「煉獄さん、今日も灯華さんにお花を?」
「無論だ!約束だからな!」
「では、私もご一緒していいですか?」
共同任務の帰り道、昼間から賑わう町を並んで歩く胡蝶と煉獄。任務終わりの彼の行き先は柱であれば皆が周知していることで、胡蝶は穏やかな表情を浮かべ同行の許可を求めた。
「うむ!俺は構わない!好きにするといい!」
「ありがとうございます」
煉獄が意気揚々と向かうのは、屈強な男の見た目には似つかわしくない花屋だということを胡蝶は知っている。今でこそ理由を知り煉獄の誠実さに称賛しているが、何も知らされていなかった頃は何度も何度も自分の目を疑ったものだ。
無理もない。草花などその燃えたぎる闘志で焼き切ってしまいそうな男が、任務から帰って来る度に綺麗な花束を大事そうに抱えているのだから。
「灯華さん、お体の具合はどうですか?」
「今のところ変わりはない!元気にしている!」
「そうですかっ。それは本当に良かったです」
その返事を聞き、心底嬉しそうな笑顔を浮かべた胡蝶。灯華の存在を知らせてから、胡蝶に限らず他の柱たちまでもがなにかと気にかけてくれている。煉獄はその思いにとても感謝していた。
「胡蝶!」
「はい?なんでしょう」
「灯華への気遣い、心から感謝する!」
腕を組みうんうんと一人頷いている煉獄を横目に、胡蝶は一度だけ会ったことのある灯華という女性を思い出していた。
『胡蝶様は、花はお好きですか?』
「ええ。蝶には花が欠かせませんから」
『ふふっ。ではもしよろしければ、これを』
「…押し花の、しおり、でしょうか?」
『はい。胡蝶蘭を使って作りました』
とても綺麗な貴女のためにある花だと思いましたので。
そう言った時の灯華の優しさは、誰もが持ち合わせているような代物ではなかったと今でも思う。どこまでいっても広がる純心を持ち、汚れを知らず、真っさらで、美しい。だがそれ故に、とても儚い。
誰かが守ってやらねば簡単に壊れてしまうような女性だった。
「お礼でしたら、灯華さんに伝えて下さい」
「??」
「いつも鬼殺隊の炎柱がお世話になっていますと」
「…!」
くすくすと肩を揺らしながら冗談混じりな本音を口にすると、煉獄は大きな目をカッと開いて「違いないな!」と声を張り上げた。昔から体の弱い彼女を助け、守ってやるのは男である自分の役割だと思っていた。だがいつの間にか彼女に癒され、生きる原動力を注ぎ続けてもらっていたのは自分の方だったと気がついた。
「彼女のような清い心を持つ人間は稀です。その様な方が煉獄さんのそばに居ることは、私たちにとっても喜ばしいことですから」
「胡蝶…!」
「あ、ほら、あそこに花屋がありますよ。何を買うかお決まりですか?」
穏やかな笑みを浮かべながら少し先の露店を指差す胡蝶。灯華と出会っていなければ、花屋などとは無縁だったとつくづく思う。
「うむ!!二日前から決まっている!」
「え、そんなに前から?」
「灯華の一番好きな花にしようと思う!」
「まあ、それは素敵ですねっ。どの花ですか?」
「任務に発つ際に見た、彼女の笑顔を見て決めた!」
「惚気ですね、ふふふ。で、どの花なんですか?」
花屋の前で立ち止まり、腕を組み仁王立ちしている煉獄に笑顔で問いかける。惚気を惚気とすら思っていないであろう炎柱は、大きく頷き目当ての花をビシっと指さした。
「店主!そこにある百合の花を全て譲って頂きたい!」
「煉獄さん、それは流石に灯華さんに迷惑です」
君の好きな花をありったけ
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