに来るんじゃないのか?」
(Th)「必ず来ますよ。彼女たちは。絶対にね」
(青之)「そいつは具合が悪いな」
(Th)「だから先手を打ちましょう。こうすればいいです」
密談を始めた。
石を戻しに来たスーパーガールを食べてしまえば、邪魔者は消えるし妖力も回復するし、一石二鳥だ。
(Th)「まず服をどうぞ。それから隠れ家をご提供します。他にご希望があれば何なりと言ってください。
その代わり、こちらからも1つお願いがあるのですが」
(黒彦)「なんだ、言ってみろ」
(Th)「彼女たちがつけている、ベネチアンマスクがほしいのですが」
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