妄想別館 弐号棟


解呪のやり方 その7


放課後の誰もいなくなった教室。
スーッと女が現われた。誰かを待っているようだったが、すぐに男が現われた。
(㎩)「おう、フライヤー。こいつらを見てみろよ。バラバラにしてやったぜ」
パステルは本懐を遂げた。スーパーガールを倒したのである。
しかも自分のやりたかった残忍な方法で。
(Fr)「なるほど、バラバラだね」
3体とも接着剤で修復されているが体中にひびだらけである。
フィギュアになっても美しかった彼女たちであったが、今や完全に壊れオモチャだ。
(Fr)「物足りない!」
(㎩)「えっ、なんだって?!」
どうやらフライヤーはまだ収まらない様子だ。
静流人形の頭をつかむとグリグリとねじり始めた。
(㎩)「おい何やってるんだ? おい!」
やがて『ボコッ』ともぎ取ってしまった。
親指と人差し指で摘まんでおもしろそうに見ていたが、
(Fr)「フフ、スーパーガールホワイトの首か。お前もこうなってしまってはな。悔しいか。何とか言ってみ」
手のひらに載せられた静流の頭は、ニコヤカな顔でコロコロと転がされている。
(Fr)「残念だったな。もうお前は終わったんだよ」
フライヤーは思い切り握るとキシキシときしみだした。
やがてプラスチックが割れるような『パキッ』と音がした。
握りつぶしてしまったのだ。
粉々になった破片をゴミ箱に捨てて、パタパタと手をはたいている。

(㎩)「おいおい人形の頭がなくなったら困るだろ!」
でも・・・頭はもう・・・ない。
亀裂だらけのレッド、亀裂だらけのブルー、それに亀裂だらけで頭のなくなったホワイト、のフィギュアが立っている。
(㎩)「しょうがないな」
(Fr)「それで、どうするんだ。これ」
(㎩)「しばらくしたら捨てるさ。見せしめのためにもうしばらく置いておこう」
これを見ていると気分が良くなると言っている。
でも・・・
オモチャになったとはいえ、彼女たちは変身したままだ。
フライヤーは不安だ。
(Fr)「人形が元に戻るってことはないのかい」
男はフフと笑いながら、
(㎩)「ベネチアンマスクの超能力は、ツバーンの薬のために無力さ」
つまりいくら「変身の呪文」を唱えても復元しない。
(㎩)「変身の呪文では戻らないけどな。実はあるんだよ」
(Fr)「え? あるのかい。まずいじゃないか」
(㎩)「大丈夫だって。一つ目は俺が術を解くこと」
(Fr)「まあそうか。で、他には」
(㎩)「俺を倒すこと」
(Fr)「まあ、それもあるか。他にもあるのかな」
(㎩)「実はな、とってもロマンチックな方法なんだよ。でもな、それは、俺を殺すよりも難しいよ」
(Fr)「どんな?」
男が説明しているが、女はそれを聞いて納得した。
(Fr)「なるほど、そんな事起きないか。もう3人が元にもどることはなさそうだな」
フライヤーは首をかしげる。
「でも何でそんなことを解呪の方法にしたんだよ。面倒くさい」
呪術をかけるには、必ず解呪の方法を一つ作っておかなければならない。
ロマンチストの彼は、考えた末にこの方法にしたのだった。
「名付けて『イバラ姫の人形化』。な、ロマンチックだろ」
「なるほどねえ。あんたらしいか」
それがいつの間にかイバラ姫のUFOキャッチャーになったのだろう。
(㎩)「さてそれじゃ。アミューズメントパークに戻るか」
パステルは、また女性狩りを始めて資金をかせぐつもりらしい。

さてさて終章であるが・・・
最近では『奇跡は起きるものである!』ではなく『奇跡は起こすものである!』に、かわってきているとか。
さておき奇跡が起きた。
フライヤーとパステルが絶対にありえないと思っていた方法で。

