『酷いです。…炭治郎くんたち引いてましたよ』
「…隣にいると約束しただろ」
『え、それは勿論約束しましたし守りますよ!』
「………」
『なんで睨むんですか…』
「俺の話を聞いてないからだ」

足を止め、数歩後ろを歩く憂凪に振り返りジト目を向ける。

「………」
『え、あ…。え?あの、まさか常にって意味ですか??』
「約束を破った穴埋めは仕事で返せ」
『(義勇さんって思いの外ズレてる気がしてきたっ…!)』

白目を剥き面食らっている憂凪を前に、当の本人は首を傾げている。まあ、この間胡蝶から聞いた「嫌われていない」発言にしても、昔から少し…どこかズレていると思ってはいた。

『あまり親しげにしていると不死川さんに嫌味言われますよ』
「……お前が居てくれれば、それでいい」
『………』

憂凪から顔を背けてそう言った冨岡の言葉に、とくんと胸が高鳴りずるい人だなあ…と困ったような笑顔を浮かべた。

「憂凪」
『はい?』

ゆっくりと顔を憂凪に向け、手招きする。
柔らかな笑顔を浮かべて『なんですか?』と歩み寄ってくるそのなんてことのない姿に、たまらなく愛おしさを感じた。

「やはり錆兎の耳飾りは返す」
『えっ??…でも…』

冨岡は表情を変えることなく懐から取り出した小さな包みの中から、雫型の綺麗な耳飾りを憂凪に手渡す。それを両手で受け取りながらも彼の意図が読めなくて、表情を歪めて『いいんですか?』と問いかけた。すると…。

「ああ。ただ…」
『ただ?』
「もう片方の耳に、これを付ければの話だ」
『え……っ』

そう言って、続け様に冨岡が手渡したのは、同じ作りの色違いの耳飾り。雫の色が綺麗な宍色に輝いていて、憂凪の瞳にじわりと涙が溢れてきた。

『義勇さんっ……これっ…』

彼はいつだって、錆兎のことを大切に思っている。
それは生前、錆兎も同じだった。
ぽろぽろと溢れる涙が耳飾りに落ちて、二つの雫がきらりと優しい光を放った。

「俺たちは、ずっとお前のそばにいる」

冨岡の両手が、憂凪の頬を優しく包む。

「必ず守ると約束する…」

…それが、仲間を守り死んでいった錆兎との約束だから。

「これはお前を鬼から守る御守りだ」
『わぁ〜っ!きれいな"耳飾り"〜っ』
「大切に、肌身離さず付けておくんだ」
『うん!錆兎ありがとう!』

幼い憂凪の片耳に光る雫型の耳飾り。
花が咲いたように愛らしく笑うその笑顔に、錆兎と真菰が顔を見合わせ微笑んだ。

「錆兎は憂凪が可愛くてしょうがないのよね」
「お前が一番過保護だろ」
「だって憂凪だよっ?こんなに可愛い子、心配になるよ!」
「ほらな」

年上二人が言い合っている中、付けてもらった耳飾りをわざと揺らすため首を左右に動かす憂凪。しゃらんしゃらんと綺麗な音がする初めての経験に、嬉しくて嬉しくて錆兎の胸に飛び込んだ。『これすっごく気に入った!』と満面の笑みの幼子を前に、錆兎の頬が赤く染まった。

「なあ、憂凪」
『ん??』
「お前のことは、俺たちが絶対守ってやるからな」
「約束よ」
『…うん!私も二人をまもれるくらい、早くつよくなるね!』

それぞれが、それぞれに交わした同じ約束を胸に秘め生きる。
憂凪の手の中で輝くのは、深い青色の雫と、宍色の雫。
まるで自分と旧友を模したようだと小さく笑みを浮かべた冨岡は、大切で、かけがえのない憂凪の唇に、自身のそれを重ね優しく口付けた。


6
(繋がれていく約束が、永遠に続くようにと願いを込めて)


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