閃光


羽化心


名前の雄英進学が決まったのは二年生の夏。その現在人類の考えうる範囲を越えた個性を驚異と感じた上層部は、推薦という形で名前を監視することにしたのだ。当然サーヴァント達も黙って許容するわけもなく、家にやってきたネズミの校長に条件を押し付けた。
そのこそ、サーヴァントの入学許可である。我々の存在意義は名前を護ることにあり、例え学校であろうともそれは変わらない。なら、サーヴァントも学校に同行させるのが筋ではないかと。勿論そちらの生活に順応できる者を選抜するし、テストなどの学校行事も普通の生徒と同様の物を用意してくれて構わない、と。人類の叡知の集まりが弁舌を奮ったこともあり、なんとかそれは許可された。同学年に一人置くのは当然として、他学年に一人欲しいと考えたダヴィンチが声を掛けたのは、ルーラー秋山紅葉であった。英霊にしては珍しく現代(と言っても個性発生前の時代である)の学校に通学経験があり、学校での立ち振舞いや特有の暗黙の了解などを他の者より理解があるだろうとの人選だった。
「いいよ。やっても」と快諾した紅葉だったが、それに反発した者がいた。言わずもがな、紅葉の恋人である六道骸だった。「紅葉もやるなら僕もやります。男女一名ずついたほうが何かと便利でしょう」と熱弁する骸を冷ややかな目で眺めていた紅葉だったが、骸には魅力的な能力があった。幻術という別世界のチート気味の能力である。無いものをあるように映し、あるものをないように消すという証拠隠滅に持ってこいのそれは、もし学校で不祥事が起こった際に大いに役立つだろう。骸も一応通学経験はあるので、ダヴィンチは渋々オッケーサインを出した。
英雄王の宝物庫から若返りの妙薬と蓬莱の劇薬を提供してもらい、パラケルススが改造もとい改良し、ついに完成した。まず若返りの妙薬を飲み、十五才の体に戻してからすぐに蓬莱を飲んだ。これにより成長と言えるであろう速度で老化が進む。学校で成長期の彼らから見ても不自然さは露見しないだろう。卒業したら解毒剤を飲めばよいだけだ。
二人とも聖杯の知識で一般的な教育は身に付いているので、成績の面では問題はない。他、今までの嘘の経歴や設定など試行錯誤の末、目が死んでるJKと、パイナッポーヘアーのイケメンDKが爆誕した。

秋山紅葉。十五才。女子。
IT関係で働く父親と専業主婦の母親の三人暮らし。雄英進学を機に寮(ホーム)暮らしを始めた。父親の影響で幼い頃からゲーム機器に触れる機会が多く、自然とゲーマーの道を歩んだ。
成績は中の上。友人関係は浅く深く。友人もオタクやゲーマーが多かった。
出身は東京。寮(ホーム)とは、友人の骸の伝で入寮した。
個性は【浄化の炎】
透明に近い白い炎を体から噴射することができる。普段は人が触れても温かいだけだが、本気を出せば万物何でも燃やし尽くす。傷や心を癒す効果がある。

六道骸。十五才。男子。
イタリア出身で両親は幼い頃死別。その後違法の施設に捨てられたも同然に預けられ、ひどい仕打ちを受ける。数年して施設に警察が介入し、無事保護される。その後は現地の学校に通わされることになるが、その壮絶な過去と規格外の個性のせいで腫れ物扱いを受ける。逃げるように日本へ移住した。そして、何だかんだで紅葉と知り合い、交際に発展した。
成績は上の上。日本語とイタリア語の他にもフランス語や中国語など多種多様の言語を操る。一習えば十習得できる天才。体術に置いても一流。友人らしい友人はいないが、下僕は多くいる。
現在の保護者は、エドモン・ダンテス。
個性は【幻術】
死語の世界を具体化した六道に司った能力を扱い、対象及びその周辺に幻術を掛けることが出来る。その能力は単純な精神汚染から憑依まで多種多様であり、本人ですら全貌を掴めていない。

……というのが、作家組が徹夜で考えた設定である。

「え、なにこれ。私と骸で落差ありすぎじゃね?」
「仕方なかろう。貴様はともかく、六道骸は見た目だけでも相当可笑しいのだ。それ相応の設定は必要だろうが」
「そうですとも!ぶっちゃけ見た目では釣り合っていませんからねお二方」
「言ってろ」
「ちょっと。『何だかんだで』ってなんですか?一番重要なところでしょうここは」
「面倒になったのでな。まさか夢で会いましたーとも言うのか?」
「夢ではありませんが、」
「精神の中であるのは確か」
「いやぁ本当にお似合いですなぁ!」

明日は楽しい楽しい体育祭!興奮しすぎてドキがムネムネするね!しかも大会の様子はリアルタイムで全国放送だって!正気の沙汰じゃないよね!
「ねぇー骸は明日どうする?」
「体育祭ですか?適当に済ますに決まってるじゃないですか」
「デスヨネー!」
不良に優等生の皮を無理やり被せただけの骸が大人しく汗を流すわけがなかった。既に宿題を終わらせてある骸は長い足を組んでホットチョコを啜りながらテレビを眺めている。コメンテーターのおっさんとアナウンサーのお姉さんが今までの雄英体育祭を振り返っている。先生、今年もやはり注目すべきなヒーロー科ですか?そうですねぇ。他の科と比べ実戦の経験を積んでいますのでぇ、でも他の科、それこそ普通科の生徒もチャンスはありますので、皆さん精一杯頑張ってほしいですねぇ。茶番乙。
「大体、いくら名門と言えども一端の高校の体育祭ごときにこんなに注目が集まること自体不気味なんですよ」
「ほんとそれ。オリンピックに変わる大会だっけ?大袈裟すぎない?」
「まあまあ。そんなこと言わずに」
苦笑いで会話に入っていたのはマスターである。マスターはこの時代の人間なので、このチキンレースを普通に受け止めちゃってる一人でもある。そう思うと個性社会って怖いな。
「でも見てて楽しいよ。ワクワクするし、学校でもすごく話題になってるんだよ」
「はっ!こんな俗的行事に惑わされるとは無様ですねえ」
「おまえ、口の回りにチョコ付けたまま言っても格好つかないぞ」
マスターとか顔ひきつってるぞ。
「そ、そう言えば二人も何気に優勝候補だよね!頑張ってね!」
「う〜ん。モチベーションが上がらないんだけどなぁ…」
「必要性が感じられません」
「そう言わずに。そうだ!一位とったらなんかご褒美あげ……」
「PlayStation4のwhitecollar限定版とそれに付随するソフト数枚!!」
「サロン・デュ・ショコラに行くための旅費及び現地での経費の全額負担!!」
「く、食い付きかたが違う……」
何てこったい!こんなことが今まであっただろうか?いやない!宿題やってる場合じゃねぇ!目の前の骸は既にホットチョコを飲み終わって、目をギラギラさせている。

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