新生の彼女たち その2
ちょうど同じ頃の出来事だ。
まったく別のビルの地下室で、数人の女性が床に倒れている。
いずれも美しい女性たちである。
その周りには・・・
彼女たちを取りかこむように薄気味の悪い男たちが立っている。
男たちはしゃがみこんで、女の口に手を当てる。
すると・・・
口から人魂のようなものが出てくる。
人魂は逃げようとするが、
「逃げようったって無駄だ」
男たちはすばやくつかまえて、昆虫の観察ケースのような容器に入れている。
これは魔力を持った特別性の容器であり、中に入れられた魂は、もう外には出られない。
男たちは奪魂鬼。妖怪である。
机の上には、そのケースが数個置いてあり、中では人魂がフラフラと飛んでいる。
「おい、女の体を保管室に運べ」
うなずいた数人が倒れている女を奥の倉庫に運んでいく。
倉庫の中は、5段ベットが奥まで並んでいて、大勢の女性が横たわっている。
この意識を失った女性たち、もちろん魂の持ち主だったわけである。
彼女たちは仮死状態。
死んでいるわけではないが、魂を抜かれているので、このままでは一週間も持たないだろう。
しかしこのまま死なせてしまってはもったいない。
最近では、この体に別の式神を入れて、操る事業なんていうのも流行っている。
「
丁寧に扱えよ、高く売れるんだからな」
用済みとなった女の魂、意識や生前の記憶はもう不要だ。
この妖怪はこれから魂を食べようとしているのだ。
「へへ、これはうまそうだ」
「あれおい、なんか寒くないか」
「おっ! あれはなんだい」
ドアのすき間から真っ白い冷気が入ってくる。
「おいおい、一体どうしたってんだ」
1人がドアを開けたとたんに「グワッ」と、殴り飛ばされた。
男は凄い音を立てて、机と一緒になってひっくり返る。
「誰だ!」
残りの男たちが立ち上がり構える。
入ってきたのは、スーパーガール、ただし白いベネチアンマスクをつけている。
「あ、きさま何者だ」
男は魂封じの糸を飛ばしてきたが、彼女は顔を振って『フッ』と、口笛のような息を吐いた。
たちまち、糸は凍り付いて
脆くも砕け散った。
(W)「スーパーガールホワイトと言います。よろしくね」
今度は彼女が、言うより早く回し蹴りを喰らわす。
「ゲフ」と泡を吹いて2人一緒に吹っ飛んだ。
後の方でケースを持ちだそうとしていた男が叫んだ。
「あれっ、ない!」
いつの間にか、ケースに入れてあった魂が、いやケースごとなくなっている。
「どうしたっていうんだ。どこに行った?」
目の前の女は腕を組んで立っている。
ニヤニヤしながら見ているが、あきらかにこの女の仕業ではない。
「おい気をつけろ! 部屋の中にまだ誰かいるぞ」
感覚を研ぎ澄ませてみれば、確かに何者かがいる気配がする。
しかし部屋で格闘している敵はホワイトしかいない。
「誰だ出てこい!」
(影)「ここだよ」
いきなり男が殴られひっくり返った。
「いったいどこから、あっつ、グエェ」
2人目も倒された。
残った2人も背中合わせになってかまえるが、
「どこだ、どこにいる!」
(W)「どうでもいいでしょ、あんたたちはもう終わりだもの」
ホワイトは手を振ると、真っ白な霧のようなものを噴霧した。
「あー、つ、冷たい」、
冷たいだけではない。まとわりつくような感じがする。
「なんだこれは?」
(W)「それはね、妖怪を封印する力のある冷凍ガスだよ」
男たちは白く凍り付いて行く。
同時に力がどんどん抜けていく。
「あ、あ、消える。助けてくれぇ」
男たちは封印されて消滅してしまった。
(W)「これでよし、片付いたね」
ホワイトが「出てきて手伝ってよ」と、言うと、
「はい」と、声がして、
倒れている女性たちの影の中から誰か飛び出してきた。
出てきたのは、黒いベネチアンマスクをしていた。
(W)「この魂を元に戻さなきゃ」
(影)「まかせてください」
黒は手をかざしてなにか呪文を唱えていたが、すぐに女性は息を吹き返した。
(W)「まったく、悪質な妖怪がはびこっているな」
すぐに警察を呼ぶと
(W)「それじゃ後始末と女性たちの保護をお願いしますね」
ホワイトは去っていった。
そしてブラックもすでにどこかに消えていた。
ホワイトは建物の外に出てくると、自分の影に向かって、
(W)「あんたもだいぶ強くなったね」
(影)「まだまだですよ。わたしは」
ホワイトは冷たい攻撃を主とするスーパーガールである。
そして、黒いのは異次元に関する能力を持っているスーパーガールであった。
(W)「でも、あんたはどちらかというと、守りに特化した存在だから・・・」
影の彼女はあまり戦闘には向かないし得意ではない。
悪辣な連中の前には、できるだけ出てこないでほしい。いや存在自体を隠すような行動をとってほしいのだ。
と、ホワイトは言っている。
(W)「あんたは切り札的な存在なんだからさ」
それにまだ時期尚早とも考えている。
ブラックはずいぶん若そうだ。
(W)「修行と経験を積んでからだよ、本格的な戦闘に加わるのは」
(影)「それはわかっていますが・・・このままじゃあ・・・」
悪人たちの所業がひどい。
特に女性の誘拐事件は日常茶飯事だ。
(影)「ところで、あたしたちとは別のスーパーガールがいるみたいですね」
確かにそんな噂も耳に入っている。
(W)「そのようだね。敵ではないみたいだけれど・・・味方になってくれるのかな?」
(影)「どこかで出会うかもしれませんね」
(W)「そうだね。まあじっくりやりましょう。それじゃ今日は帰ろうか。出てきて変身を解きなよ」
ホワイトの影の中から飛び出したブラック。
彼女はホワイトに比べるとずいぶん小柄な女性だった。
2人は変身を解いて帰っていった。
彼女たちもベネチアンマスクの形態も変化していた。
ホワイトは指輪、ブラックは・・・なんと銀縁のメガネであった。
次編『その後の世界』に続く
- 2 -
*前次#
物語の部屋 目次へ