「やーい!!化けぎつねー!」

「おまえには気持ち悪いバケモノがついてるって、父ちゃん言ってたぞ!」

「うるせー!バカにすんな!」

「なんだよやる気かよ!!」

「どーせ何もできやしないくせに!」







商店が並ぶ通りから少し離れた森の中、意地悪な子供の威勢のいい声が響き渡った。

今日もナルトは、一人遊んでいただけ。

何をしたわけでもないのにほぼ毎日、多勢に無勢という分のない状況に陥ってしまうのは自分の中にある「化け狐」とか言うもののせいらしい。

それが具体的に何なのかは、今のナルトには見当もつかない。

少年たちの見下すような視線にナルトは拳を握りしめ、悔しさを抑える。

こういったことは初めてではないが、幼いナルトにとっては辛い経験。

体中に貼られた絆創膏や、巻かれた包帯が彼の生活を物語っていた。







「オレに…かまうなっ」

「なんだよ、ともだちいないクセに」

「そーだ!そーだ!化けぎつねー!」

「そんなふうによぶな!オレはそんななまえじゃねぇ!」

「じゃあなんて名前なんだよお前〜っ」

「あはははっ!それ言えてるっ」

「……っ〜」







少年たちは悔しがるナルトを指差し笑い、バカにする。

ケラケラというその笑い声は実に不快で、ナルトの心を容赦なく傷つけた。

ふつふつと湧き上がる怒りの気持ちを抑えながらかわりに少年たちを睨みつけると、案の定反感を買い肩を押され地面に尻もちをつく。

ドサッという鈍い音が響き、視線を上げれば一人の少年がすでに拳を振り上げているところで、ナルトはすぐに来るであろう痛みに備え目をつむったが、その拳がナルトに届くことはなかった。







