妄想別館 弐号棟


べっこう飴ラブロマンス その1


「ちきしょう!俺をクビにしやがって。この恨み必ずはらさでおくものかぁ!」
この物語は、ある男の逆恨みから始まる。
上の一条を、よーく覚えておいてください。
ではでは。

ここは某製菓会社の、うーん・・・『飴の部門』の商品開発および品質管理を行っている工場である。
広大な敷地の中に何棟もの建物が並んでいる。
そこへ高校生の男女がやってきた。
(亜子)「ここがおかあさんの働いている工場なのよ」
亜子と壮太は同じ高校に通う同級生だ。
恋人同士ということ。
彼女の母親は、ここの会社の総務部長兼工場長なのだ。
偉いのである。

この会社は、近々、創立○○周年記念のイベントを執り行うことになっている。
その際に、飴に関連したデモンストレーションをやるとかなんだとか。
亜子の母親は、今回はイベントの実行委員長も務めることになっている。
そして!
おもしろい企画がたくさんあるということで、亜子と壮太はイベント前にそれらを見学させてもらえることになり、ここへやって来た次第なのである。
ついでにいうと、両人は、まあなんというか、母親も公認している恋人たちである。

広いロビーで待っていると、まもなく、いやぁ・・・スラリとした美人の女性が現れた。
亜子の母の名は莉乃という。
亜子に似ている。当然か。
(莉乃)「いらっしゃい」
壮太は一瞬ドキッとした。
(壮太)「こんにちは。よろしくお願いします」
(莉乃)「娘がお世話になりますね」
(壮太)「いえ、そんなことは・・・こちらこそお世話になってます」
挨拶をするが、少し緊張気味だ。
壮太は以前にも、実は莉乃に1、2度会ったことがある。
壮太よりは低いが、身長は170pくらいはあるだろうか。
先に『スラリとした美人』と形容したが、胸や腰、出るべきところは出ている。
スレンダーではあるが、かなりメリハリのあるセクシーなボディをしている。
スタイルも良いが、服のセンスもなかなかのものだ。
今日はワイシャツにタイトスカートの装いであるが、細くて白い足がこれまた引き立つようにきれいに見える。
加えて、ふんわりとしたやさしい雰囲気も漂っている。
壮太は(亜子の母はいつみても若くて美しいな)と思った。
(亜子)「ねえ、何を見せてくれるの」
(莉乃)「えーとねぇ」

まあ、3人は施設内をいろいろと見学していくが、話を端折って、ストーリーに関係ある場面へ。

3人は工場棟の中に入っていった。
(莉乃)「今日は作業が無いので中には誰もいないのよ」
莉乃が先に立って通路をしばらく歩いていくと、
(莉乃)「ここよ」
扉のカギを開けて3人は中に入った。
そこには何かを操作するための機械類が並んでいた。
ずらりと並んだ機器類の奥は、なぜか防護柵が設置されている。
(壮太)「柵の向こうは吹き抜けになってるんですか?」
(莉乃)「のぞいてごらんなさい」
柵から下をのぞくと、ちょっとした会議室くらいの広さの部屋のようになっている。
しかしこの柵までの高さは結構ある。10mくらいだろうか。
亜子と壮太は、ちょうど空っぽのプールをのぞいているような感じだ。
さらにこの柵は体育館の周回廊のように、この空部屋を上から一周して見えるようになっている。
この部屋は見たところ窓も入口もない。壁は何かの金属でできているようだ。
いやいやいや!よくよく見ると左右の両壁には人の形をした鋳型のようなものが彫ってある。
亜子と壮太は柵につかまり、この変な部屋を覗き込んでいる。
(亜子)「あれなんなの?」
(莉乃)「この部屋というか空間はね、いろいろな形や大きさのべっこう飴を作る機械なの」
(亜子)「え、機械?ここが?」   
機械と言ったって、ここはガランとしていて機械はどころか何もない。
(莉乃)「フフ、この部屋の両壁は動くようになっていてね、鋳型の彫ってある壁が中央でペッターン!寿型が合わさったところで、その中に飴を注入してべっこう飴のできあがり」
(壮太)「なるほど、壁自体が鋳型になっているわけだ」
莉乃はパネル盤の所に2人を呼んだ。
(莉乃)「あの鋳型を変えればなんでもできるけど、今回はデモンストレーション用に人型のべっこう飴を作るのよ」
(壮太)「へえ、いろいろと形の違うものも作れるわけか」
(莉乃)「そ、あの壁の大きさいっぱいまではね」
(亜子)「それじゃ、かなり大きいものも作れるの。例えば壁いっぱいにクルマを描けば・・・」
(莉乃)「できないこともないよ。わかったかな」

壁に彫ってある人型の鋳型は、正確には『やや足を開いた仁王立ち』のような形をしている。
ただし鋳型の奥行きは20pくらいあり結構、深いというか、分厚いというか。
(亜子)「左右2つ、くり抜いてあるのね」
(莉乃)「両方から挟みこむためにね」
(亜子)「そうすると厚さ40p?そんな大きい幅のべっこう飴を作るの?なんか変だな?」
(莉乃)「ええ、分厚すぎるようだけど、中にボールや果物を入れる予定もあるの。ちょっとやってみるね」
莉乃がパネル盤のスイッチを入れると、左右の壁が中央に向かって動き出した。
ここに至ってやっと機械だったと分かる。
鋳型を彫った金属の壁は徐々に徐々に部屋の中央に迫っていき、やがて、
カシャーン!
と、部屋の中は2つの壁で閉まってしまった。
(壮太)「うへー、部屋の中はペッチャンコ」
莉乃は笑い「そうね。鋳型の部分以外は、壁に押しつぶされるからペッチャンコよ」
(亜子 壮太)「・・・」
(莉乃)「でも鋳型の中だけは空洞になってるわけでしょ。そしてね」
別のボタンを押すと、クーと音がしだした。
(莉乃)「トローッとした、水あめを流し込んでるのよ」
甘い匂いがしてくる。
(亜子)「いい匂い」
(壮太)「飴は熱いと、ベタベタになりそう。でもあんまり熱くないみたいだけど?」
(莉乃)「原料には、熱をかけなくても加工しやすくて、しかも空気に触れるとすグに固まるようなものを使ってるの」
(壮太)「へー」
そして、莉乃がさらにパネル盤を操作すると、
今度は壁が左右に開いていって、元の場所に納まった。
部屋の中央には、莉乃の説明通り、やや分厚めの人形型のべっこう飴が出来上がっている。
(壮太)「うわーおもしろいな」。
(莉乃)「でしょ。展示では材料の水あめに色を付けて、50体くらい作る予定よ」
(亜子)「はぁー」
(亜子)「あの人型の身長は調整できるの」
(莉乃)「人型は2mくらいまではね。いまは180cmくらいに調整してます」
(亜子)「壮太の身長より少し大きいかな。壮太、あの中に入ってみたら」
(壮太)「バッカを言え!飴なんかになるかい」

莉乃は笑っている。


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