閃光


物語@


幼い頃、私は夢というのがよくわからなかった。幼稚園の友達が「きょうねー、おうじさまがゆめにでてきたのー!」と嬉しそうに話していたのを聞いて首をかしげた記憶がある。“出てきた”んじゃなくて、“会った”んじゃないの?と先生に言ったところ、「##NAME1##ちゃんはいい感性を持ってるわねぇ」と何故か褒められた(しかし、悪い気はしなかった)。
というのも、私は一度も夢を見たことがなかったからだ。それもその筈、私の“眠る”という行為は休息ではなく、あちらの世界へ行くことだったのだ。
あちらの世界。全てのものがビックサイズで驚きとわくわくで満ちている世界。バスより大きい虫が地面に亀裂を作り、ビルより太い木が鬱蒼と生い茂る森があり、へんてこな石や草が所狭しに転がっていたそこを、私は「パーク」と呼んでいた。今思えば、結構危険なところだったりするが、昔の私にとっては一つの遊び場に過ぎず、プリキュアに並ぶ娯楽だったのだ。
なので、皆も眠るとパークに行くもんだと思っていたが、そうではないと気づいたのは結構遅く、「あれ?もしかして、これおかしいことなのか?」と理解したのはもっと遅かった。しかし、直ぐ開き直って「私って結構すごいのかーむふふ〜」となるぐらい、私の頭は残念だったのだ。この事実も最近知った。かなり絶望した。
ともあれ、気づいたからにはパークに行くことをあまり言いふらさないことにした。と言っても、元々口にはしていないが、なんかめんどくさいことに巻き込まれそうだから、パークから持ち帰ったものはクローゼットに押し込んだ。
絵に関しては、周りが勝手に勘違いしてくれたようであんまり問題なかった。お父さんもお母さんも「まー素敵な絵ね!」「すごい創造力だな」と褒めてくれた。どこかから聞いたのか、変なお金持ちが絵を買い取りに来たが、なんか怖かったのでお断りした。

そうして今世を生きること13年。ある疑問にぶち当たった。

「パークってどこにあるんだろう?」

至極真っ当か疑問だった。今まで何も考えず呑気にふらふらしていたが、考えてみると、パークは結構おかしなところだ。みんなデカいし変な植物あるし強烈な動物もいるし。色んな図鑑を見たが、少なくとも載っているものは一つもなかった。地図も地形がわからないから調べようもないし、インターネットでも一緒だった。訳わかんねーなと夜しか寝れない日々を送っていたが、ある日唐突に閃いた。
この前テレビでやっていたが、この世界には一般人立ち入り禁止区域がいっぱいあるらしい。宗教的な理由だったり、遺跡保護の理由だったり。その理由として危険生物が多々生息している地域もあったりするらしい。そこじゃね?と察するのは速かった。だって、パークには危険がいっぱいでめちゃくちゃすごいものも多い。確かにあそこには一般ピーポーは立ち入れない。
手がかりが掴めたところで更なる壁が立ちはだかる。私も一般人ということだった。このままでは立ち入るどころか、その場所を探し当てることすら出来ない。どうしたものかと考えること一週間、私はハンターになろうと決意したのだ。
ハンター。私も詳しいことは知らないが、かなりすごいお仕事らしい。ライセンスさえ取れば、色んな所に行けたり公共機関がただ利用できたりと、信用もかなり高い。なんでも、売ると人生10回分のお金が稼げるとか。あれ?10回だっけ?まあその程度。
そのライセンスをとるための試験、通称ハンター試験は毎年行われるが、受験者数何万人に対して合格者は数名だけだという。関門過ぎる。倍率何倍だよ。しかし、合格者0の年もあるというのだから空いた口が塞がらない。それでも、毎年多くの勇者がハンター試験に挑み、儚く散っていくと思うと涙を隠せない。これ、受かるの?と思うのはおかしくない。

まあ、やれるだけやってみよう。ちょうど冬休みだし。

お母さんとお父さんにハンター試験受けると言ったら当然の如く反対されたが、私の意志が鋼の如く固いと気づいて泣く泣く書類にサインしてくれた。ちょっとでも無理だなって判断したらすぐ棄権してねと何度も約束された。任せろと胸を叩いたが、二人の顔色は晴れなかった。

冬休みが終わっても試験が続いた場合を考えて、学校には絵を描きに短期の留学に行ったと嘘を言うらしい。私の絵を見たことある教師はすぐ信じてくれたようで、学校で「帰ってきたら見せてくれよ」と頭を撫でられた。やべぇ、試験中なんか描かないと。


パークの基地に食料や着替えを補充して、試験中にも補給出来るようにした。これは結構大切。何あるかわからないから、ランプとかも用意しておく。

愛着してるジャージとバッグを装備して、今にも泣きそうな両親を背に私は意気揚々と家を後にしたのだ。


○○○


第一関門である「試験会場に行く」は、かなりあっさり解決した。言うのも、船乗り場に行く途中、ナビゲーターの魔獣さんに出くわして案内してもらったのだ。魔獣に会うのは初めてだが、すごく親切でフレンドリーな人?でよかった。案内がてらハンターや試験のこともたくさん教えてもらってよかった。
途中休憩を挟みつつやっとこさでたどり着いた先は、立派なビル・・・ではなく、こじんまりとした定食屋だった。三度見ぐらいした私だったが、人に化けた魔獣さんはスタスタ店に入っていったので慌てて後を追う。そして、おやじさんに「焼肉定食。弱火でじっくり」と言うと、お姉さんが別室に案内してくれた。他に空席は有るというのに。あれか?BIP対応か?香ばしい匂いに思わずお腹がなってしまい、秒で魔獣さんに椅子に座らされ、小皿に焼き肉が乗せられた。過保護すぎやしませんかね?