二日後、黒板の横に飾って(晒して)あった人形は、教室の後、清掃道具箱横の見えにくいところに置かれていた。
男子の誰かがやったのだろう。
衣服は全部はぎとられて、体中にいたずら書きもされている。
こうなっては、さすがに風紀上見える所には置けない。
女子はあきれるが、しかし静流の許可なく勝手に捨てるわけにもいかずそのままになっている。
その次の日には、偽の静流も来なくなった。羽純と詩音は3日間欠席。
そして・・・
「今日も羽純ちゃんはこなかったな」
風邪が治って休んでいた大崎道成君である。
彼は放課後まで残っていた。誰もいなくなると人形に近寄って行った。
「羽純ちゃん・・・」
ボロボロのベネチアンマスクがとれてしまった人形は羽純そっくりだ。
しばらく見ていたが、
「やっぱり似てるよな」
そして・・・
ひそかに何かやっていたが、やがて出て行った。

夜になった。
突然、あたりが光り出して・・・
ボスンと音がして、レッドのフィギュア人形が落っこちた。
床に落ちたレッドのフィギュア、まだバラバラだが、元の大きさに戻っている。
やがて・・・
レッドは、「あ、あたしは、痛てててて!」
ボッと炎がいくつか灯り、空中を漂いはじめた。
人魂のようになっていたが、やがて一つになって人間の形になった。
「ふう、元に戻れた」
と、レッドが立っている。
体をさすりながら、ブルーとホワイトのフィギュアを見ているが、
「ひどいなこれは」
全裸で性器や顔に誰かの名前やいたずら書きがされている。
ホワイトに至っては頭がない。
「あー、やっぱりあんたたちはこのままじゃ戻れないんだね」
2人とも呪文は解けていない。
「だめだな。これは」
やっぱりパステルが生きているかぎり術が効いているらしい。
となると、急いでやるべきことがあるはずだ。
「よし」と言って、彼女はスーッと火の玉になって、出て行った。

向かったところは・・・例の場所である。
いた!例の一区画内で男が人形に変換したフィギュアの数と今日の収入を確認している。
(㎩)「今日も、まあまあだな。明日は、もう少し・・・」
(R)「ずいぶん儲けてるじゃないのよ!」
(㎩)「う、誰だ!」
男の衣服に焦げ跡がついている。
(㎩)「うわ、なんだこれは?」
(R)「ナニって、スーパーガールレッドの拘束技だよ。もう逃げられないよ」
(㎩)「レ、レッドだって?どうやって生き返った!」
(R)「恥ずかしくて言えるか!封印!」
ウヮーと叫んで男は燃え上がり・・・消えてしまった。
完全に油断していたパステルは封印された。
同時にフィギュア機械も消えて、人間に戻った女性たちが倒れてる。
たぶんホワイトとブルーもスーパーガールに戻っているだろう。
彼女たちは変身していたし、パステルさえ倒せば術が解けて再生しているはずだ。
やってきた警察に事情を説明し終えると「もう大丈夫でしょう」
レッドは去っていった。

いつもの場所で3人が話している。
(詩音)「どうやって生き返ったの、あんた」
レッドが生き返ったことにより2人も生き返れたのであるが、理由がわからない。
(羽純)「さあてね」
羽純は真っ赤になってシラを切りとおす。
そして逃げるように行ってしまった。
(詩音)「あ、ちょっと待ちなよ」
(静流)「どうしたんだろ?」
トロい2人にはわからなかった。

しばらくの間、道成と羽純は顔をあわせると、赤くなってなんとなく顔を背けている。
しかし勘のいい啓や志穂はなにか気がついたようだ。
(詩音)「教えてよ!」
(志穂)「あの2人結構似合っていると思うよ」
(啓)「そ、どっちも片思いと思っているらしいけどさ」
状況を考えると実は相思相愛らしい。
(詩音)「じゃあ告白すればいいじゃんよ」
(啓)「バカ、タイミングが大事だよ。TPOでしょ」
あんたみたいに『がっつく』と失敗すると言っている。
(詩音)「なんだよそれ、失礼な!」
あの時教室で何があったんだろ。
ここまで、考えて「あ」と思った。
イバラ姫のフィギュアって言われているんだっけ!
呪いが解けたってことは、道成はレッドフィギュアの人形に・・・




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