妄想別館 弐号棟


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注)太宰治の『走れメロス』or シラーの『担保』からヒントを得て書きました。

男なんてものは その1

若い女が走っている。足を引きずりながら懸命に。
「戻らなくちゃ。絶対に。日が沈む前に!」
もし戻れなければ、彼女の友人が石にされてしまうのだ。

西暦30〇〇年、地球は宇宙の帝王マーブル15世に支配されていた。
この帝王は、生き物を石に変えることができるのだ。
気に食わない者、逆らう者には容赦しない。
だがここで、1人の女が反旗を翻し立ち上がった。
その女の名前はふみかと言う。しかし・・・あっさり負けた。
「お前は石に変えて広場に飾ってやる。永遠にな。ハッハッハ!」
ふみかは言った。
「もし帝王にお慈悲の心があるなら、3日の猶予をいただきたいのです」
「3日?どうする気だ」
となりの村に住んでいる妹の結婚式があるという。
彼女は以前に、妹と約束していたのだ。
この世で唯一の肉親の結婚式にだけは必ず出席すると。
「うまいことを言う。そうやって逃げてしまうつもりだろう」
「いえ、けっしてウソは言いません。もしウソだとお思いなら・・・」
ふみかに命を預けてくれる人物を「わたしの身代わりとしてお預けしておきます」と、言う。
友人の名は翔太郎。彼は彼女の幼馴染である。そして異性でありながら、無二の親友である。
話を聞いていた帝王は笑いながら「フムフム。いいだろう。その男を呼んで来い」
連れてこられた翔太郎。ふみかから話を聞くと、
「わかった。お前がウソなどつかないことは良くわかっている。俺はお前を信じている」
「ありがとう。翔太郎」
帝王は笑いながら「女、命が惜しければそのまま逃げてもいいぞ。そうすれば命は助けてやる」
「そんな卑怯な真似はいたしません。それじゃ翔太郎。3日。3日だけ待っていて」
と、いうわけで、ふみかは妹の結婚式に出席し、いま宮廷に向かっている所である。

もうじき日が暮れる。
宮廷では帝王がニヤニヤしながら翔太を見ている。
「女は戻ってくるかな?」
彼は何の迷いもなく平然と言い切った。
「必ず戻ってきます」
そして日没直前。
「とうとう、女は戻ってこなかったな・・・ん?」
その時、宮廷のゲートにいた観衆たちからどよめきが起きた。
「何だ。な、なにごとだ!」
ふみかが入ってきた。彼女は約束通り戻ってきたのだ。
翔太郎は立ち上がった。
「ふ、ふみか」「しょ、翔太郎」
2人は泣きながら抱き合った。
「俺は信じていた」「あたしがウソを言うわけないでしょ」
これを見ていた帝王は「うんうん」とうなずき、
「地球の人間とは、このように美しいきずなで結ばれているのか」
感極まる顔で2人を見ていたが、やがて我に返り一言。
「よし、それじゃ、最初の予定通り、女の服を脱がせて石にして飾ろう」
翔太郎とふみかは「えっ」と驚いた。「助けてくれないの」という顔だが、
「なんだよ。最初からそう言う約束だっただろう。男は帰ってよし」
翔太郎は帝王に食い下がろうとしたが、帝王がしきりに、
「ふみかの裸」「ふみかの裸」というものだから、しだいに見てみたくなった。
しぶしぶと、いや、いそいそと、
「それじゃふみか。君のことは永遠に忘れないよ。さようなら」
ふみかは翔太郎を呆然と見ていたのだった。
そして、広場には長い年月の間、超美人で豊満な女の裸体石化像が立っていましたとさ。

女は誠実なんだね。それにくらべて男はいやらしいね。

                           男なんてものは その1 完




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