「##NAME1##、本当に・・・ほんっとうに残念だが、ここでお別れだ」
「むぐっ、ここまでありがとうございまっ・・・むぐ」
「何、君のためだ。どうってことないさ。………じゃあまたな」
「ごぐっ……はい」
「君に幸運があらんことを」


そうかっこよく言い残して魔獣さんは出て行った。ばたんとドア閉まった直後、部屋全体ががこんと大きく揺れ、ウィーンとまるでエレベーターのような浮遊感に見舞われる。まるでというか、この部屋がエレベーター的な感じかも。焼き肉をもしゃもしゃ食べているうちにチンと音が鳴ったと思ったら、さっきのドアと反対方向の壁がウィーンと開いた。地下空間である。そこにいろんな人がいて、ガンを飛ばされた。なんだなんだ。やんのかコラ。死ぬぞ、私が。なんて思っていると、豆豆してる小さな人にナンバープレートを渡された。401番だ。切りがあまりよくない。それをジャージに付けて壁側に避難して体育座りする。視線が辛い。なんであんなガキが来てんだよと言わんばかりの嘲笑があちこちで聞こえた。超怖い。人知れずガクブルしていた私に話しかけてくれたのはトンパさんというおじさんだった。二十年ぐらいハンター試験を受けているらしい。どんだけだよ。よほどハンターになりたいんだな。お近づきの印に缶ジュースを貰った。おいしかったけど、なんか違和感を感じた。まあ、腐っててもお腹壊さないからいいんだけどね。
ちょうど缶がからっぽになったところでジリジリとベルが鳴った。試験開始の合図だ。立ち上がってお尻についた砂ぼこりを叩いて落とす。第一試験はちょび髭がチャーミングなおじ様について行けばいいらしい。つまり、マラソンだ。この疲れ知らずの私にマラソンを挑むとは、身の程知らずとはこのことだ!と思いつつも、内心かなりホッとした。最初から殴り合いだったら死ぬ自信しかない。その点、マラソンなら走るだけでいいし、スタミナは自信があるし、中々ラッキーだと思う。

東京マラソンぐらいかな?と考えながら走る。走る。ひたすら走る。
………え?これいつまで走るの?結構走ったよね?何人か脱落したよね?周りの人も疲れが出始めたようだった。いつの間にか集団の先頭に来ていて、サトツさんと、年下っぽい少年二人並んで楽しそうにおしゃべりしていた。すると、急に黒髪の方の少年が急にこちらに振り向いた。

「ねえ、君は?」
「え……##NAME1##」
「##NAME1##かぁ!よろしくね!俺ゴン!こっちはキルア!」
「おいゴン!勝手に名前教えんなよ!」
「えー!別にいいじゃん!」

待って。目の前で言い争いされると超困る。しかも、私関連の話題であるから気まずさはマックスである。すいません……生きててごめんなさい……みたいな気分で俯いている私に二人は慌てたように平気平気!気にしないで!と手を振った。めちゃくちゃいい子。本当に私は生きてていいんだろうか。
ゴンくんの隣に並んで話しかけてきた訳を聞くと、

「なんだろう……なんか気になっちゃって。おんなじ歳ぐらいだったからかな?」
「ハンター試験って年齢制限なかったよな?お前何歳?」
「えーと、13」
「ええっ!俺より歳上なの!?」
「マジかよ……てっきり10ぐらいかと思ったぜ」
「またまた〜!で、二人は何歳なの?」
「俺もキルアも11だよ!」
「嘘でしょ……」

11でこんなにしっかりしてるの?外国怖い。というか、ハンター試験怖い。ゴンくんによると、さっきのトンパさんは10から受け始めたらしい。皆意識高くね?私、もしかして場違い?気づくのが遅い。
その後平坦な道からめちゃくちゃ急な階段になり、サトツさんの三段飛ばしになっても二人はスピードを緩めることもなく、悠々と走り続けている。かくいう私は、体力はまだまだいけるが、足が短くて三段飛ばしがかなりキツイ状態である。ある意味疲れる。ヒィヒィ言う私にゴンくんは頑張れ!と応援してくれてるが、正直これはどうしようもない。結局二段飛ばしを高速で繰り返すことに決めたため、一人だけ足が細々動いている状態である。笑っているそこのキルアくん。後で職員室に来るように。
と、暫くして外界を示す希望の光が見え始めた。これでマラソンも終わりだぜ!と喜びの声を上げる後方だったが、なんか嫌な予感がするんだよなぁ。これフラグです。

- 7 -

*前次#


ページ: