ムジナ退治 その7
少し品のない描写ではあるが・・・
静流はノックをして、個室のドアを開けた。
(静流)「あれ? おかしいな。このトイレは洋式便器だけのはずなんだが・・・」
しかし「時間もないし」
ズボンのチャックをさげて・・・気がついたら・・・
(静流)「ギャーァァァァァ、なんでよぉ! どうして! ここはいったい?!」
体育館の舞台上にしゃがんで、これからおしっこをする、まさに直前の恰好になっている。
あわてて止める!
お隣では・・・驚いたどうしの顔がお互いを見せ合っている。
トイレにいたはずが、なぜか、羽純、静流、詩音と並んでしゃがんでいるではないか。
アソコは丸見えだ。
いやさ、舞台下に向かって股を開いているので、わざとしゃがんで見せるようにしているとしか思えない。
再三再四であるが・・・「うわーぁぁっ」と、どよめきの悲鳴が起きた。
女子からも男子からも容赦のないヤジが飛んでくる。
体育館の中は大騒ぎになった。
たちまち3人のアソコがよく見える位置に近寄ってくる。
「何見てるのよ!」「見るんじゃないよ!」と彼女たちは叫ぶが・・・一切無駄。
立ち上がって逃げ出したいところなのだが、体が全然言うことをきかない。
それどころか『チャーァァァ』と、無意識のうちに黄色い液体が穴から噴き出している。
「いやだ、こんなァ、こんなバカな!」
静流が右を見ると、羽純は動くことができる両手で顔を隠している。
やっぱり止めることはできないらしい。
左側の詩音も「見るな、あっちいけ」と大声を上げて手を振り回して騒いでいるが、下半身は言うことをきかないようだ。
おしっこはすごい勢いで音を立てて飛んでいく。
前を見れば自分も同じだった。
結構な勢いで舞台の下の向こうまで飛んでいる。
そしてバチャバチャと床に散っている。
「きったねぇ」「これが初月先生のオシッコか」「美人でもやっぱり黄色いね」「臭うかな」
さんざんの評価は男子からだ。
「静流先生がっかりだな」「ものすごく不潔だよ」「超下品、あーぁ・・・」
思い切り静流の好感度は下がってしまった。
静流はあらん限りの声を上げて「君たち向こうに行って。見ないでよぉ」
誰もやめない。前に群がるようにしてスマホで写真を撮りだした。
(羽純)「ああ、ダメえ、やめてよぉ」
ヤジの中に「もっと飛ばせ」なんていうのが起きた。
「羽純やるじゃん。静流先生よりよく飛んでるぞ」
「恥ずかしいこと言うな!」と、彼女は真っ赤になって叫ぶが事実である。
羽純のが一番遠くまで飛んでる。その次が静流。そして詩音の順。
いやそんなことよりも早く止めないと、さらに面倒なことになりそうだ。
しかし意に反して「ああ、だめだ止まらない。あ、あれは!」
入口のところに立っている男、背広でネクタイまでしているが、ムジナ男だ!
彼はニヤリと笑うと出て行った。
(静流 羽純 紫苑)「あいつ、やっぱり生きていたんだ!」
突然、雷のような怒声が起った。
「あんたたちなにやってるんですか!」
副校長が真っ赤になって怒鳴っている。
生徒たちは、彼の剣幕を見て、スススと後ろに引き下がった。
一瞬で周りの騒ぎが静まってしまった。
恐れていた一番面倒な事態が起きてしまった。
しかし・・・止まらない。なぜか首から下が言うことを聞いてくれない。
今までに見たこともない副校長の剣幕を見て3人は「さすがにこれはやばいぞぉ」と思った。
思うには思うのだが、シャーァと、見事な放物線はまだ飛んでいる。
勢いがまったく減らない。
(静流)「先生、あの、違うんです。これは、これはですね・・・」
必死に言い訳をしようとするが、彼は恐ろしい目で睨みつけながら、
(副校長)「さすがにこれは懲罰ものだな。なんてことをしてるんです」
(静流)「と、止まらないんです。本当に・・・」
(副校長)「ふざけるな! 初月先生、すぐやめなさい。生徒たちの前ですよ。やめろといってるんだ!」
静流たちは泣き声になりながら、
(静流)「止めたいけどダメなんです。訳が、事情が、事情があるんです」
(校長)「何が事情ですか!」
校長や指導主任も近寄ってきた。
怒ってる怒ってる! 一目見てわかるほど怒っている。
(校長)「恥ずかしくないんですか。こんなはしたない姿で」
(静流)「いえ、そのぉ・・・ごもっともです」
(校長)「初月先生。普段の勤務態度や素行を考慮しますとね・・・」
(静流)「勤務態度? 素行? え、はい、なんでしょうか?」
恐る恐る聞くが、校長の言葉は容赦なかった。
(校長)「教師の資質としてはきわめて不良です。今月限りで退職してもらいますね。
風紀を乱すにもほどがある。これじゃ軽犯罪並じゃないですか。
それから木之元さんと峰霧さんは、一応事情を聴きますが退学、情状酌量しても停学は覚悟しておく事。いいですね」
「えーっ! そ、そんなぁ!」と、3人は叫ぶが、校長の言葉をバカにするようにおしっこは止まらない。
(校長)「いいかげんに、放尿をやめなさい!」
(静流)「違うんです。先生聞いて下さい。きちんと説明します。理由があるんです。お願いします!」
(校長)「聞きたくありません。ここまでやっておいて言い訳は見苦しいだけですよ」
(静流)「だってだってこれは、すべてムジナがやったんです。ムジナの幻術なんです」
(校長)「は? ムジナ? なんですかそれは?」
こうなっては仕方がないと、3人は必死になって今までの説明をする。
している恰好のままで・・・
校長はフウと息をして、
(校長)「それじゃ、今回の一連の件はすべてムジナが悪いわけか。それじゃ勘弁してあげましょうかね」
3人は笑顔になり「本当ですか?」
(校長)「ええ仕方がないです。
でもそれだと、あなたたちは、いえスーパーガールはムジナにあしらわれて負けたってことですよね。
それでいいんですか?」
(静流)「え・・・何で、なんで先生はスーパーガールがあたし達って知ってるの・・・」
ドキリとした。顔が青くなっていく。
ハッと気がつくと・・・
まだ夜である。月も
煌々と輝いている。3人は草むらの中に伏せたままである。
ムジナを見張り始めた時から、さほど時間は経っていないようだ。
しかしボトムのあたりはビショビショになっている。
目の前にムジナ男が立ってニヤニヤしている。
(ムジナ)「どうだ俺様の幻術は。ま、この勝負俺の勝ちだな」
3人は泣きそうな顔になって、ようやく立ち上がった。
(ムジナ)「ああ、面白かったな。昔はよくこんないたずらをしたもんだが。
さっきも言った通り、俺は血を見るのは嫌いだ。だから、これでおしまいにしてやる。
自由になったし、奥山に行ってしばらく休むことにするか」
「・・・・・」
3人は言葉が出ない。
(ムジナ)「それじゃな。あ、遊ばせてもらった礼に教えてやる。
お前たちを狙っているのはドラコメソッドのツバーンだ。
気をつけるがいい。あいつは本気でお前たちを抹殺するつもりだぞ。
それもえらく残酷な方法でな。
俺も人をだますが、あいつのやり方は
狡猾すぎて好かん。
ま、十分用心するこったな。それじゃ生きてたらまた会おう」
そう言って消えてしまった。
「負けた・・・」
これ以降、静流の学校では怪事件は起きなくなった。
ムジナの言ったことは本当であったようだ。
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