妄想別館 弐号棟


解呪のやり方 その2


「今日で3日目よ!」
新しい情報は皆無である。何の続報もない。
静流と詩音は焦りと不安の気持ちで過ごしていたが、とんでもない情報が入ってきた。
(詩音)「静流、大変よ!」
写真部の後輩、の弟が、アミューズメントパークに行ってぬいぐるみを取ったらしい。        
セーラー服姿、他よりも小柄でメガネをかけていて、とてもかわいかったそうだ。
(静流)「それでどうしたの?」
いろいろいじくりまわしているうちに全部脱がしてしまったそうだ。
だって男の子なんだもん!
(静流)「まぁ、しかたがない子ね。まったく!」
その時に彼は気が付いたそうだ。
(詩音)「セーラー服の裏に岸波舞花と書いてあったそうだよ」
(静流)「えっ!」
いきなりまずい展開になってきた。
(静流)「それで、それで、そのぬいぐるみどうしたの!」
遊びに来ていたどこかの女の子にあげてしまったんだそうだ。もちろん服を着せて!
(静流)「それじゃ、今そのぬいぐるみはどこにあるのか・・・」
まったく不明だ!
(静流)「えーーー! 他に情報はないの?!」
ない! 必要な情報は何もない。余計な情報は多々あったが。
(詩音)「ぬいぐるみが着けていたパンツは香水の良い香りがしたって。彼女お洒落だものな」
(静流)「そんなのどうでもいい事でしょ」
出るとこは出ているメリハリのあるボディ。とても女の子らしかったそうだ。
(詩音)「オ〇パイも土手もおしりも真ん丸だったって。あたしも見てみたかったな」
(静流)「そんなのもどうでもいいの。彼女を取り戻さなきゃ」
とはいっても手掛かりは皆無だ。
(詩音)「舞花はどこかの女の子のぬいぐるみになってしまったんだよ。もう、あきらめるしかないのかな」
(静流)「バカなこと言いなさんな!」
(詩音)「でも『どこかの女の子』だけでは探しようがないよ・・・」
(静流)「とにかく手掛かりを見つけるんだよ。それには・・・」
2人はアミューズメントパークに出向いてみることにした。
彼女たちは、特別な霊能力があるわけでもない。
いつものようにベネチアンマスク、つまりメガネをかけて見回ることにした。
それだけが頼りである。

(詩音)「すごいね。こんなだとは思わなかった」
ゲームやガシャポンなどの販売機が部屋の向こうまで置いてある。
注意しつつ探していると・・・あった!
問題のUFOキャッチャーを見つけた。
うわさ通り特別なUFOキャッチャーマシンであった!
なぜかその機械だけ敷地の一番奥を占拠するように置いてある。
扉まで付いた完全なガラス張りの個室の中にあって、まるで御本尊のように鎮座しているのだ。
(詩音)「変なの? まるで別格扱いだね」
ゲーム機の躯体くたいも、金箔を施したようにキラキラとしている。
(静流)「なによこれ。えらくきらびやかだな」
(詩音)「それに、すごい数だよねぇ」
ぬいぐるみが山のように入っている。
OL風の女性。セーラー服姿の女子中学生。ランドセルを持った女の子もいる。
どれもこれもニッコリと笑った顔ですごくかわいい。
しかし手足を広げた女性ばっかりだ。
(静流)「かわいいけど全部女の子だよ」
男性のぬいぐるみはそんなに需要がないとは思うが、それでも1個もないとはね。
(詩音)「こういうものなのかな。恰好も全部が全部同じで、少し不自然な感じだよね。あれ?」
中をのぞいていた詩音が何か見つけた。
(詩音)「静流見て。あの小学生の女の子の下にあるぬいぐるみ」
上のぬいぐるみがかぶさっていて顔などは見えないが、着ている物には見覚えがある。
いやいや見覚えどころではない! スーパーガールのコスチュームにそっくりではないか!
ガントレットやブーツに入っているラインも赤色だ。
2人は顔を見合わせる。まさかとは思うが・・・
詩音がメガネをはずしてガラスにくっつけてみる。
超がつくほど微弱だが反応があった。
(詩音)「あのぬいぐるみはレッドだよ!」
あわてて硬貨をいれてUFOキャッチャーを始めた。
詩音がやるがうまくいかない。
(静流)「ほら、右。違う前、あーもう、下手だなあ」
(詩音)「うるさいよ。先生は!」
クレーンのアームで中をガサゴソやっているうちに、ぬいぐるみの頭が見えてきた。
予想通りというか、ベネチアンマスクをしている。
やがてぬいぐるみの全体が見えたが・・・やはりスーパーガールレッドそっくりだった。
銀色のビキニアーマー姿に赤いベネチアンマスク!
(詩音)「また失敗しちゃった!」
見かねた静流が「貸してミソ! 今度はあたしがやる」

