解呪のやり方 その1
2年C組の教室。
朝っぱらから、上杉康伸、倉橋怜雄、仲本俊二の3人が騒いでいる。
「やかましいな! あいつら何騒いでんの?」
俊二が手に何か持って振り回している。
それは・・・万歳の恰好をした女性のぬいぐるみだった。
「なんだ、ぬいぐるみじゃないの!」
目ざとく見つけた北浦彩名はツツーと近づいていって、
(彩名)「ちょっとさ、あたしにも見せてよ」
手に取って見てみれば・・・
いかにもほんわりとした作り、和やかな感じにできあがっている。
(彩名)「えぇ! わぁ、かっわいい。あたしもほしいなぁ」
彼女の声を聞いた女子数人が群がってくる。
(由紀)「これどうしたの?」
須藤由紀が康伸に聞くと、
(康伸)「取ってきたんだよ。アミューズメントパークまで行って」
(由紀)「あ、もしかしてイバラ姫のUFOキャッチャー?」
(怜雄)「そうだよ」
(彩名)「へえ、こんなぬいぐるみだったんだ」
彩名と由紀は康伸の話にすんなり加わっているが詩音は
疎かった。
(詩音)「イバラ姫・・・のUFO? なにそれ?」
アミューズメントパークの一角にガシャポンやUFOキッチャーの専用コーナーがあるのだが・・・
そこに特別なぬいぐるみマシンが一台あるとか。それのことをそう呼んでいるらしい。
詩音が「なんでイバラ姫なの?」と、聞くと「呪いが掛けられているんだって」と!
(詩音)「呪い?! 何の呪いよ?」
彩名は「知らない」とそっけない返事。
誰もが呪いの話は知っているが、何の呪いとか、何で呪いがとか、そういうことは知らないようだ。
隣で見ていた啓が紗季に話しかける。
(啓)「アミューズメントパークって、あのうわさのあるところだよね」
(紗希)「人間消失の話でしょ。知ってるよ」
(啓)「やっぱりあんたも聞いた事あるの」
(紗希)「それはそうだよ、あたしだって女だもん。怖いよ」
詩音は、今度はこっちの話に加わるべく割り込んでくる。
(詩音)「え、なになに、くわしく教えてよ。女って何よ?」
うわさとは・・・女子1人あるいは女子だけで、そこに行ってはいけないそうだ。
(詩音)「なんでよ?」
(啓)「行方不明になるらしいよ」
(詩音)「行方不明って?」
行ったっきり帰ってこない。言葉通り行方不明になって消えてしまうらしい。
(詩音)「フーン、それなら男なら平気なの?」
(紗希)「さあ、どうなんだろ」
目の前で騒いでいる3人を見ながら、
(詩音:こいつらは男だから平気だったのか・・・な?)と、思ってしまった。
ワイワイやりながら人形を回しっこしていると羽純が入ってきた。
(羽純)「おはよう。あ、ぬいぐるみだぁ。どうしたのそれ?」
(詩音)「イバラ姫のUFOで取ってきたんだってさ」
覚えたばかりの言葉をひけらかしている詩音であるが、
(羽純)「ああ、変なうわさのあるアミューズメントパークの?」
彼女はうわさのことを知っていた。
康伸たちはお金を出しあって
苦心惨憺取ってきたらしい。
「結構お金がかかったんだぞ」と自慢するように言っているが、まわりの反応は賛否様々だ。
「あたしもほしいな」「そこまでしてぬいぐるみがほしかったんだ?」「ウサギやネコならよかったのに!」「でもやっぱりかわいいな」
詩音はどちらかというと否定的。自分だけうわさを知らなかったことが気に入らない。
八つ当たり気味に、
(詩音)「バカみたい。ぬいぐるみ集めの趣味でもあるのかな?」
でも事情をよく知っている啓が否定する。
(啓)「そういう理由じゃないでしょ。おそらくは」
(詩音)「おそらくって? はん、それじゃなんなのよ?」
ぬいぐるみはデフォルメされているが、まるでモデルがいたかのように、変に細かいところが細工されている。
ホクロがついていたり、あざや傷のようなものまであったり。
なによりも・・・・
(詩音)「なによりも何?何よ」
(啓)「ほらほら男子が始めるよ。黙って見てなさいよ」
彼らは「女子は見ちゃダメだよ」と、言いながら人形の服を脱がし始めた。
「うわ、最低」「セクハラじゃん」「よしなよ」「いやらしい」と女子からヤジが飛ぶ。
康伸らは「俺たちが取ってきたんだ。いいだろ」と引かない。
一方男子たちはぬいぐるみに群がり出す。
乗り出すようにして「いや、いいぞ」「やれよ」「見せろよ」とヤジを飛ばしながら盛り上がる。
女子もブツブツ言う割には、誰も本気で止めようとはしない。
本音のところは服の下がどうなっているのか見てみたいのだろう。
ジャジャーン!
