「………純…」
『………』

深夜。
腕の中にあったはずの温もりを探して腕を伸ばすと、求めていたものはすぐそばにあった。衣服をまとっていない体を抱き寄せ首元に顔を埋めると、甘すぎない、柑橘系のシャンプーの香りが鼻腔をくすぐり、行為後の余韻が体を撫でた。
そして心の底から愛おしさが溢れ出て、想いが「好き」の言葉となって心の中で囁かれる。

「……純…おやすみ…」

すらりと伸びた左手の薬指には、将来を誓い合った証が輝く。呪いなんてものとは無縁な幸福に包まれながら、五条は深い眠りに落ちる。

『…………』

入れ違うようにして目を覚ました純が、冷めた眼差しで左手を見つめているとは知らずに。



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