―ガサッ







「えっ?…うわ!!」

「な、なんだよっ」

「…??」







頭の上の方から聞こえてきた木の枝が揺れる音。

それと同時に少年たちが何かに驚く声が聞こえて目を開けると、二人の足元には手裏剣が刺さっていた。

急いで上を見上げると、そこには不思議な面をかぶった人物が太い木の枝の上でこちらを見つめ立っている。

動揺している少年たちとは逆で、ナルトはポカンと口を開けたまま唖然としていた。







「読みが当たったな、##NAME1##」

『イタチありがとう、任務前にごめんねっ』

「変な遠慮するな。じゃあまたな」

『うん、ホントありがとう。気をつけて』







面をつけた人物の隣に瞬身で姿を現したのは、ナルトのよく知る人物だった。

綺麗な空色の髪が印象的で、面の人物は何か言葉を交わすと瞬く間に姿を消してしまった。

残っているのは彼女だけ。

今の状況が一瞬のことすぎてついていけない。

相変わらずポカンとしていると木の枝から下に降りてきて、少年たちの前に立つ。

ナルトの視界に、見なれた空色が広がった。







『ケンカするなら1対1でやりなさい!』

「うわっ…でた!」

「こ、この人知ってる!##NAME2####NAME1##さんだっ」

『次ナルトをいじめたら許さないからね!分かった!?』

「「う、うわあ〜〜〜〜っ!!」」







年上である##NAME1##の登場に慌てて逃げ出す少年二人。

結局、弱い者を傷つけることしかできない二人の情けない姿を見つめ、##NAME1##は深いため息をついた。

こんな時間があるのなら、忍術の一つでも覚えて欲しいとそう思いながら。







『まったくもう…』

「……ねえちゃん…?」







不思議そうにそう言ったナルトの声に振り返れば、立ち上がり服についた土をはらっているところだった。

首を傾げながら、「どうしてここにいるの?」と言いたそうな顔をしている。

##NAME1##は穏やかな笑みを浮かべると、ナルトに向かって右手の拳を突き出した。







『オッス。ナルト』

「…オッス!##NAME1##ねえちゃん!」







一瞬戸惑ったがナルトはニカッといたずらな笑顔を浮かべ、いつも通りの挨拶をしてきた##NAME1##に駆け寄る。

お互い拳を突き出して挨拶しようと言い出したのはナルトで、これは二人だけの特別。

嬉しそうに##NAME1##の手を取り自然に繋ぐと、先程の怒りはもうどこかに消えていた。







『来るの遅くなってごめんね』

「いいってばよ。ねえちゃんはちゃんときてくれるから」







ニシシッと笑いながらそう言うナルト。

黄色い髪や優しい目元が、随分とお世話になったクシナとミナトを思い出させ##NAME1##は自分を見上げてくるナルトに笑顔を向けた。

##NAME1##がナルトの生存を知ったのは、クシナとミナトが亡くなってしばらくのことだった。

九尾の事件があった後、まだ幼かった##NAME1##はクシナのお腹にいたナルトも一緒に亡くなってしまったのだと思っていたのだが事実は違った。

後に殉職してしまう両親が、まだ赤子のナルトに会わせてくれたのが始まりで全てをサポートすることは難しいが時々こうして、ナルトと過ごす時間をつくるようにしているだ。

初めはナルトも戸惑っていたが、やんちゃで明るい性格も手伝ってか今のような関係になるまでそう時間はかからなかった。







「それよりさそれよりさっ。きょうはなにしてあそぶ?」

『なにしたい?』

「オレ、またあそこにのぼりたい!」

『あははっ。また?飽きない?』

「ぜんっぜん!あそこからのながめ、ちょ〜っきれいだしっ」

『分かった、連れてってあげる』

「やった!」

『でもその前に』

「そのまえに?」

『ケガ、全部治してからね』







目をキラキラと輝かせて喜んでいるナルトの小さな両腕をとり、見つめる。

無数の傷に決してきれいとは言えない手当の仕方。会うたびに減ることも、消えることもない
それに##NAME1##の表情が一瞬曇った。

するとナルトはバツが悪そうにその腕を引っこめようと力を入れ、俯く。






「あ、あのさっ」

『なに?』

「…このまえなおしてもらったばっかりなのに、またケガして…ごめん」







腕を離そうとしないからか、力を入れるのをやめ申し訳なさそうに俯いて謝って来るナルト。

ナルトは、大好きな##NAME1##がせっかく傷を治してくれたのにまた新しい傷をつくってしまったことに対し罪悪感を抱いているようだった。

自分と唯一向き合ってくれる##NAME1##に嫌われてしまうんじゃないかという不安もあるのだろう。

##NAME1##はナルトの目線の高さまでしゃがみ込むと、その小さな体をギュッと優しく抱きしめた。

その行動に少しだけ目を見開くナルト。







「…ねえちゃん?」

『ごめんねナルト』

「なんでねえちゃんがあやまるんだってばよ…?」

『そんな風に思わせちゃって、ごめん…』

「ねえちゃんはなにもわるくねぇじゃん、オレがかってにケガして…そんで」

『ナルト』

「…なに?」







不安そうな澄んだ空色の瞳が、##NAME1##を映す。

今のナルトを見ていると、両親を失った時の自分を見ているようだった。

急に強いられる慣れない生活は辛かった。その日一日の食事さえ、どうしていいか分からなかった。静まり返った広すぎる我が家は、そこに居るだけでお前は一人なんだと容赦なく現実を突きつけられているようで、いつも泣いていた。

心に空いた穴はそう簡単に埋めることはできないけれど、自分にはそれを乗り越えて行ける繋がりがあった。

イタチやシスイ、カカシといった大切な人達との繋がりが。

しかし、生まれてすぐ両親を亡くしたナルトにはそれがない。

三代目もできる限りのサポートをしているようだが、火影というのは個人一人にばかり目を向けることはできない。

##NAME1##はナルトの肩を押さえながら、真っすぐ視線を合わせ口を開いた。







『ナルトは私にとって、弟みたいなもんなんだから』

「…え」

『だから、遠慮も変な気遣いもしなくていいの』

「ねえちゃん…」

『その代わり、たくさん甘えてワガママ言って、姉の言うことはちゃんと聞くこと。わかった?』

「…ねえちゃんっ…。オレってば!ぜったいぜったい、ねえちゃんのいうこときく!」











そこがオレの居場所だから

(鼻水たらして号泣して、ねえちゃんの言葉がすんげぇ嬉しかったんだ)



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