窓から差し込む陽の温かさで目を覚ました。ゆっくりと上半身を起こして視線を入口側に向けるとすでにイタチの姿なくて、"相変わらず早起きだなあ…。"とあくびを一つ。その拍子に頭痛がして表情を歪めた。仕事をする前に薬を飲もうとベッドから出てクローゼットを開く。着替えの服を取り出し鏡の前に立ったリクハがシャツのボタンに手を掛けた、その瞬間。

『え…』

首筋に違和感を感じて数秒フリーズ。すぐに長い髪を退け確認してみると、見えるところだけでも数カ所に、所有印というやつがつけられている。ちょっと待てよ、と慌ててシャツのボタンを外し恐る恐る鏡に映る自分の体を見てみると…、

『…(こんなところにもついてる…)』

いたるところに赤い花が咲いていた。

「リクハ」
『…わっ!!!』
「目が覚めたんだな」
『お、おおおはようっ…イタチ』
「ああ。おはよう」

鏡の前、自分の上半身を唖然と見つめていたリクハに声をかけると肩をびくっとすくめて振り返った。反射的に体を隠し苦笑いで誤魔化すも、昨日の記憶が曖昧になっているせいで困惑しているようだ。一体誰が、この所有印を付けたのかと。

『あの…イタチ?』
「なんだ」
『私昨日、無事に帰ってきた…よね?』
「……覚えてないのか?」
『え"っ…』

一瞬で曇ったイタチの表情に、鈍器で後頭部を叩かれたような衝撃が走る。覚えてないのか?ってなんだ。なんでそんな表情をするんだ、私はなにをしでかしたんだ!と自問自答するが答えは返ってこない。また迷惑をかけてしまったんじゃないかと冷や汗が頬を伝った。

「……フッ…」
『え、な、なに!?…なんで笑うのっ?』
「本当に覚えてないんだな」
『なにをっ…?あの、私昨日…お酒飲んで…それで』

ぎゅっと握っていたシャツをさらに強く握りしめると、苦笑いを浮かべながら歩み寄ってきたイタチがその手を無理矢理掴み、リクハの所有印だらけの上半身を見下ろした。突然のことに驚き抵抗しようとしたが、イタチがあまりにも穏やかな笑みを浮かべたものだから行動には移せず恥ずかしくて目を泳がせた。

『ちょ、あのっ…』
「安心しろリクハ」
『えっ?』
「これを付けたのはオレだ」

白く柔らかな肌のいたるところに付けられた赤に、状況がイマイチ理解できていないリクハ。だが徐々になにをしてこうなったのかが記憶の底から蘇ってくるような感覚がして、昨日の夜の行為やそこまでに至った経緯が一気にフラッシュバックする。
目の前にいるイタチと目を合わせることができず、顔を隠したいが両手を掴まれているからそれも叶わない。そんなリクハの反応に愛おしさを感じて体を軽々持ち上げると、今しがた離れたばかりのベッドへ座らせやんわりと押し倒した。

『イ、イタチ…?あの…』
「お前が誰のものか少しは自覚できたか?」

イタチの問いかけにうんうんと大袈裟に頷くリクハを見つめながら、優越感に浸る。美しく、愛らしい彼女を独占できるのは自分だけ。リクハの髪を撫で、頬を撫で微笑むと、安心したのかホッと胸を撫で下ろしたようだった。

『あの、ごめんね…。嫌な思いさせて』
「もう怒ってないって言っただろ?」
『そうだけど、でも…迷惑もかけたし』
「反省してるならそれでいい。次は気をつけろ」
『もう絶対!絶対悪酔いしません』

本来ならもう飲むなと言いたいところだが、仲間との楽しい時間まで制限するつもりはないしシスイが今回のことでより上手く根回しをしてくれそうな気がしていた。

「くすっ。そんなに気を落とすな」
『だ、だって…私イタチの婚約者としてちゃんとしなきゃいけないのに…お酒で酔って騒ぎ起こすなんて』
「オレじゃなく、シスイに怒られる覚悟はしとけよ」
『う"っ……そうでした』

昔からとことんリクハに甘いから、結局は全てを許してしまう自分を嘲笑う。けれどそれほど、なにをされても許せてしまえるほど、リクハのことが愛おしくて仕方がない。イタチが触れるだけのキスをして体につけた所有印をなぞると、体がぴくりと反応して甘い声が漏れた。

「リクハ…愛してる」

そう囁き深いキスを送り首筋に舌を這わす。リクハの脱ぎかけのシャツを二の腕あたりまで下ろし胸の頂を口に含むと、もうこの熱を冷ますことはできない。

『ちょ、あ…っ…まっ、て…イタチッ…』
「リクハ…」
『んっ…あっ…』

両手を押さえて左右の胸を交互に刺激する。夜の行為も雰囲気があっていいが、朝…こうしてリクハの全てがよく見える中で交わす愛情も悪くない、そう思いながら胸元に赤い花を咲かせた。

『や、っぱり…まだ…んんっ…あっ』
「ん?」
『怒って…る…っ?』
「いや。怒ってはいない」
『じゃあっ……』
「怒ってはいないが…」

胸元から顔を離し頬にキスをしてから片手を下着の中に滑り込ませると、リクハの体が大きく反応した。

「…気は済んでない」
『ぇ…っ?…んっ…あっ…イタ、チ…』
「だから今日の夜も、覚悟しておけよリクハ」


してるだけじゃ、どうにも足りなくて
(狂ってしまいそうな程、お前に溺れてる)


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