20XX年.6月初旬。

「おーい、ナ〜ナミ〜ン」
「…その呼び方やめて下さい。七海です」
「髪型もツッコミも固い奴だな。一人?」
「(絡みたくない)…ええ、まあ。何か用ですか?」
「ちょっと聞きたいことあってさ」
「私に?」
「そ。お前の同期の橘華純について」
「……純のことを?」
「そいつさー、どんな奴?」

この年、関東を中心とした都市部での呪霊発生件数の増加にともない呪術師たちは各所で対応に追われる日々を過ごしていた。それはここ、東京都立呪術高等専門学校の生徒たちも例外ではない。現場から現場へと駆け回る毎日を送っていれば、当然生徒同士の交流の場も減る。そのために、面識がないのは仕方がないことだった。

「一言で簡潔に言って。可愛いか美人か巨乳か」
「最低ですね貴方…」
「そりゃあ男の子だもん」

わざとらしくえへっ☆と片目をつむってウィンクした五条の行動に、むっと表情を歪めた七海。この手の人間とはあまり話をしたくないのか、嫌そうな態度を隠さず渋々口を開いた。

「明るく素直で良い方です。とてもタフな女性かと」
「顔は?」
「…(イラッ)」
「俺が好きそうなカンジ?」
「噂には聞いてましたけど、本当に性格悪いんですね」
「褒めんなよ」
「褒めてません」

自覚があるのに顧みる気はないらしく、当の本人は笑っているだけ。こんな人間になんの罪もない同期が目をつけられてしまうのは可哀想だなと思いながらも七海が言葉を詰まらせた、その時だった…。

「純は…」
「純は可愛いですよ!五条先輩!」

五条の背後から、灰原雄がひょっこり顔を出したのは。

「へー」
「灰原っ、いつの間に…!」

いつから二人の会話を聞いていたのかは分からないが、五条の嫌味を物ともせずに持ち前の笑顔で跳ね除けた灰原に二人の視線が集中する。

「お前も橘華と同期だっけ」
「はい!仲良いですよ!七海と三人、僕ら親友なんで!」
「ちょっ、灰原っ…」
「七海、先輩の質問にはしっかり答えないとダメだよ」
「いや、この人の質問には明らかな悪意が…」

必要以上に個人の情報を話すのは良くないと、七海が灰原の肩に手を置き待ったをかける。

「先輩はどうして純のことを?」
「見込みあるから面倒見ろってさ。俺の担任が」
「あなたが直々に修行をつけるということですか?」
「そ。だから可愛いか美人か確認しにきた」
「わぁっ!僕も夏油先輩に直接修行つけて欲しいなぁっ」

対照的な表情を浮かべている七海と灰原にいたずらっぽい笑みを浮かべて背を向け歩き出す。歩幅の広い五条が意外にも早く遠ざかっていくものだから、七海が咄嗟に声をかけた。

「純はそうゆう判断基準を嫌いますよ」
「ご忠告ど〜も〜」

ひらひらと片手を振りながらそう言った五条が、七海と灰原に振り返ることはなかった。


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