「あの時の純可愛かったなぁ〜。今もだけど」
『…………五条先輩、なんですかこの写真…』
「なにって、酔った純とした時の写…」
『東京着いたらまじで一回話し合ってくれます?』

公共の場であるため声量と爆発しそうな怒りを抑えてはいるが、今すぐにでも胸ぐらを掴み怒鳴り上げ、殴ってやりたいと純は思った。怒りに満ちた険しい表情で五条の携帯からあられもない姿を晒している自分の写真を次々に消していく純は、10年近く時が経つが、今の今までこの写真の存在を知らなかったことに恐怖を覚えた。「勝手に消すなよ〜」と不服そうに金萬を頬張る五条はいつも通りマイペースに構えていて、純の不満は募るばかりだ。

「まあ、僕も若くていろいろ多感だったのよ。若気の至り」
『そんな便利な言葉で誤魔化さないで下さい。引っ叩きますよ』
「おーコワッ。根に持つタイプはモテないよ?」
『いやマジで五条先輩にだけは言われたくないです』
「それは下戸な僕を心酔させたお前が悪い」

最後の一つを食べ終えて、空の紙袋を放り投げてきた五条に『何様?』と舌打ちを一つ。機嫌良さげに長い手足を伸ばし体をほぐしながらそれを見事にスルーすると、軽蔑するような視線を送ってくる純の左腕に右腕を絡ませ手を握った。リラックスモード全開な息を一つ吐いてから、肩に頭を預けて目を閉じる。

「じゃ、僕一眠りするから…着いたら起こして」
『触らないで。寝るなら離れて寝て下さい』
「やだ〜」
『(あ"ーーっ!!イライラするぅぅっ!)』
「あ、あとそれ」
『…なんですか…』
「写真。全部バックアップ取ってあるから消しても意味ないよ」
『…え…』
「大事な思い出だからね」

猫のように擦り寄って来て自分勝手に寝息を立て始めた五条の行動に意見する間も無く会話が強制終了する。『おい…』と肩を揺すってもわざと無視してるのか起きる気配はなく、純は深海のように深い溜息をついた。

『ホント自分勝手…全く…』
「…ねぇ純?」
『起きてるならシカトしないで下さいよっ』
「大好き」
『…なっ…』
「ちゃんとそばにいてね」

繋がれている手をギュッと握ってきた五条に対し、純は『ずるいなぁ』と呟いた。


*pointed in black-end
(Don't leave me!)



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