ぬいぐるみには、オ〇パイ、そして乳輪、乳首。下の方はかわいい土手と線、つまりワレメまでついていた。
わぁ、かわいいオ〇ンコだぁ・・・
彼らが、わざわざ時間とお金をかけて取ってきたわけは・・・そういう理由のようである。
詩音は「あらららぁ・・・」とあきれていた。
似たような話が学校中でチラホラ起こりだした。
話を聞いて、アミューズメントパークにぬいぐるみを取りに行く男子が増えたのだ。
「怪しからんな。男ども!」
学校側としてはやめさせたいが校則で禁止などにはできないし、「ダメだ」と注意しても、やる奴は隠れてでも取ってくるだろうし。
すこぶるかわいいので、女生徒の中にも出かけていく者も出てきた。
そんなこんなのうちに事件が起きたのである。
数日後の昼休み、屋上で静流たちが話をしている。
(羽純)「D組とF組の話聞いた?」
言葉を引き継ぐように詩音が、
(詩音)「聞いたよ。それで舞花も呼んでおいたよ」
舞花はD組の学級委員である。
すぐに「お待たせ」と、駆けつけてきた。
(詩音)「どうなの舞花。あんたの組から行方不明者が出たって本当?」
(舞花)「あのね、うちのクラスだけじゃないんだよ」
D組の章代以外にもF組の敏江、さらに1年生も数人行方不明になっているそうだ。
舞花の話によれば・・・
D組でもUFOキャッチャーでぬいぐるみを取ってきた者がいたらしい。
章代も見ていてほしくなり「あたしも絶対とってくる」と、出かけて行ったらしいのだ。
行方不明者は、各人知り合いというわけではないが、皆、アミューズメントパークに行ったのは確からしい。
(舞花)「今のところの共通点って言えば、それしかないよ。さらにだよ・・・」
最近起きている女性の失踪事件の行方不明者はすべて、そこを訪れていることがわかった。
(詩音)「かなり怪しいね」
(羽純)「あのぬいぐるみも、なんかおかしかったし」
外見的にはとてもかわいいが、なんで女性器までつけるのだ。子供向けにしては変だろう。
(詩音)「いやら〜しい男向けとか。それともフェチ向けかな」
詩音が茶化す。
羽純は「とにかく、あそこでなにかよくないことが起きているのは確かだよ」と言っている。
(詩音)「偶然じゃないのかな。考えすぎじゃない?」
(羽純)「いや、あたしの六感だよ。どうしても気になるんだよね」
(舞花)「あたしも、少しおかしいと思うわ。偶然にしては出来すぎだよ」
黙って聞いていた静流が「それでどうするの?」
(羽純)「放課後、見てこようかなぁ、なんて思ってるんだよ」
(静流)「そういう事なら1人で行ったら危ないでしょ。施設の様子がわからないし。もし妖怪の仕業だったらどうするの」
(羽純)「でも先生、あたしこういう気になる事が起こると、何も手につかなくなるの」
たしかに静流も少し気になる。
最近の悪人たちの動き、行方不明者の増加。本当は静流自ら行かなければならないのかもしれない。
(静流)「うーん、そこまで気になるのかぁ。そうだね、調べてきてくれるかな」
(舞花)「それじゃ、あたしもいっしょに行こうか」
(羽純)「それは助かるな」
静流は放課後に職員会議があるから一緒に行けない。
(詩音)「あたしも行きたいけど、用事があってどうしてもダメだなんだよ。
でもあんたたち、うわさでは女だけで行ってはいけないってなってるじゃない。気をつけなよ」
(羽純)「わかってるって。なにかあったらすぐ連絡するよ」
そういうわけで、羽純と舞花はアミューズメントパークに出向いて行ったのだが・・・
2人とも行方不明になってしまった。
それどころか、その日のうちに、なんと他に4人の行方不明が出たそうだ。
学内は大騒ぎ。
警察も大がかりな捜査を始めたが、行方不明者の足取りはまったく不明。
何の手掛かりもない。
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