「…………」
水柱・冨岡義勇の継子は師範との約束をよく破る。
それもたまにでは無く、頻繁に。
普通、柱相手にそんな勝手が許されるわけが無い。
が、何度注意を促しても改善する見込みがない。
何故こんなに身勝手なのかと…頭を悩ませるも、結局許してしまう自分がいる。
甘さが原因でなめられているのか、冨岡さんなら大丈夫。
そんな風に思われている気さえした。
「……ア…義勇サン…。…オカ、オ帰リナサイ…」
「…憂凪は何処だ」
任務が終わったら稽古を付けてくれと頼まれたから、こうして急ぎ帰って来た。普通継子なら、稽古の準備を整え師範の帰りを待ち出迎えるのが普通だ。しかしどうだろう。
水柱の継子は道場に自らの鎹鴉だけを残し、一人ふらふらどこかへ消えた。そして彼女の言伝役となり、毎度冷や汗を垂らしながら自分の視線に怯えている鴉が不憫で仕方ない。
彼女の鴉はとても性格がいいから余計にだ。
「……アノ、憂凪ハ…蝶屋敷ニ居マス」
「またか」
「…炭治郎君達ノ様子ガ心配ダカラト…」
「…そうか。分かった」
「…アノォ…義勇サン?」
用件だけを聞き、すぐにこの場から立ち去ろうとする冨岡に鴉が翼をはためかせ近づいて来る。こてん?と首を傾げてその意図を問うと、鴉が遠慮がちに口を開いた。
「…ソノォ、憂凪ハズット、義勇サンノ帰リヲ楽シミニ待ッテマシタ」
「それがどうした。此処にいなければ意味は無い」
「…止メタンデスケド…義勇サンガ目ヲカケテル炭治郎君ガ心配ミタイデ」
「………」
「憂凪ノ主軸ハアクマデモ義勇サンナノデ…」
ドウカ、叱ラナイデアゲテ下サイ。
できた鴉のそんな言葉に、冨岡は本当に小さく微笑んだ。
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