なぜか静流はうまかった。わずか2回でぬいぐるみを取った。
あきれる詩音であった。
(詩音:この人はいったい何者なんだ!)
くだんのぬいぐるみを手に取ってみると・・・とてもかわいらしいぬいぐるみだった!
いやそうではなくて・・・
20センチくらいの大きさになってはいるが、スーパーガールレッドの特徴をよくつかんでいるぬいぐるみであった。
ちょうど羽純のレッドを縮小したらこんな感じになるだろう。
髪の毛の色も髪型も羽純がしていたボブヘア―だし。
ベンチアンマスクはやっぱりプラスチックでできているようだ。簡単にはずれてしまった。
そして!
ぬいぐるみの顔を見るなり2人は「うぁーっ!」と声を上げてしまった。
思った通り、デフォルメはかかっているが、羽純にそっくりだった。
手足をデーンと大の字に広げて、ニッコリ笑っているぬいぐるみは、
(静流)「どうみても羽純だよね・・・」
ぬいぐるみを揺すったり、叩いたりしてみる。
(静流)「ちょっとどうしちゃったのよ!」
(詩音)「おい羽純、しっかりしろ!」
ぬいぐるみに向かって大真面目に声をかけている2人を見て、周りを通る人たちがクスクス笑っている。
最後は呪文を唱えてみたが・・・変化はなし。元には戻らない。
呪文で変身しないわけがないのだが?
(静流)「やっぱりこれはレッドに似せた人形なのかな」
(詩音)「そんなわけない。反応があったもの」
(静流)「それじゃ、なんで変身しないのよ?」 
ベネチアンマスクがオモチャのようになっていること自体がすでにおかしい。
どうやら強力な妖術か妖力でマスクの効力がなくなっているようである。
もうまちがいない!
舞花も羽純もぬいぐるみにされてしまったのだ。
当然、このUFOキャッチャーに関わる人間が一番怪しい。
(静流)「とにかく聞き込みよ」

「社員控室にでも押しかけて聞いてようか」
と、思っているうちに若い男がはいってきた。
男はキーをとりだし例の機械の蓋を開けると、ぬいぐるみをかき回して数を確認しだした。
怪しいな!
静流と詩音はうなずいて男に近づいて行って、
(静流)「あの少々お尋ねしますが」
男は驚いたように振り返り、
(男)「あ、はい、なんでしょうか?」
(静流)「先日、こんなようなぬいぐるみを入れませんでしたか?」
静流は、自分はその生徒の担任で生徒が行方不明になっていて、こちらに寄っているはずだと説明した。
(男)「なるほど事情はわかりました。でもええと・・・
私は機械のメンテ担当でして、ぬいぐるみの業者については控室の記録簿を見ないとわからないですね。
いっしょに事務室まで来ていただけますか」
(静流)「詩音、あたしが行ってくるよ」
(詩音)「わかった。あたしはもうしばらくここを調べているよ」
静流と男は一緒に出て行った。




- 2 -

*前次#

物語の部屋 目次へ