仙波リクハ。
木ノ葉のくの一。

今や忍の世で誰もが知るその名前は、オレの幼馴染みの名前だ。うちは一族ではない彼女とオレが何故幼馴染かと言えば、もともと親同士の仲が良かったから。オレが先に生まれて、彼女はそのニヶ月あと。真夏の猛暑日に生まれてきたと話で聞いた。赤子の頃の記憶は乏しいが、常に隣に彼女が居たのは覚えてる。
どんな時でも一緒にいた。

オレに弟ができた時も、九尾が里を襲った時も。
アカデミーのクラスも班も、中忍試験も同時合格。

ずっと一緒で、ずっと隣に居たせいか、オレはリクハの存在がずっと隣にあるものだと思っていた。人がなんの疑いも持たずに呼吸を何度も何度も繰り返すのと同じように、彼女の存在はオレの中の一部になっていた。どんなに辛いことがあっても、苦しいことがあってもリクハの笑顔がそれを忘れさせてくれた。それはきっと、オレだけに限ったことではないんだろうなと、彼女と関わる人間を見ているとよく分かる。
本人は自覚なんてしていないんだろうが、リクハは自然と、周りの人間を魅了していく不思議な力を持っているヤツなんだ。救われてるのは、何もオレだけじゃない。里のみんなが、リクハのことを愛してるんだ。

「……」

だから頼む。
お前が無事でいてくれるのならば…オレは命など捨てる覚悟だ。自分勝手で悪いとは思うが、オレはお前の居ない世界では生きている心地がしない。

しばらく走っているせいか、心臓がうるさい。
頭を鈍器で殴られた時のような痛みがする。
一刻も早く、リクハのそばに行って安否を確認したい。
だから、オレが行くまで、お前のそばに行くまで…

「絶対に死ぬな、リクハ…」


彼女は僕の幼馴染
(オレの特別は、お前だけだと言うのに…)



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