妄想別館 弐号棟


名演技 その1


少し未来の出来事。
巷ではラブドールが大流行おおはやりである。
一世代前の物は、よくよく見れば『やはり人形だなぁ』と、いう感じで見分けがついた。
しかし最近のは違う。まるで死体だ。動かない人間。
皮膚感や髪の毛はもちろん、毛穴や産毛など、どうみても人間としか思えない物が出回っている。
いや、もはやそれらが主流になりつつある。
おまけにお手頃の値段で手に入るようになってきている。
安価である!安いのである!
人間そっくりのリアル人形が、なんと数千円程度で!
もちろん、オプションをたくさんつければ、それなりに値段も高くはなる。
『皮膚は小麦色がいい』 『身長をもっと伸ばして』 『ぽっちゃり目がタイプ』
『うりざね顔でないと』 『手首と足首は細めで』
『九頭身、いや十頭身に』 『指はほっそりと長く』などなど。
でも、一般的には、オプションなど付けなくても十分であろう。

しかし・・・人間(特に男?)の欲望はきりがない。
容易にそこそこの物が手に入るようになると、
今度は『誰々さんとそっくりのお人形』が、ほしくなってくる。
顔そっくりがいい。体形もそっくりがいい。
何よりもアソコも本人とそっくりの物が欲しいなどとね。
こうなると本人の了解をとって『型どり or かたどり』をさせてもらわねばなるまいに。
どうなのよ?たいていの女性は『いやだ!』と言うだろう。
そして某人物と見紛みまごうような特急品は値が張り、数十万円はする。

さて、話の本筋に入る。
今回のお話の舞台となる桔梗ききょうヶ丘高校。
望月里帆先生が、2年生で演劇部の部員、あかね、すみれ、さゆりと談笑している。
里帆は演劇部の顧問で3人の担任でもある。
まさに人形のように美人で抜群のスタイルをしている。
またこの生徒たち3人もかわいくてクラスでは人気者である。
(里帆)「先日の発表会、ご苦労様でした」
この3人は演劇部の部長(あかね)、副部長(すみれ)、会計担当(さゆり)と、
役職についている者たちだ。
彼女たちは、幹部会と称して発表会の反省会をしていたらしい。
先生はねぎらいつつ「次回もがんばろうね」と言っている。
しかしそれは表向きのこと。実際には内密の打ち合わせである。
大勢いるはずの他の部員を一人も呼んでいないのだからね。
里帆先生は何やら含みのある笑みを浮かべて、
(里帆)「それから例の件。本当に大丈夫?」
3人は緊張しつつも「はい」とうなづく。
(あかね)「これも練習の一環と思ってますから」
(すみれ)「度胸試しにはもってこいかも」
(さゆり)「でも、やっぱりちょっと抵抗あるかな」
他人が聞いたらよくわからないような事を言っている。
里帆も「大丈夫よ。性根をすえて頑張ろう。あたしも協力するからね」
「そうだった。先生も参加するんだっけ」と、3人はあらためて思った。
次回の発表会のことかな?
(里帆)「それじゃ今日は解散」   

数日後の朝の登校時間。
あかねたち3人は駅で一緒になり学校に向かう。
談笑しながら歩いて行く様子は、何の変哲もない、いつもの日常風景だ。
しかしここから事件が起きる。
教室に入るや否や「あ、来た!」と大声がする。
あかねたちが声のした方を見ると、
教室の後ろが人だかりになっている。
(すみれ)「なによ!なんなのよ?」
(あかね)「どうしたの。いったい?」
どうやらなにか置いてあるようだ。
興味深そうに群がって、何か言いながら騒いでいる。
スマホで写真を撮っている者もいる。
「なんだろう」と、思って近寄ってみると、
「ギョギョギョ!」
彼女たちのリアル人形が置いてあった。
Vサインを出してポーズをとっているあかね。
ウインクをしながら投げキッスをしているすみれ。
足を開き左手を腰に当て、右手を上に突き上げて、
これは「オー!」というシュプレヒコールのような格好のさゆり。
それは『彼女たちにそっくり』としか、言いようがない物であった。
髪のスタイルこそ違うが、顔、身長、体形などは、鏡に映っているように瓜二つだ。
「ウソみたい」「そっくりだ」と、感嘆の声があがっている。
しかし、我に返った当人たちは叫びだす。
(さゆり)「えー!これはいったいなんなの!」

リアルマネキンは3体とも下着姿であった。
あかねは薄緑色のブラにパンティ、
すみれは白色でちょっとおしゃれで高級そうなモノ。
さゆりは薄ピンクのブラにクマさんの絵柄のパンティを履いている。
(さゆり)「いやあーーー!」
手遅れではあるが、あわてて人形の前に立って隠そうとする。
しかし、本物が現われたことによって、騒ぎはどんどん大きくなっていった。
『ちょっと顔を比べさせて』「並んでポーズをとってよ」不届きな誰かが叫びだす。
「本物と人形を一緒に撮ったぞ」
誰かが叫ぶと、みんなも同じことをしだした。
『本物と人形のツーショット』
バシャバシャという音が、そこらじゅうから鳴りひびく。
スマホを目の前に突き付けられたあかねは、
「やめてったら。見ないでよぉ!」と叫ぶが、誰もやめようとしない。
すみれは泣きそうになって叫ぶ。
(すみれ)「ちょっとやめてよ。なんなんだいったい!」
3人は人形の前に手を広げて立ちふさがり、
「見ないで―よー」「あっち行ってぇ!」
と、必死で叫び続ける。
親切な誰かがバスタオルをかけてくれたようだが、すぐに不親切な誰かがはずしてしまったのだろう。
虚しく下に落ちている。
彼女たちは必死になってバスタオルで大事な所を隠し、懸命に観衆を追い払おうとしていた。

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